トスカーナの贋作
劇場公開日:2011年2月19日
解説
「友だちのうちはどこ?」「桜桃の味」などで知られる名匠アッバス・キアロスタミ監督が、初めて母国イランを離れて撮影したラブストーリー。イタリアの南トスカーナ地方の小さな村を訪れたイギリス人作家が、ギャラリーを経営するフランス人女性に出会う。2人はあるカフェの女主人に夫婦と勘違いされたことをきっかけに、まるで長年連れ添った夫婦であるかのように振る舞いはじめる。主演のジュリエット・ビノシュは、本作でカンヌ映画祭主演女優賞を受賞した。
2010年製作/106分/フランス・イタリア合作
原題:Copie Conforme
配給:ユーロスペース
スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る

- ×

※無料トライアル登録で、映画チケットを1枚発行できる1,500ポイントをプレゼント。
久しぶりに見たキアロスタミ作。
人の顔を大写しにする画面の切り方が多いせいか、なんだかドキドキする。
鏡とか窓に相手を映り込ませる方法も印象的。
アメリカ映画には興奮が、ヨーロッパ映画には物語もしくは人生がある……と改めて思った。
途中、話が大転回するシーンで、「え? どういうこと?」と大混乱し、思わず最初から見直した。
そうしてみると、なんだか腑に落ちなかった表情や会話が一気に納得できる。
イタリアの陽光を背景に 男は”夫”になり 女は”妻”になっていく。しっとりとした大人の夫婦ごっこが展開され、どこまでが ”ごっこ” なのかこっちが翻弄されてしまいました。
2012年9月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
キアロスタミが母国イランを離れ、外国語で撮った長編第1作。スマートな大人の男女が、オシャレな街で繰り広げるスタイリッシュなラブ・ロマンス・・・と思っていた、観るまでは・・・。陽光ふりそそぐトスカーナのロマンティックな街並みは、おおよそキアロスタミらしくないなぁ・・・と思いつつ、のほほんと観ていると、キアロスタミの仕掛ける罠にまんまと嵌ってしまう。これは間違いなくキアロスタミ作品だ(笑)。
贋作についての新作を発表したイギリス人作家(映画初出演のオペラ歌手シメル。見た目もスマートだが、声が魅力的)が、講演先のトスカーナで知り合った地元でギャラリーを経営するフランス人女性と知り合う。ドライブに出かけた2人が、カフェの女主人から夫婦に間違われたため、そのまま疑似夫婦を装うことになる。知的な2人の会話は、芸術や贋作のことから夫婦間にあるべき愛情のことへと発展していく。長年連れ添った夫婦間の不満などが、互いの口からほとばしり、この2人が本物の夫婦に思えてくる。果たしてそうなのか?虚実(本物と贋作)が入り混じる中、おそらく2人が交わしている会話の”中身=感情”は本物なのだろう。女は感情的に行動し、男は冷静でいながらもついつい女のペースに巻き込まれてしまう。女は男のために装ったりなどして魅惑的だ。男は女の態度に苛立ちつつも時に優しくいたわる。
贋作は見るものの感情により左右されると説く作家。真実も然り。女は妹の吃音の夫の話をする。「何が真実なの?」と問う女に、彼女の妹の夫が妻を呼ぶ言葉「マ、マ、マリー・・・」が真実だと男は答える。偽装夫婦のタイムリミットが近づく夕暮れ。新婚旅行の思い出の場所と称するホテルの一室で女は男に言う「行かないで、ここにいて。ジェ、ジェ、ジェームズ・・・」と・・・。
2人が本物の夫婦であれ、贋物の夫婦であれ、彼女の言葉こそが「真実」なのか・・・?戸惑う男の背後の窓から、タイムリミットを知らせる鐘の音が鳴り響く・・・。
2012年5月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
ジュリエット・ビノシュとウィリアム・シュメルのほぼ二人芝居のようなストーリー。
夫婦を演じる二人。でも、本当に演じているのか? もしかしたら本物の夫婦ではなかったのか? イタリアのトスカーナ地方の片田舎を舞台に、訪れた作家とギャラリーの女主人が町を散策しながら交わす会話が全てである。
始めは他愛の無い会話から、少しずつ男と女の本音が語られていく。
まるで本物の夫婦のように・・・。
新婚旅行で泊まったホテルの同じ部屋に入り、窓の外の景色の変わらなさを話しながらも作家は時間を気にする。
だが、その時も過ぎていく。
二人はいったいどっちなのか?本物なのか、コピーなのか。
ジュリエット・ビノシュはプロ。
ウィリアム・シュメルは素人。
その二人の組み合わせ。
本物とコピー、それらを区別するものは何か?
意味深なラストで終わる。