ALWAYS 三丁目の夕日’64 : 映画評論・批評
2012年1月17日更新
2012年1月21日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
希望を模索する今の日本人にとって、真に求められる映画になったシリーズ第3作
「国民的映画」と呼ばれて人気を博しながら、映画を見慣れている人たちからは少なからず不評も買ったシリーズの、第3弾だ。前2作は原作漫画をベースに昭和33~34年の下町を描いているが、今回の舞台はそこから5年後、オリンピックに沸く昭和39年。原作から離れた映画オリジナルの物語は3部作の最終章として最初から構想していたかのような展開で、きれいに着地。シリーズ最高の出来といえる。
まあ脚本には前2作同様にご都合主義で不自然な部分や陳腐なせりふがあるし、くどすぎる演出も健在。相変わらず粋ではない。3Dは東京タワーなどの空撮で「おお」と思わせる以外、さほどの効果はなし。しかし、何も考えずにどっぷり感傷に浸り、笑って泣けるというお約束が、きっちりと、最も心地よい形で果たされるのが本作だ。あの夕日町の住人たちが生き生きとした5年後の姿を見せてくれ、前2作にはなかった、5年という実際の「時間の経過」がノスタルジーをかき立てる。キャラクターの成長と変化が感慨を抱かせ、すべてのエピソードに貫かれた「人が人を思いやる心」が、これでもかと涙腺を刺激する。
単に昭和を美化し、懐かしがって終わりという映画になっておらず、時代の再現性が格段に上がっていることも大きい。戦後に別れを告げた高度成長期のピークで、浮かれていた時代。ここで豊かさと引き替えに日本は何を忘れ、どう道を誤ったのか、考えずにはいられないのだ。撮影開始は3・11の前だったので期せずしてだが、「絆」をよりどころに希望を模索している今の日本人にとって、真に求められる映画になっている。4作目と欲ばらず、これで完結としてほしい!
(若林ゆり)