メリダとおそろしの森 : 映画評論・批評
2012年7月17日更新
2012年7月21日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
完成度の高い女性映画として出来上がった、ピクサー初のファンタジー時代劇
「メリダとおそろしの森」は、ピクサーにとって初めての挑戦が3つもある。過去を舞台にした時代劇で、ファンタジー要素を取り入れているばかりか、女性を主人公にしているのだ。
玩具やモンスター、ロボット、自動車などが主人公だったせいで、性別を意識していない人も多いかもしれない。実際、これまでにピクサーが発表した12作品の主人公はみんなそろって男性だった。これは、監督主導で映画作りが行われるピクサー独自のシステムによるものだ。ピクサーの監督は自分の経験に基づいてストーリーを開発する。これまでの監督はすべて男性だったから、主人公が男性になってしまうのは仕方のないことだった。
メリダというヒロインが誕生したのは、ブレンダ・チャップマン監督の功績だ。「プリンス・オブ・エジプト」で女性初の長編アニメ監督となった彼女は、ピクサーでこの企画を立ち上げた。赤毛のカーリーヘアで、乗馬や弓矢が得意というお姫様らしからぬキャラクター設定はとてもユニークで、そんなメリダが、周囲からの期待と自らの理想とのあいだで葛藤するという展開もいい。何事においても意見の食い違う母と娘が、奇想天外な出来事を経て、心を通わせていくという感動ストーリーだ。製作途中で、監督がブラッド・バード監督の愛弟子であるマーク・アンドリュースに引き継がれたものの、女性映画として立派に成立している。
ただ、ツイストを加えながらも基本的にはお姫様物語を踏襲しているため、ディズニー映画のような印象は拭えない。ピクサー映画には、魅力的なキャラクターや完成度の高いストーリーだけでなく、革新性があるべきだと思ってしまうのだが、望みすぎだろうか?
(小西未来)