「亡き夫の幻想を見る認知症の元首相、戦争勝利により棚ぼたで支持を得、政権に執着し孤立する老いた政治家の姿」マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
亡き夫の幻想を見る認知症の元首相、戦争勝利により棚ぼたで支持を得、政権に執着し孤立する老いた政治家の姿
マンマ・ミーアの監督で知られる英国人フィルダ・ロイド監督(女性)による2011年公開の英国映画。脚本がアビ・モーガン(英国の女性脚本家・劇作家)。
主演がメリア・ストリープで、3回目のアカデミー賞(主演女優賞)受賞。
サッチャー首相を、英国病の中で国民の潜在活力を引き出した知的且つ信念有する政治家で、西側で最初にソ連ゴルバチョフを評価し東西冷戦を終結させた立役者としてかなり評価しており、自伝も読んでいて、高い期待感を持って妻同伴で映画館に行った。
残念ながら、そこで印象づけられたのは、亡き夫の幻想を見る認知症の老婆であり、戦争勝利により棚ぼたで支持を得る首相、政権に執着し孤立し同士からも見捨てられる老いた政治家の姿であった。これらは事実とは思われるが、政治的な反対側から見たマイナス評価のみが強調され、フェアではないと感じてしまった。多分、脚本家も監督も製作者も、働く女性、働く妻、働きながら育児する母としての共感は有するが、政治的には反サッチャーの立場であろうと思ってしまった。
まあ、オックスフォード大の女学生としての初々しい姿、デニス・サッチャーからのプロポーズ場面、国会下議院議員となっての初登院での緊張感、ボイストレーニング描写は興味深かった。特に、ユーモアを交えて近距離で互いにやりあう議会の論戦風景は、日本のそれとは随分と異なり感慨と憧憬を覚えた。
全体的には、政治家としてのサッチャーを描く期待感の高さが個人的に有り、かなり物足りなく感じてしまった。
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