劇場公開日 2012年1月14日

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ヒミズ : 映画評論・批評

2012年1月10日更新

2012年1月14日よりシネクイントほかにてロードショー

染谷将太がみずみずしい。けっこうハートに来る映画だ

若者の暴れる映画に、私は点が辛い。素材が手に入れやすく、調理に手間をかける必要がなく、客の味覚にも訴えやすいからだ。つまり俗耳に受け入れられやすいわけで、そんなものはおいそれと褒めるわけにいかない。

もちろん、例外はある。「仁義なき戦い」や「勝手にしやがれ」や「青春残酷物語」などは魅力的な映画だった。エネルギーにあふれているだけでなく、スタイルやデリカシーも忘れなかったからだ。逆にいえば、火入れと盛り付けに心を砕けば、乱暴な若者の映画もけっして退屈にはならない。さらに、素材が選び抜かれていれば、レベルは一段上がる。

ヒミズ」は、このハードルに挑んでいた。

なによりも、染谷将太という素材がみずみずしい。彼の演じる住田祐一という15歳の少年はなかなか面白い動物だ。住田は「立派な大人」になろうとしている。親がクズで、愛情の注ぎ方を知らなかったからだ。彼は怒る。彼は苦しむ。彼は暴れる。彼は叫ぶ。

「俺はたまたまクズのメスとオスの間に生まれただけだ。だがな、俺はおめえらみたいなクズじゃないんだ。見てろ、俺の未来はだれにも変えられねえんだ」

こんなに単細胞な科白を口にしても、住田は観客の胸を打つ。がんばれ住田、負けるな住田という気持を湧き上がらせてくれる。これは稀有だ。監督の園子温も、開き直ったような直球をずばずばと投げ込んでくる。その球がときどきナチュラルなシュート回転をして、観客の胸もとに食い込んでくる。

ここも急所だ。くりかえし挿入されるモーツァルトの「レクイエム」とバーバーの「弦楽のためのアダージョ」の一節が、料理の盛り付けに使われて効果を上げる。惜しむらくは、絶望と自暴自棄を突き抜けた先の笑いがいまひとつ足りなかったことだが、贅沢はいうまい。「ヒミズ」はけっこうハートに来る。私も昔、少しだけ住田だった。

(芝山幹郎)

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