エッセンシャル・キリング

劇場公開日:

エッセンシャル・キリング

解説

ポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ監督が83分間セリフなしで撮り上げ、第87回ベネチア国際映画祭で審査員特別賞、最優秀男優賞を受賞したサバイバルアクション。アフガニスタンで米兵を殺害したアラブ人兵士ムハマンドは、ヘリの爆撃を受け、一時的に聴力を失う。米軍に捕まりどこかへ移送される途中、護送車のアクシデントにまぎれて脱走したムハマンドは、雪に閉ざされた深い森の中を逃走する。主演はビンセント・ギャロ。

2010年製作/83分/ポーランド・ノルウェー・アイルランド・ハンガリー合作
原題または英題:Essential Killing
配給:紀伊國屋書店、マーメイドフィルム
劇場公開日:2011年7月30日

スタッフ・キャスト

監督
製作
イエジー・スコリモフスキ
エバ・ピャフコフスカ
プロデューサー
ジェレミー・トーマス
アンドルー・ロー
脚本
イエジー・スコリモフスキ
エバ・ピャフコフスカ
撮影
アダム・シコラ
美術
ヨアンナ・カチンスカ
編集
レーカ・レムヘニュイ
音楽
パベル・ミキーティン
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受賞歴

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映画評論

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映画レビュー

4.0人とのかかわり方が生む感情の変化を、研ぎ澄ました感覚で豊かに表現

2011年10月2日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

知的

これまで「ギャロ様」として数々の作品で暴れまわってきたヴィンセント・ギャロ。本作では、「本当にあのギャロか?」と目を疑うほどに、名もなく素性もわからない「誰でもない男」として、全編ひたすら逃げ、凍てついた雪原をさ迷う。
彼の必死の逃避行は、部外者にとってはただただ不可解で、滑稽にさえ映る。アリを食べ、木の皮を食べる。釣り人から魚を奪って生のままむさぼり、乳飲み子を抱いた女の乳房に食らいつく。そんな彼に遭遇する人々もまた、どこか間が抜けて見える。茶化すように軽口を叩いたり、ヒステリックに脅えたり。双方はまったくかみ合わず、すれ違うだけだ。
そんな彼に、手をさしのべる女性が現れる。彼女は耳が聴こえず、男同様に言葉を持たない。彼女は冷えきった男をストーブの側へ引き寄せ、血を拭おうとする。彼女の手で、傷付いた男の血まみれの肌が少しずつ露わになり、鮮血が白い布を染めたとき、彼が「痛み」を持つ生身の人間であると気付かされ、はっとした。翌朝、白馬に乗せられた彼は、安らかな終着点へと向かう。そのとき初めて、雪原は光輝く美しい自然として、スクリーンを満たした。
遭遇し通過するだけのかかわりから、引き寄せるかかわりに転じることで生まれる感情の変化。そしてそれは、当事者同士だけでなく、周囲にも変化をもたらし、視界を広げ得る。寡作の巨匠イエジー・スコリモフスキ監督は、人とのかかわりのダイナミズムを、言葉を排し、色彩を極限まで削ぎ落としながらも、感覚豊かに表現している。

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cma

3.5逃げまくる男

2023年2月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ある男が逃げて逃げて逃げまくる物語。
とにかく「自分が生き延びること」しか考えていない男は、ヘリコプターや兵士や犬の群れに追われても逃げる。他人を殺しても逃げていく……。
イエジー・スコリモフスキ監督作品。

映画では詳細な説明を排除して、主演のヴィンセント・ギャロには一言も喋らせず、共演のエマニュエル・セニエ(ロマン・ポランスキーの妻で女優)もセリフ無し。

どこか中東のような砂漠地帯が空撮で映り、一人の男が追跡されている。男は地上で追ってきた男達をバズーカ砲で爆死させるが、捕らえられる。軍の基地で痛い目に遭わされ、車でどこかに搬送される途中で車が崖から落下。男は事故のどさくさで逃げ始める。しかし、兵士たちと犬の群れに追われ、雪の中・激寒の中を逃げまくる。そして……という流れに終始するが、アチコチで男の周囲での出来事を描いており、単調にならない演出の上手さ。

今回観たDVD(紀伊国屋書店)の特典映像で、スコリモフスキ監督が本作キャンペーンのために来日した姿が映されていて、学生たちの前でのトークショー/京都の寺を次から次へと巡る姿/インタビューなどを見た。
日本には、(当時の時点で)数回目の来日だそうだが、スコリモフスキ監督がこんなに親日派だとは思わなかった。
スコリモフスキ監督が好きな監督は「3人いる」とのこと。
真っ先に挙げたのは「黒澤明」。その他2人は「オーソン・ウェルズ」と「フェデリコ・フェリーニ」とのこと。
特典映像では、都内の「黒澤」という店?で「黒澤明の描いたイラスト」を見るスコリモフスキ監督の姿。……イラストは『まぁだだよ』などが映っていた。

「逃げるためには、自分本位が最優先とする」あたりは、ロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』に似ている。
スコリモフスキと妻(エヴァ)は共同脚本・共同製作で映画を作っており、ポランスキー夫妻(妻は本作出演)と家族ぐるみの付き合いらしいので、通じるものがあるのか…。
(余談:社会人になってから、拙筆の映画評がキネマ旬報に初掲載されたのが『戦場のピアニスト』であった。)

スコリモフスキ監督の本作は、時々、ハッとするような美しい場面も見られる良質の映画だった。

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たいちぃ

3.0アラブなギャロ

2021年10月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館、VOD

悲しい

興奮

自身の監督作品「ブラウン・バニー」から音沙汰がなかったヴィンセント・ギャロの主演作、しかも劇場公開でイエジー・スコリモフスキ監督でありヴェネツィアで賞も獲り、ギャロの俳優人生でここまで評価されたのは記憶にない、しかも一切喋らずなセリフ無しで。

雪が積もる真冬の中、様々なトラブルも何気に回避しながら待ち受ける過酷な状況、一番心配になる素足での逃走も気が付けばブーツを拝借し、兵士含めて七人は殺している残酷さ!?

母乳は大人でも十分な栄養源になるのか、ギャロらしい演技を見せ付けられた。

初公開時、フォーラム仙台にて初鑑賞。

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万年 東一

3.0 何もしゃべらないムハンマド。言葉の違いによって喋れないのか、さっ...

2018年11月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 何もしゃべらないムハンマド。言葉の違いによって喋れないのか、さっぱりわからない。しかし、それが効果的で、純粋にアラーの神を信じていることだけわかる。生き残るためには他人を犠牲にしてもかまわないといったところが共感できず。撃たれたのなら、もう休んでいてくれと願いたくもなる・・・

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kossy