劇場公開日 2012年3月16日

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「この映画マーガレットは、サッチャー・ナイス・ムービー!!」マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この映画マーガレットは、サッチャー・ナイス・ムービー!!

2012年3月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

この映画を観てから、みんなのレビューを読んで驚いた!賛否両論だったのだと・・・

私は、歴史にその名を残すマーガレット・サッチャーという偉業を成した政治家でさえも、
加齢という自身の自然のプロセスの前にあっては成す術を失い、変化しなければならない人間の運命に、彼女は、一人の人としてどう折り合いを付けて、認知症と言う新たな自己に向き合って行くのだろうか?という誰もが決して避けて生きる事が出来ない老いという自然な人の姿を見つめている本作品にとても深い興味と感動を憶えたのだ。

そしてまた、私はこの映画を観ていて直ぐに思い出したのがあのアカデミー賞を獲得した名作の「ビューティフル・マインド」だ。ロン・ハワード監督によるノーベル賞受賞数学者であるジョン・ナッシュの半生を描いた伝記映画なのだが、こちらも華々しいキャリアを持っている人物でありながらも、病と言う障害と共に生きるそのプロセスが話の中心に描かれていた。最もこちらはどちらかと言うとサスペンス色が濃い作品だった。そしてラストも素晴らしい展開だったのだ!
さて、話を戻してこの「マーガレット・サッチャー」という映画では彼女が半生を回想するのだが、その回想も、部分部分で、記憶が正確な所もあるが、そうでも無い所もある。
そこに人が生きて物事を考えて生きる中で、記憶は自分の思いと共に好都合に変化していくと言う面白さを見せてくれるのだし、そして自分が今思っている事こそが、その本人には真実に他ならないという事も教えてくれる。必ずしも現実と一致していないと言う事だ。
それ故、認知症を患う現在の彼女は、政治的な話に中々加われないかと思えば、若い頃の彼女の様にハッキリトした持論をゲストの前で話出す事も出来る、この辺りも観ていて面白いのだ。とは言うものの、しかし最近の彼女の本当の関心事と言えば、今は亡きご主人のデニスが自分との結婚生活をどう思って暮していたかが第一だ。ここにこの映画は恐れる事無く人間の本質とは何かと言う問いかけをしているのだろうと思うのだ。
またその一方でマーガレットは、最近の人々は口ぐちに、どう感じるか、FEELINGと言う事ばかりを気にするが、人間は、どう考えるか、THOUGHTこそ大事な事だと主張する。その人間が、どう考えるか、それこそがその人間の生きる価値と原動力になると強い信念を持って生きていたわけだ。まさにこれこそが「鉄の女」と言う異名を持つその彼女の生涯を貫いている彼女自身の姿でもある。それは、政治家としても、家庭の中の個人としても決して持論を曲げずに、一途に生きる彼女の姿が美しいまでに、心地良いのだ。
ドキュメントタッチでもなく、彼女はどう言う政治論を持って生きて、政治を行っていたのかと言う近代の英国の政治に興味を持って映画を観ようと考えていた人にはいささかピント外れの退屈な映画で会った事だろう。
この映画は、マーガレットと言う一人の女性の若い日から現在までの変わらぬラブストーリーだし、老いに生きるある一人の孤独な女の物語でもある。しかし、いつも前向きに生きる努力を重ね続けるマーガレットの生き様に、私は物凄いパワーを貰えた気がするのだ。

ryuu topiann