京都太秦物語
2010年公開
松竹・立命館大学・京都府の3者による「産学官連携プロジェクト」の一環として製作された作品です
山田洋次監督は、立命館大学映像学部客員教授として本作製作スタッフとしてに関わった同学部の学生22名の指導にあたられたそうです
京都駅の新幹線のシーンがクライマックスになります
その予告として大学祭で鉄道模型の展示シーンがあり新幹線の模型が走る様子が写ります
なんでこれを撮るのか?を山田洋次監督が学生に指導されている様子が目に浮かびます
でも卒業製作作品の割には商業映画に近い仕上がりになっています
お話は京都太秦大映通り商店街を舞台にした、豆腐屋の伜とクリーニング店の娘幼なじみの2人の恋物語です
寅さんシリーズのちょっとしたエピソードのような味わいもあります
でも描きたいのは別のことです
太秦は映画ファンならご存知の通り、日本のハリウッドです
今も松竹、東映の撮影所があります
でも昔は大映はじめもっと撮影所がありました
序盤に商店街の様々な人々のドキュメンタリー風の映像が挟まれます
撮影所の街のお膝元の商店街をして日本の映画界の最盛期と現状を
重ねて合わせて語らせようとした作品というわけです
同時に最盛期の太秦の様子の貴重な証言にもなっています
市電のような電車が何度となく登場します
それは京福電鉄嵐山線(通称らんでん)です
基本的には専用軌道を走る二両編成の電車ですが、ときどき一般道路を市電のように走る区間もあります
大映通りは、その広隆寺駅と帷子ノ辻(かたびらのつじ)駅の間の500メートル程にあります
冒頭の大きなお寺の山門のある停留所は広隆寺駅、ラスト近くの階段のある駅は帷子ノ辻駅です
狭い幅の小さな一般商店ばかりが両側に並びます
スーパーは小さなお店が1軒だけ
2024年に散歩したときは閑散としてとても賑やかとはいえませんでした
それでも、最近は街おこしの一環で映画をモチーフにしたカフェが出来たりしていました
カラー舗装がフィルムを模してあります
路肩にフィルムの穴のような段々があり時折細い白線が停止線みたいにありフィルムのコマを模しています
つまりここを歩く通行人は映画の中の登場人物だというわけです
また、上を見上げると大映通り商店街と書いた街頭の小さな看板の上に黒い映画カメラを模したものが載っています
西日で商店街のカラー舗装に自分の影が伸びると、まるでそのカメラで写されたように感じるという仕掛けです
本作でもチラッと写ります
どうです?行きたくなりました?
蛇足
太秦はJR の駅もありますが、徒歩15分ほど離れています
なので太秦を散策されるなら、風情のある嵐電(らんでん)の利用をおすすめします
紅葉で有名な嵐山のすぐ手前です
嵐山観光のついでについてお立ち寄りされてみてはどうでしょうか?
帷子ノ辻駅から支線の北野線に乗れば遅咲きの桜の名所で有名な御室寺へもすぐです
その先に本作のラスト近くでヒロインが勤めている立命館大学への最寄り駅もあります
太秦映画界村へはJR太秦駅からの方が近いです
お帰りの時に遠回りして大映通り商店街を通り抜けていかれるとよいでしょう
東映と松竹の撮影所は今もありますがもちろん関係者以外立ち入り禁止です
大映の跡地は今は中学校になっていて校門の横に本作冒頭で紹介された羅生門のグランプリを記念する広場があります
また映画神社として有名なお稲荷さんもあります
そうそう、小さなスーパーの入口に大魔神の高さ数メートルはある巨大像が立っています
大迫力ですお見逃しなく