劇場公開日 2012年9月15日

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鍵泥棒のメソッド : 映画評論・批評

2012年9月4日更新

2012年9月15日よりシネクイントほかにてロードショー

優れたオリジナル脚本にいい役者が揃ったサスペンスコメディ

いまどき、オリジナル脚本にこだわる監督は貴重だ。それも練りに練り、細部までよく計算された脚本ならなおのこと。「運命じゃない人』「アフタースクール』と、凝ったオリジナル脚本の面白さで人気を博した内田けんじ監督の第3作は、前2作同様に「映画の8割は脚本で決まる」というビリー・ワイルダーの言葉を思い出させる。ワイルダーのファンを公言している内田監督は当然そのことをよくわかり、過剰なほど意識しているに違いない。

今回も脚本のユニークさは群を抜いている。35歳にもなって極貧の売れない役者・桜井(堺雅人)が、銭湯で転倒して記憶を失った殺し屋・コンドウ(香川照之)の鍵を盗んだことで、ふたりの人生が入れ替わるという奇想。そこに、計画的婚活を実施する編集者の香苗(広末涼子)がからみ、3人の運命はあれよあれよと思わぬ方向へ。キャラクターの個性と窮状で笑わせ、観客の思い込みをかわしてアッと言わせ、どんでんと予想を裏切る展開は前2作同様。ただしよりわかりやすい。前半でまかれた伏線が後半、きれいに収束されていく醍醐味も健在だ。「あれよあれよ」に至るまでの前半がもっさり気味なところまで同様でなくてもいいのだが。

優れた脚本があれば演出がまずくてもなんとかなるが、役者がまずくては台無しだ。逆に、優れた脚本にいい役者が揃えば鬼に金棒。堺、香川、広末という人選は金棒そのものだ。脂ののりきった彼らが見せる意外な表情、掛け合いが生む化学反応は文句なく楽しく、映画館を出た後での幸福な思い出しニンマリを約束してくれる。

若林ゆり

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