トロン:レガシー : インタビュー
20年前にこつ然と姿を消した父親からのナゾのメッセージに導かれ、コンピューターの中の世界に入り込んでしまった青年サムの冒険を描いたSFアクション超大作「トロン:レガシー」。第23回東京国際映画祭の特別招待部門に出品された本作の特別フッテージ映像をひっさげて、主人公サムを演じたギャレット・ヘドランドが来日。革新的な映像が早くも話題になっている本作の魅力を語った。(取材・文:編集部)
ギャレット・ヘドランド インタビュー
「父親と息子の関係を描くことが、この映画で最も重要なことなんだ」
本作でまず目を奪われるのが、圧倒的なスケールのビジュアルで描きこまれたコンピューターの中の世界。07年のコミコンで、数分間のフッテージを見たヘドランドは「これは絶対に出演するべきだ」と思ったという。翌年、スクリーンテストを経て主人公サム役に抜てきされてからは、フィジカル面を強化するため、本格的なトレーニングに励んだ。
「今回は格闘シーンがかなり多かったので、格闘技のほか、パルクール(道具を使うことなく安全かつ効率よく移動するための手段)のトレーニングを積んだんだ。それから、黒いスーツを着ての撮影がメインだったので、まずそれに慣れることが重要だった。スーツを着てのスタントにはどうしても制限があるからね。結局、慣れるまでには3~4カ月くらいかかったかな」
こうして長期間のトレーニングを経て撮影に入ったが、やはり苦労したと語るのが「ディスク」と呼ばれるフリスビー状の円盤を使ってのアクションシーン。
「ディスクを使って動き回るのがとにかく大変だった。ディスクを使うシーンは、ノンストップで撮影しなくてはいけないからね。もちろん、その格闘シーンでは多数のケーブルにつながれていて、体を動かすのも大変。普通にTシャツとジーンズを着ていても大変なのに、あのスーツを着てケーブルにつながれて、そのうえヘルメットをかぶって、あの大きなディスクを使いこなすのは本当に難しかったよ。おかげで、我慢強くなったけどね(笑)」
ヘドランドが、この「トロン:レガシー」に魅力を感じた理由は、最先端技術を駆使した驚異的なビジュアルだけでなく、古典的な父子の関係を描いたストーリーにもあった。
「この映画のキーワードは『家族』。基本的なストーリーは、20数年前に失踪した父親を捜す息子の冒険だからね。この父親ケビンと息子サムの関係を描くことが映画の背骨なんだ。たぶん、その関係性がないと、どんなテクノロジーを駆使したすごい映像であっても、面白い映画にはならないと思う」
複雑な親子関係から生じたサムの精神的な葛藤(かっとう)にも役者として興味があったようだ。
「父親が失踪した少年がどういうふうに成長するのかということは、僕にとってとても興味深いことだったんだ。加えて、サムには父親がどこで何をしているのか分からないし、彼に会いたい気持ちと相反して、彼に対しての怒りも持っている。そんななかで冒険に飛び出さなくてはならない人間の心境というのはとても面白いと思ったんだ」
そして何よりも、名優ジェフ・ブリッジスとの共演に大きく心を動かされたという。
「自分が持っている夢を絶対に忘れないということは、男としてとても重要なこと。ジェフを見ていると、生きることや人を愛することについて、彼はいつも楽しさや喜びを感じているように見える。彼は30年以上の素晴らしいキャリアを積んできて、3人の娘ともとても良好な関係を築いている。そういった彼の資質に僕自身とても影響を受けた。いつの日か、僕も彼みたいになりたいと思ってるよ」
ブラッド・ピット主演の歴史大作「トロイ」(04)で俳優デビューして以来、スポーツドラマ「プライド/栄光への絆」(04)、犯罪アクション「フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い」(05)、ファンタジーアクション「エラゴン/遺志を継ぐ者」(06)など、さまざまなタイプの作品に出演し、ついに映画初主演を射止めたヘドランド。出演作選びの基準とは?
「自分のなかでは、一作ごとに大きく変わることを目指していて、この映画で演じた役とは正反対で、しかも今までやったことのない役を次回作では演じたいんだ。あと、この仕事をやるうえでもうひとつ決めていることは、映画に出演することを『お仕事』ととらえないこと。事務所やエージェントは『キャリアのために、どんどん仕事をやれ』なんて言ってくるけど、僕は次の出演作が自分を成長させてくれるものでなければ、出演する意味はないと思っている。お金のためではなく、自分が掲げている目標を達成するために俳優業を続けていきたいね」