ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド : 映画評論・批評
2011年11月15日更新
2011年11月19日より角川シネマ有楽町ほかにてロードショー
ジョージ・ハリスンの名曲の数々が濃密な58年間の人生を解き明かす
監督マーティン・スコセッシと編集技師デビッド・テデスキのコンビ(「ボブ・ディラン:ノー・ディレクション・ホーム」)は、音楽ドキュメンタリーの聴かせどころを骨の髄まで心得ている。オープニングから流れるジョージ・ハリスンのソロアルバム代表曲「オール・シングス・マスト・パス」や、ビートルズ時代の彼の名曲「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」「ヒア・カムズ・ザ・サン」など、ポールやジョンに負けじとジョージが作った名曲27曲が“真の主役”になって、存在感たっぷりに鳴り響いている。その作品世界がジョージの濃密な58年の人生を雄弁に物語っているからおもしろい。
膨大なアーカイブから選ばれた超貴重な写真やフィルムなどの映像資料の数々は、“静かなるビートルズ”の音楽世界に肉付けし、彼の人生を客観的に物語ってくれる。また、元ビートルズのポールやリンゴ、親友のエリック・クラプトン、音楽プロデューサーのフィル・スペクター、映画関係の友人テリー・ギリアムら親しい友人たちの証言の数々は、“愛すべきビートルズ”の意外な側面を掘り起こすのだ。例えばコメディ映画好きなジョージなしに「モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン」や「バンデットQ」は存在しえなかった。
ビートルズ解散時、ジョージはわずか27歳。計3時間半もある2部構成の映画は、前半がビートルズ時代、後半が解散以後のソロ時代。巧みな編集のおかげで退屈な時間は1秒もなく、長さは微塵も感じない。後半のほうが実質30分長いが、多くの音楽仲間に囲まれた彼らしいエピソードが多いためか圧倒的に楽しく、体感時間が前半よりも短く感じるほどだ。
(サトウムツオ)