戦火の馬のレビュー・感想・評価
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みんな、家に帰りたいだけだ
まず一番の不満点から語ってしまう事にする。
僕はハリウッド映画で英語圏以外の人間が英語で話すのを
あまり気にする方では無いが、今回は物申す。
この映画は言語を英語で統一するべきではなかった。
ドイツ人は独語で、フランス人は仏語で語るべきだった。
母国も思想も持たない一頭の馬の目を通して見えてくるのは、
家族、友人、そして生命への慈しみの心。
母国も思想も異なる人々にも共通して存在する温かい感情だ。
だからこそ、
国と国・人と人とを分断する上であまりに大きな役割を果たす“言語”という要素に手を加え、
人間の表面的な違いを曖昧にすべきでは無かったと強く思う。
しかしながら、良い映画。
この映画には、音楽・映像共に古典映画のような落ち着きと温かみがある。
まずはお馴染みジョン・ウィリアムズのスコア。
本作の音楽は台詞以上に雄弁に場面を語り、観客の感情をリードしてみせる。
音楽で物語をここまで豊かに語る映画は今や少ない。
そしてヤヌス・カミンスキーの映像だ。
かねては陰影が強くザラリと冷たい質感の映像が持ち味の彼だが、
今回は作品に合わせてそのスタイルを大きく変えた。
人の慕情に訴え掛ける柔らかな光と、冷たく澄んだ空気を感じさせる映像。
農村を照らす朝焼け、清々しい緑の山々、綿舞う黄金色の草原、
戦地の雨の冷たさ、ラストの燃えるように美しい夕焼け……
(しかしながら塹壕での戦闘シーンは、『プライベート・ライアン』
ほど凄惨では無いものの十二分に恐ろしい)
なかでも圧倒的に美しかったのは、
身動きの取れなくなったジョーイを救い出そうと
イギリス兵が無人の戦場を歩くシーンだ。
灰色の朝霧に包まれた戦場は、静謐で、厳粛で、まるで死者の棲む領域のようだった。
ドイツ兵とイギリス兵が協力してジョーイを救出するあの場面は
ここだけで短編映画として成立しそうな出色の出来。
とてもユーモラスで、わずかに物悲しい。
あれは一種の寓話だが、似たような逸話は幾つも聞く。
国の思想や戦争の大義名分はどうあれ、
やはり『怖い、死にたくない』と感じるのがいきものとして当然であって、
一人間どうしで面と向き合った時には、この映画のように
「お前は死ぬなよ」と言い合うのが本当の所なんだと思いたい。
みんなこんな事は望んでないんだ。家族の所に帰りたいだけなんだと思いたい。
古典的にして普遍的な反戦映画。
<2012/3/3鑑賞>
頑固夫婦と頑固息子の話?
決して悪くないです。ただ原作が児童文学であることを差し引いても、フランス人とドイツ人も英語を話し、ラストの大団円だけ唐突に西部劇風だったり、どうして?感が否めませんでした。「憎しみは増えても愛は減らない。」頑固者夫婦に★3.5 http://coco.to/4034
スピルバーグが挑戦した馬と人間とを巡るドラマ
馬は美しい。
特に疾走する時の躍動感は、他の美しさを超越している。「静」ではなく「動」の美しさであり、それは、馬が他の家畜にはない美しさ、生き物が生き物たる所以を証明する美しさのひとつでもある。
それとは反対に、かつて馬は他の家畜同様、人間にとってその生活を成り立たせる商品でもあった。ある時は、動力源として人間のために働き、ある時は、彼らに大金をもたらすギャンブルの対象となった。つまり、人間の生活のために、犠牲にならざるを馬の一生がそこにある。
この二つの対極にあるものを、スピルバーグはそれぞれどう描くことができるか、そしてそこに、人間がどう描かれているか、がこの映画の肝。
まずは、馬のもつ「動」の美しさを、スピルバーグがちゃんと描ききれているか。残念ながら。それは否だ。CGを全く使っていないという主人公の馬ジョーイの表情や、ジョン・フォード、デビット・リーン、黒澤明らに影響されたと監督本人が語っている、イギリスやフランスの田園風景の絵作りには感心するけれど、それらは馬の「静」的な美しさを際立たせるものであり、そのことで、馬の持ついのちの力強さ、素晴らしさが客席まで伝わってくるかというと、それはちょっと疑問ではある。手は入れていない、とはいうが、あまりに擬人化されたジョーイの表情は、観客である人間たちに媚を売っているようにもみえる。同様に、背景の田園風景もジョーイの美しさを引き立たせるには、どこか落ち着きがない。かつての名匠がスクリーンの中に切り取った絵画的風景に対して、この映画の中にはどっしりと腰を落ち着けたものがないような気がする。
