魔法使いの弟子 : 映画評論・批評
2010年8月17日更新
2010年8月13日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
魔法が輝く瞬間がこの映画にはたっぷり詰まっている
今も魔法はある。そんな、今やファミリーアニメですら描かないテーマを大真面目に描いた製作総指揮&主演のニコラス・ケイジに拍手。これは彼の信念に違いない。
物語はシンプル。アーサー王伝説に登場するマーリンとモルガナ・ル・フェイの設定を大胆にアレンジして、善VS悪の対決に単純化。映画のタイトル通り、その二派それぞれが、中世の魔法使いとその現代の末裔という、師弟コンビを組む。当然、両派とも師弟の間でオールドスクールVSニュースクールの対立があるのだが、本作は元ネタとなった名作アニメとは異なり、新旧のどちらにも優劣をつけない。「魔法はつねに在るのだから、旧いも新しいも関係ない」という信念に貫かれているのだ。
その信念を証明するべく、映画は魔法が今どんな形をしているのかを描いていく。善の末裔が物理学オタクの大学生で、悪の末裔がロックスターの扮装をした人気イリュージョニストなのもその一例。また、主人公が物理実験に使う装置が、エジソンとは別の科学を夢みた科学者ニコラ・テスラが発明したテスラコイルだというのもロマンチックだが、彼は恋に落ちたとき、いつもコイルが発していた音が、音楽でもあったことに気づく。これも魔法。魔法とは、もうひとつの視点で世界を見たときに生じる力のことであり、それは今もどこにでも存在する。そんな魔法が輝く瞬間がこの映画にはたっぷり詰まっている。
(平沢薫)