パラノーマル・アクティビティ : インタビュー
08年のスラムダンス映画祭で上映されるやいなや、世界中のバイヤーから注目を集め、アメリカではドリームワークスが配給権を獲得。そして09年秋、深夜限定公開からスタートして口コミで評判が広がり、公開5週目にして全米ナンバーワンまで上りつめた話題のホラー「パラノーマル・アクティビティ」が、1月30日に日本上陸。ゲームソフトのプログラマーから、一躍映画界の注目を集める存在となったオーレン・ペリ監督が来日し、インタビューに応じてくれた。(取材・文:編集部)
オーレン・ペリ監督インタビュー
「いい意味で観客の期待を裏切ることが出来たんじゃないかな」
全編家庭用のビデオカメラで撮影、ロケーションは監督の自宅のみ、出演俳優は無名、製作費は1万5000ドル(約135万円)という超低予算で製作されながら、現在までに全世界で約1億7000万ドル(約153億円)の興収を上げている本作。当然のことながら、ペリ監督本人はここまでの成功を予想していなかったという。
「製作中はもちろんヒットするような映画になって欲しいと思ってたけど、正直、いい映画になるかすら分からなかったからね。ただ、映画祭での試写を始めた頃からフィードバックがとてもポジティブなものだったので、ヒットの可能性を少しは感じてた。だけど、まさかここまでの大ヒットになるとは正直思いもよらなかったね。だから、今は感謝しつつ圧倒されている感じかな。今の気持ちを聞かれたら、ベリーハッピーと答えるしかないよね(笑)」
アメリカ・サンディエゴで暮らす若いカップル、ミカとケイティが夜中に家の中で奇妙な物音がしていることに気づく。そこで、ミカがその原因を究明すべくビデオカメラを購入し、寝室に設置すると、そこには衝撃の映像が映っていた……というストーリー。一軒家の中で起きる「超常現象」を描いたホラー映画というと、本作を絶賛したスティーブン・スピルバーグ製作・脚本による「ポルターガイスト」を思い起こさせるが……。
「『ポルターガイスト』は実際に製作準備期間に見て、作品としてはとても楽しんだんだけど、ビジュアル・エフェクトやアクションが多いホラーだった。いろんなことが現象として派手に起きるんだよね。それに対して、今回の映画はゆっくりとスタートして、段々とサスペンスが盛り上がっていく。その作り自体は、どちらかというと『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に近いんじゃないかな。他に意識したホラー映画は、ロバート・ワイズ監督によるオリジナル版の『たたり』『エクソシスト』『アザーズ』『シックス・センス』あたりだね」
本作製作準備中の1年間に、上記のホラー映画を研究するほか、エクソシズム(悪魔払い)の研究もしたという。
「いわゆる『呪われた家』が出てくるホラー映画を見たときに、いつも思っていたことが、『家に霊がついているんだったら、引っ越せばいいじゃないか』ということなんだよね(笑)。だから、今回はその辺を避けて作りたいと思ってた。ちょうどそんなときに、『悪魔に取り憑かれた場合は場所でなくて、人物に取り憑いていることが多い』と、読んでいた本に書かれていたので、そのまま主人公たちに取り憑くのは悪魔のようなものにしようと決めたんだ。それだったら、家を出ても同じだから、家にとどまるというロジックになるからね(笑)。
それに、今回の映画ではエクソシズムを描く方向に行きたくはなかった。エクソシズムを扱う映画はこれまでにも色々あったし、エクソシストによる悪魔払いというのは、実際にはそれほど成功することはなくて、むしろ悪化させることが多いらしい。今回の場合、観客は映画を見に来ているわけだから、映画のセオリーに乗っ取れば、エクソシストの活躍を期待すると思うけど、いい意味で観客の期待を裏切ることが出来たんじゃないかな」
そんなペリ監督が分析する、本作が“恐い”という評価を受けた理由とは?
「いくつかあると思うけど、まず、“超常現象”が実際に起こっているシーンよりも、なにかが起きそうな予感がだんだんと積み重なっていくサスペンスのビルドアップの部分が重要だったと思う。次に撮影スタイルがドキュメンタリータッチだったから、リアリズムをはらんでいるところ。俳優たちの演技もリアルじゃなかったかな。そして、『人間が睡眠をとっている真夜中に、もしなにかが起きていたら?』というとても分かりやすい前提があったのも重要だったかもしれない。この分かりやすさがあったからこそ、観客は映画に入りやすかったと思うんだ」