もっといわせてもらえれば、コーエン兄弟が「トゥルーグリット」(2010)で描いたアメリカ西部の風景は、冷たく荒れてはいたけれどピンと張り詰めて雰囲気を持った絵画的風景だったし、黒澤明に心酔していたかつての同輩、ジョン・ミリアスの「風とライオン」(1975)の駄馬ではあるかもしれないけれど、馬の持つ躍動感を十二分に表現した疾走場面、戦闘場面に比べたら、スピルバーグの監督経験の深さからいっても、この映画の中の表現には物足りなさを感じる。
それはおそらく、スピルバーグが作品全編に渡って今までの演出方法を封印し、全くケレン味のないオーソドックスなやり方に徹しているせいだろう。そのためか、牧歌的でもあり映画的リズムとしてはすこしばかり退屈でもある。そうせざるを得なかったのは、原作が児童文学であり、リアル過ぎると、物語そのものの否定にもなりかねない、といういわば「縛り」あったからだと思われる。物語の第一の舞台である第一次世界大戦の戦闘場面でも、迫力はあるけれど、「プライベート・ライアン」で描いた、血が飛び散るような悲惨極まるリアリスティック描写はない。そこがこの映画を、いわゆる「いいおはなし」で終わらせてしまっている。
一方で人間の生活と馬の一生の描き方はどうだったか。
まず映画の発端が馬のセリで始まり、馬のセリで結末を迎えるというのが、馬の「商品」としての一生を象徴している。その間に人間の生活が描かれているわけだ。富める地主と貧しい小作農、馬を愛する誇り高き上流階級出身の士官、戦争に徴兵された若きドイツ兄弟兵、戦場で家族を失ったフランス人の祖父と孫、兵器が機械化されていく中で殺戮マシーンとなる兵士、それぞれのあいだを「物」としてジョーイは渡りいくわけだ。
原作および原作を基にした舞台劇では、ジョーイの眼から見た一人称で物語が語られるそうだが、映画ではそういうことも出来ないから、人間が主役となって自身の生活を語っていくことになる。俳優は日本では無名だが、イギリスやヨーロッパの俳優がしっかりした演技を見せてくれるので、安心して観ていられるし、児童文学という「縛り」があるにせよ、主題である戦争の悲惨さ残酷さは、一定水準以上が描かれていると思う。ただし馬の一生という、人と人との間を渡り歩いて行く姿を追ったために、それぞれの人々の逸話の印象というか、深みがすこしばかり弱いし、それぞれの繋がりがバラバラな気もした。逸話に関していえば、ドイツ人なのに英語を喋り、フランス人なのに英語を喋る、ハリウッド映画のお約束だけれども、こういうところはしっかり否定して欲しかった。単に、馬の「静」の美しさを極めるだけではなく、このへんもしっかり現実感をもって描いていればそれぞれの逸話の印象もことなって、繋がりも増して、より心に深く感じることが出来たろう。
ラストの大団円も、古き良きハリウッド映画の影響だろう。前半の風景の描写がスピルバーグにしては珍しかったせいか、このラストはいつもの彼特有の、感動の押し付けが目立って、あざとく鼻についた。
決して悪い物語ではないのだが、スピルバーグはいくら歳を重ねても、その映画において、人間を描く詰めの甘さは隠せない。
美しい映像と音楽に引き込まれる
製作、撮影、編集、音楽はスピルバーグ作品でお馴染みの面々。
息が合ってるというよりも、今の映画界でこれ以上の画(え)を望むべくもない最高のスタッフである。
上空から望む、森から農場へと移るオープニング・ショットを観ただけでやられたという思い。こんなゆったりとした美しい映像と音楽で引き込んでくれる映画は、最近では珍しい。
ひょんなことで飼うことになった馬・ジョーイと少年アルバートとの交流から、戦火の中、次々と持ち主が変わる数奇な運命を辿る物語は、時に叙情的に、時として残酷に語られていく。
とくに戦馬として共に生きることになる黒馬・トップソーンとの二頭による強調と信頼は、人の友情にも勝る心の交流を爪弾き、ジョーイの生きる力と希望が画面にみなぎり、その姿は荘厳でさえある。
視覚効果の使い手スピルバーグが、極力、画像処理を使わずに創り上げた映像は、馬と人、人と人の繋がりを通して、平和の尊さと運命の絆を謳い上げる。
それぞれの逸話がよく、とくに危険を承知でジョーイを助ける勇気ある兵士の行動は、戦争の無意味さを訴える逸話として心温まる。
