「先見の明と賢明な判断力。」聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
先見の明と賢明な判断力。
新聞記者役の玉木宏が、山本五十六をいそろくと読めなかった、
という公開前のインタビューがやけに印象に残っている^^;
私とて山本五十六という人物が数々の映画で描かれてきたこと、
その内容は知っていても戦時中を知っているわけではないので…
彼の真実の姿など分からないし、ただ実際のお顔(写真にて)を
拝見した時、うぉ!カッコいい~!と思ったことだけは確かだ^^;
さて、なにを演っても役所広司は巧いなぁと感心させられるが、
今回も神と謳われた伝説の司令官を飄々淡々と演じている。
実在の五十六もこんな風に教養があって、良き家庭人で、そして
何よりもこの国の将来を見据えた人物だったのだろうと思える。
最後まで三国同盟に反対を唱え、米国との戦争を避けようと考え
ていた彼だが、聯合艦隊司令長官に任命され敢え無く了承する。
真珠湾攻撃は講和が目的だったのに対し、政府も国民も勝ったと
浮かれ放題、国自体が戦争に好意的に傾くことにまた苦悩する。
今作ではやたら「平和」を強調するフレーズが多く使われているが、
戦争の最中にあってそれを言ったとは思えない(この辺はおかしい)
彼が訴え続けたのは、圧倒的な軍事力を誇る米国に対して、
日本が(負け)戦を仕掛けるべきではないと、そう訴えていたのだ。
どれだけの兵が死に、国民が死に、国が荒れ果てるかが分かって
いた彼(自身の故郷)の、先を見据えた賢明な判断だと思うが、
それでも時代はそれを許さず、無残に戦争へと突き進んでいく。
面白いと思ったのは(悪い意味で)
同じ頃を描いた米国映画でも日本人と同じように考えていた外国人
(戦争が始まればモノが高く売れる、儲かる)が数多くいた事実や、
相手の空母(今回は奇襲攻撃)など中枢機関を壊滅させてサッサと
戦争を終わらせて国へ帰ろう、と誰もが思っていたことだった。
どこの国も同じじゃないか。まずは自分の生活が一番大切なのだ。
折しも日本には不幸なモノが(なんと二回も)投下された。
とても人間のやることとは思えない、と今でもそう思えて仕方ないが
相手国にすれば、もうこれで終わりにしたい、の一心だったわけだ。
…だから今でも思う。
なんでこの時、肝心な時に、五十六は生きていてくれなかったか。
そこにいてこの(負け)戦を早く終わらせてくれなかったか。
大切な時に大切な人間はいつもその大切な場面にはいてくれない。
今の日本もそうなのである。
五十六に対する諸説はあるようだが、今作のテーマ性は感じ取れる。
ただ、好みの問題だろうがこの演出方法。淡々とし過ぎている部分が
やけに多く、もっと観たい所や聞きたい台詞でサラリと流される感じ。
彼の身辺を描いた作品なので分かる気もするが、上映時間の割に
深くはないんだよなぁ、と玉木君の台詞をぼ~っと聞いてしまった私。
(非常に少ないけど戦闘機のシーン、特撮!って感じが良かったです)