劇場公開日 2011年9月3日

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パレルモ・シューティング : 映画評論・批評

2011年8月23日更新

2011年9月3日より吉祥寺バウスシアターにてロードショー

みずみずしく風をはらんだ世界が呟きの後から鮮やかに立ち現れてくる

筋を運ぶだけではあまりに惜しい様々な可能性に満ちているのに、公式やレシピに頼るばかりで実験の場を失いつつある昨今の映画。「そんなふうに安全なゲームをプレイするのに疲れ果て」「もう一度、ロックンロールのように映画を撮りたいと思った」「予めどこに行き着くかを知らぬまま物語を語り、主題を発見してみたかった」――「パレルモ・シューティング」のプレス・キットにA to Zの形で付された考察の中で、ビム・ベンダースはそう綴り、軽やかにスリリングな“新ロードムービー宣言”をしてみせる。

こうして差し出された旅の映画は、少し寂しい朗らかさで成熟へと向かう自身を受け容れるかに見えた「アメリカ、家族のいる風景」の印象をまんまと覆す。「都会のアリス」「さすらい」「ことの次第」、そして「リスボン物語」でも発せられた「眼差しの純粋さとは?」という真摯な問いを改めて自らに投げかけ、撮ることそのものが冒険=物語となるような移動と情動の映画、その可能性を辛抱強くみつめていく。みずみずしく風をはらんだ世界(目にも耳にもクールな映像)が呟きの後から鮮やかに立ち現れてくる。

主人公の売れっ子写真家は何でもありのデジタル環境、そこで危ういリアルを嘆きつつ拒み切ってはいないベンダース自身を映さずにはいない。南に下る彼は(自分自身、そして映画の)死と対峙して、生を、愛を、射抜く矢にこそ刺し貫かれる。アントニオーニとベルイマン、逝った先達ふたりに捧げられた映画で穏やかに死を象(かたど)るデニス・ホッパー! 彼もいない世界の今を噛みしめる時、映画に刻まれた生の輝き、現在進行形であり続ける冒険=物語、その素敵がいっそう沁みてくるだろう。

川口敦子

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