名作「風と共に去りぬ」ほどの壮大さはないが、それに近い色合いを持った素晴らしい作品に仕上がった。
アルバートの父親テッドが捨て去ろうとした“誇り”も帰ってくるラストシーンに、この作品の本筋を見る。
アルバートの母親ローズを演じたエミリー・ワトソンの存在感も注目だアルバートの母親ローズを演じたエミリー・ワトソンの存在感も注目だ。夫に対して放つ「どんどん憎くなるけど、それ以上に愛してる」は泣けるセリフだ。
思った以上に馬目線
見る前は愛馬が戦場にいってしまった飼い主の少年の「馬を探して三千里」的なものを想像していたんですが、思った以上に馬目線、馬が主人公の映画でしたね。
ジョーイ(馬)の飼い主が転々としていく様子はいいし、その時々の飼い主がそれぞれ戦争によって奪われたものがあり、戦争のおろかさ、悲しさを伝えてる。
それでも馬は生き抜く、走る。
その姿が美しくて、惚れ惚れ(…まあ、かなりCGでいじってる部分もあるんでしょうが)。
終わったあとに浸れるだけの余韻もあり、普段あまり映画を見ない人でも素直に感動できる作品だと思いました。そのへんはさすがのスピルバーグ。
個人的にはフランス、ドイツと舞台が移っていくのに、みんな英語を話しているから、いまどこなのかがちょっとわかりづらかった。
ハリウッド映画だからしょうがないですけど…そこは現地語にこだわってくれればよかったなぁ…と思いました。まあ、アメリカの観客は字幕なんて見ないらしいですからね…。
そういう部分で、ちょっと距離感、移動感といったものが伝わりにくく、それゆえにスケール感がダウンしていた気もしたのでした。
観ました
お馬さんの演技凄い
製作者の丁寧さが伝わります
体制を守るための人間の愚かさをお馬さんのピュアさ醸し出す純真さと比較して浮き彫りにされる。ストーリーは単純ながらかえって思い知らされます。
良い映画です。
戦火を駆ける奇跡の馬
…というタイトルでも良さそうな、一頭の馬ジョーイの数奇な物語。
このジョーイがとても美しく凛々しく、俳優で例えるならトム・クルーズやブラッド・ピットのようにスクリーン映えする。
ヤヌス・カミンスキーによる美しい映像やジョン・ウィリアムズによる雄大な音楽が存分に活かされ、大画面で観るに相応しい、感動娯楽巨編。
戦争によってアルバートとジョーイは引き裂かれてしまうが、ジョーイが戦地で出会った人間は、馬を愛してくれる人たちばかり。
それはドイツ兵士も然り。
そこに、平和主義のスピルバーグの良心が表れていた。
ご都合主義とかベタな展開と感じる人もいるだろうが、ここまでストレートな映画は最近見てなかった気がする。
とにかく、“イイ映画を観たい”という人にオススメ。
気持ちのイイくらいのスピルバーグ映画。
馬も人間も戦争は逃げるが勝ちである
舞台は第一次世界大戦のヨーロッパ。
装甲車や機関銃で大量殺戮が繰り広げてる真っ只中の戦場を如何に生き延びるかに感心が集まり、息を呑む。
たまにドライブ中にはぐれた犬が何日もかけて歩き続けて、飼い主の家まで無事に辿り着いたってぇニュースをたまにやるけど、それとはワケが違うのだ。
(当たり前じゃねぇかというツッコミは敢えて無視する)
小作人一家で調教される穏やかなトーンと、戦地に送られ、
絶体絶命の危機を重ねる緊迫シーンとのギャップに戸惑い、重苦しい世界観に慣れるまで、とても時間がかかる。
そもそも奇跡の馬云うても、戦地では殆ど活躍しちゃいない。
初戦で早々に射殺された大尉は、あまりにも間抜けで唖然の一言である。
しかし、血塗れの酷たらしい状況に応じて、バトンタッチされ、二転三転していく飼い主の人生模様リレーを見つめる馬の汚れなき瞳がとても印象的だった。
馬の瞳の輝きを通して、殺し合う事でしか存在価値を見いだせない人間の愚かさを突き付けられ、平和について考えさせられてしまう。
全体的に大味やけど、スピルバーグならではの上手いアプローチだ。
戦争の被害者は、まず第三者であり、彼らがメッセージを発しないと平和は逃げていく一方であると、面と向かって叫んでくれたのが、人間では無く、馬だった。
この意味って採点とか賞とかでは上手く解ってこないと思うけどね…。
まあ、それがハリウッドにおける戦争事情なのでしょうな。
では、最後に短歌を一首
『駆け抜ける 嵐を独り 帰るため 燃ゆる瞳は 絆を託す』
by全竜
千軍万馬!
