「箸の持ち方が気になる。」聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実 さやかさんの映画レビュー(感想・評価)
箸の持ち方が気になる。
山本五十六、教科書でしか知らない人物、申し訳ない。
地元新潟が輩出した英雄。封切された年、新潟・長岡はそこそこ盛り上がったようである。
淡々と状況を描き、淡々と人物を描き、爆撃シーンもありつつ静かな映画だ。うるさいのは香川照幸扮する東京日報の宗像さんくらい。日本の勝利に沸く街の様子もあるが、娯楽の少ない不況下の発展途上国ってきっとこんな感じだろうな。
山本五十六の人物像は、温和で誠実、肝が据わっており、言うべきことは言うが命令や職務には従う。大人の日本男児、って感じである。これで彼に大胆な政治力があれば、日本は開戦しなかったかもしれない。
戦死した部下たちの住所氏名を記録して持ち歩いていたり、自分に対立して失敗した南雲を「責めるな」と伝え穏やかな対応をした等、実際のエピソードも随所に盛り込まれ、限られた尺の中でできるだけ山本五十六の人物像に迫ろうと試みたことがうかがわれる。一目ぼれで嫁にもらった妻がいながら、別に愛人が複数いたとのことで、人物像が美化された側面があったと推測してよいだろうが、これはこれ、役所広司版山本五十六である。
ストーリーテラー役・玉木宏の存在の違和感はあれど、限られた尺の中でストーリーを伝えるには説明役は必要だろう。
終戦まで彼の命はもたなかった。しかも、洋上で死ぬだろうと自ら予測していたのにも裏切られ、移動中の飛行機が撃墜される。「山本以外に優秀な軍人がいない」というリサーチに基づいて、アメリカ軍は山本殺害計画を立案していたそうである。突然に情報管理のミスによって死ぬことになったようなまとめ方は、あっけないなあ、むなしいなぁという印象。神とあがめられた英雄の死にしてはあまりに描き方がものたりなく思え、切なかった。でも、戦争で人が死ぬって、そんなものなのかもしれない。特に、当時の切羽詰った日本では。
最後に、どうしても気になるので書いておきたい。
子供の箸の持ち方が悪い。親がそれを怒らない。当時の躾の考え方からしたら、ありえないんじゃないか。腑に落ちない。