劇場公開日 2010年10月2日

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ヘヴンズ ストーリー : 映画評論・批評

2010年9月21日更新

2010年10月2日よりユーロスペース、銀座シネパトスにてロードショー

「デカローグ」に匹敵する、観客の感情を痙攣させ続ける復讐のドラマ

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4時間38分という圧巻の長尺だが、「少女の失禁」に始まる各エピソードには強度の緊密感があり、少しもダレない。観客の感情を痙攣させ続けるドラマという点では、クシシュトフ・キエシロフスキー監督による10時間の大作「デカローグ」に匹敵しうるかもしれない。

家族を皆殺しにされた少女、妻子を殺された男、「復讐代行」を副業とする警官、理由もなく殺人を犯した青年……。各々の殺人事件に巻き込まれて「社会に居場所がなくなった人たち」が新たな別の事件をきっかけに複雑に絡み合っていく。各々の事件はワイドショーや新聞の三面記事で連日垂れ流されている事件だが、当事者の被害者からすれば己の運命を狂わす一大事なのだ。全9章から成る「罪と罰」の物語の各章は、平穏な日常の中に突如闖入してきた殺人事件という「怪物」に直面した登場人物のその後の人生を描く。彼らの憎しみが大きなうねりのように肥大化して転がっていく構成がダイナミックだ。

長谷川朝晴演じる被害者が新しい妻子との生活を捨て船で海を渡る、暗示的なシーンがある。いわば「復讐の彼岸」へ向かうのだが、彼が無事に「再生」できるのか、感涙をもって見守った。ひとつの復讐は別の復讐を生む。思えば復讐の先にある空しさを説いたのは、他ならぬ「グラン・トリノ」のクリント・イーストウッドではなかったか。もはや、映画が復讐をストレートに描く時代ではなくなったようだ。

サトウムツオ

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