開幕からしばらくは普通の状態だったが,
美しい景色とともに徐々に劇中に興味が沸き,
ジョーイの増えてゆく経験が入り込み度合いと重なって,
いつの間にか心は満たされていた。
”勇気”と”誇り”が伝わる美しいエンディングに涙。
中立な存在である動物を通して,
人間が起こす不条理の最たる”戦争”の真実を描きながらも,
人間同士の関係に希望を提示するメッセージが嬉しい。
情感豊かで味わい深い余韻を届けてくれる人間ドラマ。
壮大な見応えを満喫した。
人の思う『希望』になる馬
試写会にて
いろいろ説明しようと思いましたが、
とにかく、観たいと思われたなら観てほしい。
映像もきれいだし、戦中映像も迫力があります。
無意識ですが、馬のジョーイが逃げ出すシーンでは、
思わず祈りのポーズしてしまいました。
ジョーイは、人間並みの優しい馬。
出会う人々の思う「希望」になったり、
同じ立場の馬の代わって過酷な労働したりと、
どんな苦境でも諦めません。
最初は、少しだけ間延び感があるのですが、
どんどん引き込まれます。
絶対に、という程ではありませんが、
劇場で割り引き等での鑑賞なら納得!かと思います。
犬っこ馬
戦火の馬
in仙台、鳥越俊太郎さまの試写会参加したんだども、すごく混むんだろうなあと思いつつも、仕事終わりにぎりぎりの時間で行ったから、前の方の座席しかとれなくて、前から2番目の横っきわでヘンテコな席最悪!開演時間18時30分~って早すぎて友達誘っても時間早すぎて終わらないから結局一人鑑賞で寂しくね?って思ったけど、
それが功を奏して、馬の美しさと戦争の恐ろしさを大迫力で体感できて、止まらない涙で(も周りを気遣わなくて済んで)の大感動を味わえました。鳥さまは20分くらいの挨拶で、自分のお母様が大腸がんを患ってお見舞いに行くも、鳥さまのことを誰だかわからんかったらしくて、でも自分の息子ですよ、とおっしゃって初めて思い出してくれて、両手で鳥さまの顔をなでて、にっこり笑った‘奇跡の再開’の話をしてくれまして、片手にマイク、もう片手に原作者の原作本を小脇にかかえておりました。
鳥さま「ホーホー」て言うと馬が駆け寄ってくるんですよ!ここはお見逃しなく!
ってフクロウのまねはじめっから場内大爆笑だったけど、
そこでだいたいストーリー読めるじゃん、(戦争用に連れてかれた馬っこがホーホー言うたら‘奇跡の再開’がや?)ほんっとにそっくりそのまんまでシーンが来たっけども、そのシーンで涙止まらんかったや。女の子大好きな映画だわこれ。後の席からスンスン泣いてる女っ子多がったや、早く封切りしないかなあ、またジョーイに会いたいな!
