劇場公開日 2011年9月3日

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鉄拳 ブラッド・ベンジェンス : インタビュー

2011年8月29日更新

格闘ゲームシェア世界No.1を誇る「鉄拳」が、フルCGの3D映画「鉄拳 ブラッド・ベンジェンス」(監督:毛利陽一)として9月3日に公開される。熱烈なファンを持つ人気シリーズだけに、ともすれば“ファン限定”の映画になりがちな題材を、幅広いエンターテインメント・ファンに訴求させる役割を担ったのが、脚本を務めた佐藤大。映画、ゲーム、アニメ、音楽とジャンルを越えて活躍する脚本家が、同作に込めた想いとは?(取材・文・写真/編集部)

佐藤大(脚本)インタビュー
「“日本でしか作れないCG映画”を楽しんでほしい」

原作の持つ世界観を踏襲しつつ、誰もが楽しめるストーリーに仕上げた佐藤大
原作の持つ世界観を踏襲しつつ、誰もが楽しめるストーリーに仕上げた佐藤大

「(ゲームの製作チームが用意していた)元々のプロットは、ゲームをしてきた人へ向けた内容のものだったんです」と、製作当初を振り返る佐藤。「それに、“これを作るとしたら、いったいいくら必要なんだろう?”というスケール(笑)」の物語を、“京都を舞台にした、女子高生と美少女ロボットが主役のバディ・ムービー”という、ある意味で“日本らしい”ストーリーへと着地させた。

美少女ロボットのアリサ(左)と女子高生シャオユウ(右) が主人公の“バディ・ムービー”
美少女ロボットのアリサ(左)と女子高生シャオユウ(右) が主人公の“バディ・ムービー”

「(キャラクターの人気が高い)北米や海外での公開があらかじめ決まっていて、樋口真嗣さん(『ローレライ』『のぼうの城』監督)や荒牧伸志さん(『APPLESEED』監督)ほか、アニメ業界で知られた監督クラスの方が画コンテで参加することも分かっていましたから、日本の得意分野が生きることを意識したのは確かです。主人公が決まっているRPGと違って、プレイヤーごとに使っているキャラクターが違う格闘ゲームは(物語の構築が)難しいんですが、むしろ、2人の女の子にフォーカスしたことで、(原作を知らなくても)この映画から『鉄拳』の世界に入っていけると思います」

対立する組織の命を受けて、それぞれが高校に潜入する女子高生リン・シャオユウと、美少女ロボットのアリサ・ボスコノビッチ。謎を秘めた青年をめぐり、反目しあいながらもやがて友情を育んで共闘していく2人を中心に、ゲームの人気キャラクターたちを適材適所に配して、原作シリーズを通じての因縁までが織り込まれる。そこには、80年代後半から90年代初期のハリウッド映画で育った佐藤なりの“映画への返礼”も見え隠れする。

佐藤が「一番好き」と語るこのシーンには ハリウッドSFへのリスペクトもたっぷり
佐藤が「一番好き」と語るこのシーンには ハリウッドSFへのリスペクトもたっぷり

「あの頃の映画が大好きなんです。アリサがチェーンソーを振り回す姿は、僕にとってはまさにサム・ライミ監督の『キャプテン・スーパーマーケット』に登場したアッシュ。『ダークマン』もそうでしたけど、シリアスとコメディのギリギリのところでの可笑しさというか。(シャオユウのペットの)パンダとロボットが友情を深める物語なんて、現実ではありえないじゃないですか。それを、不思議なリアルさで表現できるCGには手応えを感じました」

そしてクライマックス、佐藤が「一番好きなシーン」と明かしたシーンは、平成「ガメラ」シリーズの特技監督としても知られる樋口真嗣が画コンテを担当。傷つきボロボロに破壊されたアリサが最後の力を振り絞る姿は、「あれもまさに、『ターミネーター2』や『エイリアン2』のビショップへのリスペクトです」と力を込める。

鉄拳 ブラッド・ベンジェンス」は、リアルなCGアニメーションである上に3Dでの上映。近年ますます境界があいまいになる実写とCG、そしてアニメーションについて、脚本家の立場からどういう考えを持っているのかを聞いてみた。

“日本でしか作れないCG”を堪能できる クライマックスの壮絶なバトル!
“日本でしか作れないCG”を堪能できる クライマックスの壮絶なバトル!

「(脚本家としては)そのときどきの題材が一番輝く方法論を探す、というのが僕の場合は大きいです。実写の場合は俳優でしょうし、アニメーションはアニメーター、CGはCGアニメーター、彼らの持ち味が存分に生かされる設定や物語を作っていくのが僕の役割だと思っています。CGの場合は、生の人間がやれることをそのままCGキャラクターにさせてもしょうがない。生の人間のようでありながら、そうじゃないものだからこそできるリアリティを今回は追求しました。格闘シーンの動きはモーションキャプチャーで表現して、キャラクターの表情や効果などはアニメーター方々が手で付けています。最先端のCGとアニメ的な画コンテによるレイアウトのハイブリッドは、日本でしかできない表現です。そして鉄拳らしい高低差のあるアクションと、監督クラスの素晴らしいカットによる“日本でしか作れないCG映画”を3Dで楽しんでほしいです」

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