「置き換えてみれば」わたしを離さないで ぷにゃぷにゃさんの映画レビュー(感想・評価)
置き換えてみれば
カズオ・イシグロの作品は、けっこう残酷なところがある。作品ごとに世界観が違い、日本、執事、探偵、騎士、など、バラエティに富んでいる。この作品はざっくり言えばSF? イシグロのインタビューか何かで、作品の構想中、生きる時間が定められた若者を思いつき、そこからふくらませた物語だそうだ。
映画は原作のエピソードを取捨選択しているが、割と物語を忠実に追っている。ただ、文章を読んで想像するより、可視化されて生々しくなったところもある。栄養管理、健康管理の徹底ぶりや、学校にやってくる「プレゼント」のがらくたぶりなど、なるほどと思った。ダークチョコレートも食べられないし。甘党には悲しいよ。もし、成長途中で治らない病気になったら、やはり強制終了なのだろうか…。
題材が暗いが、他のものに置き換えれば、日常的にあることだ。人間が食べるために育てられる動物、新薬の効果を試される動物、住む土地や文化を奪われた民族など、一方が犠牲を強いられることはたくさんある。それが当たり前になっていることを確認させられる。キャシー達5人がカフェに行った時、店内の年配の客が、眉をひそめながら彼らを見る。「提供者」が臓器を移植してくれるから、その人達は無事に年を重ねられたのに、それを当然と認識している。「提供者」にも感情や知性があることは想像もせず、下等な存在として見下すのだ。映画ではそれを描写するまでだったが、TBSのドラマでは「提供者」の人権に踏み込んでいた(トミーにあたる役を三浦春馬が演じていて、熱演だった)。
タイトルにもなっている曲「Never Let Me Go」は、古臭い印象だったが、よく考えたら元の持ち主が飽きていらなくなったから、ヘールシャムに渡ってきたってことか。外部と遮断された中で、自分の好みの音楽が何かも知らず出会ったテープ。辛い時もキャシーの救いになっていた。トミーもしゃれたものを贈り物に選ぶよね。ちなみにドラマの曲の方はおしゃれだった。
おしゃれと言えば、タイトルや年、場所が変わる時に挿入される、無地バックに文字だけ、というのはかっこ良かった。海辺の難破船を見ながら3人が佇むシーンや、キャシーが柵に引っかかかったごみを見つめるラストシーンも美しかった。
ぷにゃぷにゃさんおはようございます。
レビュー拝読。朝から久しぶりにこの映画のこと、思い出しましたよ💦
「隠されているこの世の中のシステム」=利用するだけ、&消費するだけのソサイエティと
VS利用されるだけ、&消費されるだけのソサイエティと、そういう社会の仕組みですね。
カズオ・イシグロは、見てはいけないこの世の生の姿をえぐるから、だからこの映画には目をそむけたくなるような“はらわたの解剖”があるのだなぁと、思いました。
・・存在しないことにしてなくちゃいけないタブーを見せちゃうから僕はこの映画から逃げたかったのだと、気が付きましたね。
きょう会社で出会う同僚たちを大事にしたいと思います。
朝っぱらから失礼しました
きりん
レモンブルーさん
コメントありがとうございます。
約ネバはまだ見てないんですが、いろんな人のレビューを読んでたら、なんか見た気になってきました(笑)
TBS臓器提供3部作とは、私が勝手に言ってるだけで、ほんと何のこっちゃですよね。
金曜ドラマで、ウロボロス、アリスの棘、わたしを離さないで、この3つは臓器提供に関係する話だったと思います。
流行りだったんですかねぇ。
ぷにゃぷにゃさん 「約ネバ」に共感をありがとうございますm(__)m。映画 ご覧になりました?否定派が割といるようですが、映画単体で見たら面白いと思いました。ところで「TBS臓器提供3部作」って何ですか?
ぷにゃぷにゃさん お久しぶりです。「エイプリルフールズ」に共感をありがとうございますm(__)m!
この映画は 観てないですが、TV版は観てました。どうしてもシチュエーションが受け入れられず…ずっとモヤモヤしながら見続けたドラマでした…。