最後に、この作品の上映時間は・・・何分だったかな?2時間・・・そのくらいでしょうかね?って適当こいていて場内大苦笑(笑)でその時になんか私と目が合って笑ってくださっておりまして鳥さまなんてダンディーで素敵な方なのだろうとほれぼれする次第でありました。
作品の感想は・・・最初から、うるうる来てしまったよ!大草原の小さな家みたいなメルヘンちっくな女ウケするつくりが最高にたまらんかった。馬が産まれてその光景をずっと見つめている男の子がいるんだけど、あれ、ここどこ?男の子=アルの家?じゃなさそうだし・・・何故にストーカーしてるん?ここきみの隣ン家か?そんで競売マーケット経て競り落としたずんつぁん家がアルの家じゃんか。なんで親父までおなじ馬に惚れてんのwwwうーんでもアル15歳には見えへんなああなんつーか鳥羽純ぽいよ。
馬のジョーイだけじゃなくてアヒルのハロルドさんもっと出番欲しかった!あの子名わき役だったな。クスッとするシーンていうか・・・もう少し出番くれても良いのではなかろうかと思った。
苦労して作付した作物が雨でだめになって、気持ちが沈んだ流れで「戦争だ!」の流れなんか秀逸っすな。でも戦地の仏国なのか自分の国の英国なのか、理解しかねるシーンがあったな。帽子のトンガリ具合で判断してたっけどね。あの可愛い娘さんはフランス娘だそうです。ジョーイに乗馬し「やっほーい」とぱからんぱからんしてたらどっこい!兵隊さんに囲まれて、おじいちゃんは向こうの川岸だからどうすればいいかガクブルでそのシーンで娘が犯されはしないかとドキドキしてしまってキャラメルポップコーンこぼれちったよ。
アルが戦地に行った場所はどこ?ってなったけどいちいち吹き替えてらんないよね。毒ガスで目が見えなくなっても最後には治ってんだ?治って良かったね、続編の妄想しちゃうけど、奇跡の馬ジョーイを探しに来たフランス娘のじいちゃんと、また運命の出逢いして、アルと結婚してめでたしめでたしにならんかな。一生をかけてこの映画について考えて行きたい作品です。また見ますわ。
重くて長いので 心の準備を、、
戦争に生き物(馬)が駆り出されていたという 事実。 一頭の馬の運命をたどって、人々のつながりと 命の尊さ・忘れてはならない惨劇を伝える 本作品。
ストーリーも良いですし、舞台となるイギリスとフランスの素晴らしい景色・その裏にある 戦争の恐ろしい光景と、スピルバーグ監督 独特の世界を堪能できます。
高評価で間違いないのですが、心を引き裂かれるような出来事が 次々と起こって、とにかく重い。 そして、長い(147分)。
良かったところ:
主人公アルバートを演じた ジェレミー・アービン。 透明感ある純粋な心の青年を 好演。
アルバートと出会い、のち壮絶な運命をたどる 馬・ジョーイの美しさ。
戦争に携わった人々の 心のうち(本心)
イマイチなところ:
馬の表情を 操作し過ぎ(CG処理が 雑過ぎる)
皆がみんな 英語を話すので(なまりだけでは)敵か味方か 判り辛かった(私だけかも?笑)
長い。
十分に感動したのですが、なぜか泣けなくて スッキリしない。 私自身の見解としては 「親友(馬)と引き裂かれた アルバートに共感したらいいのか、それとも ジョーイ(馬)目線で ストーリーを追うべきか、はたまた 反戦という部分に重きを置けばいいのか 迷いながら観た」のが原因かと。。 もっと簡潔で泣けてたら 評価上がったなぁと思う 4.0。 DVDが出たら 家(テレビ)で復習したいです。
P.S. 『マイティー・ソー』弟・ロキを演じていた ジョニー・ウィアー似のトム・ヒドルストンが 爽やかな将校役で出演中です。
馬の美しさに魅せられる
スティブン スピルスバーグ監督、米英合作の映画「WAR HORSE」、邦題「戦火の馬」を観た。1982年に発表された英国作家、マイケル モルパーゴの小説を映画化した作品。早くもゴールデングローブに ノミネートされている。
ストーリーは
ところは イギリスのデボン地方。
石ころだらけの土地を開墾する貧しい農家。
