ホーボー・ウィズ・ショットガン : 映画評論・批評
2011年11月15日更新
2011年11月26日よりシアターN渋谷ほかにてロードショー
80年代B級アクションの心意気を継承した直球勝負のグラインドハウス・ムービー
これはオマージュではない。いやもちろん、タランティーノとロドリゲスの「グラインドハウス」のフェイク予告編コンテストのグランプリ作の長編化なのだから、2本立てB級アクションを意識していないわけはなく、ルトガー・ハウアーも「ブレードランナー」の、ではなく80年代B級アクション「ヒッチャー」「WANTED/ウォンテッド」「サルート・オブ・ザ・ジャガー」のハウアーで、タイトルロゴから、映画全体の色調、質感まできっちりその当時のジャンル映画仕様なのだが、引用の原典探しとは別なところに本作の醍醐味はある。本作が継承したのは様式よりも、むしろ心意気なのだ。
今、マカロニ・ウエスタンのヒーローの末裔が自分の生き様を貫こうとしたとき、彼に出来るのは寡黙に生きて死に様で信念を示すことだけだ。だが、本作は違う。主人公は名台詞をたっぷり語って観客を泣かせ、信念のためではなく、愛する人のために死ぬ。そこで物語は終わらず、彼が愛した女性は「路上で眠る人達はホームレスではない。路上がホームなのだ」と演説して人々を立ち上がらせる。
とことん低予算。なので、監督が描きたいものだけが抽出されて、ど直球。3・11以降、元気のない観客の気持ちのど真ん中にズドンと入って、体温を上げてくれるはず。監督の「初期のピーター・ジャクソンとサム・ライミが好き」という発言に納得がいく粗暴で熱い長編第1作だ。
(平沢薫)