劇場公開日 2012年3月2日

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戦火の馬 : 映画評論・批評

2012年2月28日更新

2012年3月2日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

人間と人間以外の生命体の交流。四白流星のたどる数奇な運命

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人間と人間以外の生命体との交流。スピルバーグはこの主題が大好きだ。いや、取りつかれているといっても過言ではないだろう。

ただし交流といっても、両者はいつも仲よしというわけではない。鮫や恐竜は人間に敵対した。地球外生物や知的マシーンと人間との関係にも微妙なところがあった。ときには慰め、ときには脅威。では、馬は?

舞台は20世紀初めの欧州である。英国デボンの農場で飼われていたジョーイという馬が、第1次世界大戦で軍に徴用され、大陸へ送り込まれる。当然のことながら、ジョーイは数奇な運命をたどる。飼い主が代わり、さまざまな危機に遭遇し、欧州各地を転々とする。そしてジョーイは、自身の運命のみならず、飼い主の運命をも変えていく。

だが、ジョーイはウィンチェスター銃’73や妖刀村雨丸ではない。なんといっても、馬には生命がある。しかもジョーイは、四白流星の美しい栗毛駒だ。4本の足が白い靴下を穿いているように見え、額には縦長の十字を思わせる流星が走る。

スピルバーグは、その美しさと躍動感に「映画的生命体」の原型を見たにちがいない。ジョーイは大砲を引く。ジョーイは地雷原を駆ける。昂揚し、停滞し、錯乱することもある。

その変転を、スピルバーグが撮る。話が西洋巷談だと批判する方もいらっしゃるだろうが、単純な物語はむしろ意図的に選ばれた容器ではないか。第1次大戦中、英国では100万頭の馬が軍に徴用され、6万頭しか生き残れなかったそうだ。そんな数字を聞くと、「シンドラーのリスト」も頭に浮かぶ。だが、「戦火の馬」を映画として動かしつづけた美しい栗毛に、惨めな終幕を迎えさせてはならない。ジョン・フォードの映画を否応なく連想させるラストシーンは、適切な選択だったと思う。

芝山幹郎

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