ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム

劇場公開日:

解説

アメリカ音楽シーンの生きる伝説、ボブ・ディラン初の本格的な自伝的長編ドキュメンタリー。数百時間にも及ぶ貴重な資料映像の一部と10時間を超すディランへのインタビューから構成された。監督は「アビエイター」の巨匠マーティン・スコセッシ。

2005年製作/201分/アメリカ
原題:No Direction Home: Bob Dylan
配給:イメージフォーラム
劇場公開日:2005年12月23日

ストーリー

ビル・ヘイリーやエルヴィス・プレスリーやチャック・ベリーやリトル・リチャードの歌と共にロックンロールが産声を上げた前世紀半ば。音楽だけでなく、政治・経済においてもアメリカ社会は大きく変貌しようとしていた。テレビの普及、米ソの冷戦の深刻化、それに伴うレッドパージ、核開発、朝鮮戦争、人種・人権問題、ビートニクなどなど。ボブ・ディランは、そんな時代をミネソタの北、森と湖でカナダと国境を隔てられた田舎町ですごす。「冬は何もかもが静かで動かなかった。それが八ヶ月続く…何もしないで、ただ窓の外を見つめていると、幻覚を見そうになる」と、その町をディランは回想する。ロックンロール好きで、ハイスクールの卒業写真には「リトル・リチャードの仲間になること」とも記したディランは、その「動かぬ」町の中で、1960 年代の爆発を静かに準備していた…。1950年代末から1960年代、ミネソタからニューヨーク、グリニッチヴィレッジへ。社会の激動と共にディランの人生も激変していく。ポップ・ミュージック・シーンには顔を出すこともなく、しかしアメリカの激動の背景を確実に捉え続けるフォーク・シンガーたちとの出会い―ウディ・ガスリー、ピート・シーガー、ジャック・エリオット、オデッタ、デイヴ・ヴァン・ロンクなどなど、ディランは彼らの人生や歌から、計り知れない多くのものを学ぶ。路上での弾き語りやカフェでの演奏、そこに集まる人々との深い交友の中でディランは独自のスタイルを作り上げていく。そしてジョーン・バエズとの出会い、コロムビアレコードとの契約。ロックンロールの炎が鎮火し、見捨てられていたフォークにアメリカ社会が再び目を向けたとき、その中心にはバエズとディランがいた。タイトルの「ノー・ディレクション・ホーム」とは、アコースティック・ギターから再びエレキ・ギターに持ち替えたディランの、その決定的な変貌の象徴でもある歌、『ライク・ア・ローリング・ストーン』の歌詞の一節。「どんな気がする/ひとりぼっちで/かえりみちのないことは/ぜんぜん知られぬ/ころがる石のようなことは」(訳:片桐ユズル)と歌われるその歌で、この映画は始まり、終わる。その中で、ロックンロールからフォーク、そしてロックへと、時代の変化と共に「かえりみちのない」道を歩み続けるディランの若き日々が切り取られ、語られることになる。もちろんそれは、アメリカの若き日々、とも言い換えられる。キューバ危機、ベトナム戦争、ケネディ暗殺、平和行進、「私には夢がある」と語ったキング牧師の演説…。人々の夢と野心と欲望と絶望と悲しみとをエネルギーにして変貌するアメリカ社会が、この映画のもうひとりの主人公でもある。あるいは、「アメリカ社会」というもうひとりの主人公こそが「ボブ・ディラン」という名前を持つのだと、言い換えられるかもしれない。出会った数々のフォーク・シンガーたち、ブルースマンたちの誰もがそうしたように、彼らの歌を変奏し、自分のものとして、自らの歌の奥行きを広げていったディランこそ、アメリカという国の広がりそのものだと。もちろんそこには、アメリカ自身に対する怒りもまた、激しく渦巻いていた。

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映画レビュー

4.0ライク・ア・ローリング・ストーン

2017年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

楽しい

知的

ボブ・ディランとジョーン・バエズは私の青春時代前期のアイコンだった。
後期はビートルズになるが、彼らにも大きな影響を与えたらしい。
あの歌い方はイマイチ好きになれず、カバーのほうが好きだった。
ノーベル賞騒動も彼のイメージ通りで、さもありなんという感じ。
一番好きな曲は「ライク・ア・ローリング・ストーン」。

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いやよセブン

3.0終わらない家路

2016年12月10日
iPhoneアプリから投稿

バイク事故までの自伝的視点を含めたドキュメンタリーです。

世代が違うというのが一番の理由ですが、声も単調なメロディもあまり好みでなく、じっくり聴いたことがありませんでした。

Woody Guthrieらを崇め、フォークという形態を使って詩を高らかに歌い始めた彼が、プロテストシンガーとして時代に持ち上げられていく前編。エレキを取り入れ商業的ロックと見られて批難されていく後編。Dylanの頭の良さ、神がかった才能もよく分かりました。歌詞もコメントも奥深いですが、インタビューの切り返しも上手いです。取り巻く関係者達のコメントもとても興味深かったです。

60年代は「主張によって評価が下る」時代。物理的不足、不平等、不満に満ち溢れた社会。受け身になるなと訴えるフォークシンガー達。

物質的に満ち足りてきた現代は、どれだけ周りに「溶け込めているかで評価が下る」ような所があります。"My name is Blurryface and I care what you think." (Twenty one pilots) なんて当時では出てこないだろうな。でも人種差別や宗教間の対立といった社会問題はより複雑化しているような。

John Jacob NilesとJoan Baezの歌声が素晴らしかったです。"Love is just a four letter word"!

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everglaze

3.5ディランの素顔がちょっとわかった

2008年7月21日

知的

ボブ・ディランというとどうしても社会派シンガーというイメージがあります。でも、個人的にはそれとはまったく異なるイメージを持ってました。この人は、要はずばぬけた時代を読み取るセンスと、そんな中でメッセージを作りだすのがうまい人なだけで、まったくの社会派でないのではないかと。その時のうけるメッセージがたまたま社会派になってしまただけなのだと。

スコセッシが手かげたこのドキュメンタリー映画の舞台は60年代。学生運動やら人権運動、キューバ危機の時代ですね。そんな中で保守的な音楽が流行っていたので、当時のディランの音楽スタイルやあの風貌、そしてメッセージはさぞかし衝撃的だったと思います。そして、音楽で世界を変えると叶わぬ夢を多くの人が描き始めた時代だったのでもないでしょうか。その流れをつくりカリスマへと一気に駆け上がったディラン本人からの独白は、そんな自分の読みを裏付けた気がしました。

それと、資本主義は多様性がポイントであるといことがよく解りました。「ボブ・ディラン」という当時でいう「カウンター・カルチャー」でさえも取り込む資本主義は、ある意味懐が深い。そして、それを一番自覚してたのはディラン本人だったと思います。どこか道化的なディランは、ようはセンスが天才的なだけだったのです。

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あんゆ~る
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