15歳のアルバートは 父が農耕馬として買ってきた馬を見るなり その美しさに心を奪われた。父親のテッドもまた この馬の姿に魅かれて 競売に参加して競り合っているうちに 引っ込みがつかなくなって競り落としてきたのだった。テッドはお金のない農夫の身なのに 農耕馬の代わりに美しい競走馬を買ってしまったのだった。帰るなり、妻のエミリからは、足の細い競走馬に畑作業などできやしない、と叱咤され罵倒され、近所の農民達からは馬鹿にされ、領主からは 借金が増えるばかりだ と笑われる。
しかしアルバートは この若馬に ジョーィと名をつけて、心を込めて訓練を始める。親から引き離されたばかりの若馬ジョーィと、孤独な少年アルバートとの間には、やがて友情が芽生え、ジョーィはアルバートの言うことなら何でもわかるようになっていった。ジョーィは 家族の願いを聞き届けるように、農耕作業も懸命にやって、家族を助けた。
時は1914年。第1次世界大戦が始まる。デボンの街からも男達が率先して志願し戦争に出かけて行った。借金に苦しむ父親テッドは 高額で馬を買いたがっている騎馬隊に、ジョーィを売る決意をする。アルバートは 無二の親友ジョーィを取られるくらいなら、自分も騎馬隊に志願して戦地に行きたいと懇願するが、アルバートはまだ兵役に満たない年齢だった。ジョーィとの別れに嘆き悲しむアルバートにむかって、騎馬隊の隊長は 戦争に勝って必ず連れて帰るから、と説得する。アルバートは 父がボーア戦争に行ったときに 優秀な兵士として表彰され受け取った旗をジョーィのクツワにお守りとしてくくりつけて ジョーィを見送った。
しかし しばらくしてアルバートが受け取ったのは 騎馬隊長の描いたジョーィのスケッチ画と、隊長の戦死の知らせだった。すでに、兵役の年齢に達したアルバートは、入隊してジョーィを探そうと決意する。
戦場は過酷な状況だった。英仏とも、戦況は膠着状態で死者が増えるばかりだった。アルバートは 歩兵として突撃要員として、駆り出されて、、、、
というお話。
映画の最初に、上空からイギリスのデボン地方の映像が映される。どこまでも続く緑の豊かな穀倉地帯、放牧も盛んに行われていて、ところどころに農家が点在する。広がりのある 美しい絵葉書のような景観だ。やがて、カメラが地上に下り、牧場を映す。豊かな緑を背景に 走り回る馬の美しさ。馬の出産、赤子が立ち上がり、歩き出し、母親馬のあとを 飛びまわって跳ねる。愛らしい子馬。風を切り勇壮に走る競走馬。馬の筋肉の盛り上がり。細い足で土を蹴る後ろ足の力強さ。走る馬の その姿の美しさは例えようもない。
そんな美しい生き物が戦争に駆り出され、砲弾をかいくぐり 重い大砲を運び、騎馬隊として敵地に飛び込んでいく。
ジョーィが自由を求めて、鉄条網で体中傷だらけになって 重い木の柵を引きずりながら力つきるシーンや、ぬかるみの中を重い大砲を引く労役を強いられて足を折るシーンなど、胸がつぶれる思いだ。第1次大戦の まだ近代兵器が開発される前の戦争の残酷さ。肉弾戦の冷酷無比な様子は、見るのもつらい。
戦場の非情さが淡々と映像化されるが、しかし哀しいシーンばかりではない。フランス片田舎の少女が出てくる。両親を殺され 戦火に脅えながら、おじいさんと暮らしている。自分が見つけた美しい2頭の馬を 軍に取られまいとして 必死に自分の部屋に隠す。それを見守るおじいさんの優しさ。
自分の馬ジョーィを探すために 戦場に行ったアルバートのひたむきさが胸を打つ。戦争場面が残酷だが、デイズニー映画らしい終わり方をして、子供も大人も楽しめる映画に仕上がっている。そして、強い反戦へのメッセージが込められている。
かつて、世界大戦のために、オーストラリアから136000頭の馬が戦場に送られた、と記録されている。そして帰ってきたのは たった一頭だった。現在、戦争記念館には、一頭の生きて帰ってきた馬、サンデイーの像が建っている。なんという おびただしい犠牲だろう。人が始めた戦争のために、人を心から信頼している動物が利用されて残酷な扱いを受けて死ななければならなかった。改めて、動物達を駆り出していった戦争を憎む。
この映画を撮影するために オーストラリアのゴールドコーストから14頭の馬と、ゼリ ブレンという40歳の動物訓練士が海を渡ってハリウッドに行った。彼女は、戦争で犠牲になったオーストラリアの、136000頭の馬を代表して 映画作りを手伝ってきた と言っている。
良い映画だ。
全95件中、81~95件目を表示