さまよう刃(2009)のレビュー・感想・評価
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自分ならどうするか
父は、一日も早い犯人の逮捕と、その極刑を望むが、犯人は少年法に守られるに違いない。そのやるせなさに、自分だったらどう行動するか? この作品は問い掛ける。
法を遵守することが警察の努めか、弱者の味方が警察のあるべき姿か、伊東四朗と竹野内豊が、建前と情のあいだで揺れ動く刑事を好演。ありがちな「お嬢さんは、復習を望んではいないはずです」などという、きれいごとで片付けずに、いろいろな角度から娘を亡くした父に迫り、サスペンスの形をとりながら重厚な人間ドラマに仕上げている。一般の何の力も持たないひとりの父親が、犯人を追い求めて雪山をさまよう姿は、まるで手負いの親熊のようだ。踏切のシーンでの、寺尾聰の表情と息づかいが目に残る。
同じような設定でも、ハリウッドだと先日の「96時間」のようなアクション映画になってしまう。お国柄だな。
原作者の言いたいこと半分以下(怒)
どうして原作通りにしてくれないんだろ?
犯人の少年らの素行の悪さとか、バカッ母ぶりとか(←これ重要だと思う!)、
マスコミの加熱度合いとか、
寺尾聰演じる長峰がいかにして境界線を越えるに至ったのか(少年法で保護されて極刑が望めないだけで人を殺さないでしょう)、
酒井美紀演じる木島和佳子より、なぜ父親の方が、何故長峰にシンパシー感じてんだ!同じ娘を持つ父親だからって、こんなことするか?これなら、別に酒井美紀はいらない。
長野の山中のシーンが長すぎるように思った。長峰の怒りが浄化されつつある様子を、延々と雪山を映す事によって表していたのだろうか・・・
寺尾聰はさすがにうまかったが、伴崎殺害シーンなどは激情に駆られて、という感じもなく、レイプシーンも正視に堪えないという感じでもなく、やはり映像化は難しいのね、と思いました。
納得感が・・・・・
東野さんという有名作家の同名小説が原作です
そもそもいつも原作読んだことありませんが
娘を惨殺された父、長峰(寺尾聰)が、密告電話から、未成年者の犯人を知り、復讐に向かいます
犯人が未成年者であるがゆえ、長峰の復讐から犯人を守ることになる矛盾に悩む刑事、織部(竹野内豊)、それが警察の仕事だと諭す刑事、真野(伊東四朗)といった3人が主人公となっています
長峰は迷い無く、
織部は迷いっぱなし、
真野は迷うことを放棄
公式サイトでも極悪人が少年法により、必要以上に保護されていることに対する是非などを問う問題提起をしています
そんなお話です
映画のラストシーン、おじさんは全く納得しませんでした
逆に作品が薄っぺらくなってしまった感じがしました
皆さんは如何でしょうか見た人に聞きたいな
もともと、テーマ、内容からして、爽快感を求めるものではないのはわかっていますが、何となく納得感が足りません
どこへ流れてゆくのか。
東野圭吾さんの作品はガリレオシリーズ以外、読んでいない。本作の原作は初期作品だろうか。どこか青臭い感じがした。
作り方は上手。導入など入り込めたし、内容も重いものだった。ただ、少年犯罪の問題はこれまで多く取り上げられているし、被害者が加害者になる作品も珍しいものではない。
ラストは矛盾というか、強引過ぎて無理がある気がした。
今の時代の、考えさせられる重いテーマ。
東野圭吾が原作。少年犯罪と、その被害者家族が描かれています。今の時代、結構シャレにならないテーマです。
実は正直、最初は余り見に行くつもりも無かったんですが、原作が東野圭吾と言うことと、あらすじを知って、そのテーマに興味を引かれたので見に行く事にしました。ストーリーは、想像通り進行します。途中の長峰と木島親子&長峰と織部の絡み、そして、物語の結末と、期待(予想)を裏切りません。とは言っても、別につまらないわけではなく、テーマの重さに考えさせられて、物語に入り込んでしまいました。結果として、見に行って正解でしたね。
さて、主人公長峰役の寺尾聰ですが、『半オチ』と言い、『亡国のイージス』と言い、憂いを湛えた男の役が上手い! 長峰は彼以外にはありえないと確信してしまいました。
対する刑事の綾部役の竹野内豊もイイです。犯罪者を取り締まる刑事と言う仕事と、犯罪を犯してしまった犯罪被害者に同情する気持ちの矛盾に悩む青年刑事を非常に上手く演じています。
その竹野内豊を引き立たせているのは、綾部の先輩真野を演じた伊藤四朗。バラエティーのイメージがある伊藤四朗ですが、締める所は締めますね。織部が長峰に、菅野の現れる場所を教えたと言う事が判っていたみたいですが、多分、その可否を織部自身に考えさせながら、不問に付すんでしょうね。最後シーンでは、真野が長峰を撃つんですが、長峰を撃つとしたら真野以外には有り得ないと思いました。
やっぱりいい作品って、主人公も良いですが、脇を固める役者が良くないと、トータルとして良い作品にはならないという事がわかりました。その意味で、この映画は脇も良い役者で固め、非常に見応えのある作品になっています。原作も読んでみたくなりました。でも、読んだら、頭の中に寺尾聰とか、竹野内豊とかが出てきそうです(苦笑)
神を見失った現代人が正義と許しをどう考えばいいものでしょうか。深い余韻を残しつつ、考えさせられるサスペンスです。
時々、似たテーマの新作が同時に公開されることがあります。
今週の場合は本作の「さまよう刃」と「狼の死刑宣告」。どちらも最愛の子供を殺された父親の復讐編です。本作は東野圭吾の小説の映画化したもの。少年法の矛盾を浮き彫りにしたつらく重い本です。けれども原作は150万部のベストセラーを記録しました。見た感想としては、重いなりに第一級のエンタテインメント性も備えていると評価出来ました。
後者はかつてチャールズ・ブロンソン主演で映画化された「狼よさらば」の続編小説をもとにした『ビジランテ(自警)』もの。
簡単に言えば警察や法に頼らず自力でコトを成す「必殺仕置人」のようなストーリーです。
「96時間」みたいに元すご腕捜査官でも警察でもないという点でも共通点があります。けれども「さまよう刃」のラストで決定的に違うところは、主人公の復讐への考え方でした。
凶悪犯罪で中学生の一人娘の命を奪われた父親の長峰は、警察に先がけて、復讐に走ります。ここで問題は、警察を上回る情報収集をどうやって得るかです。ここで犯人の二人に脅されて、車を運転するなど犯行に強制的に関与させられた中井という少年に、捜査の手が伸びます。どうも中井は、犯人の二人から、普段からいじめを受けて恨んでいたようです。その恨みを晴らすために、中井は長峰の留守番電話に密告したのでした。そして中井の期待どうり、加害者である二人の少年の身元を知りえた長峰は、犯人の一人である菅野を殺害してしまいます。
長峰は、なぜそんな凶行にでたのでしょうか?そこに本作の重いテーマが潜んでいました。現行の少年法では加害少年は人を一人死なせてもほぼ死刑にならないため、長峰は自らの手で二人に"極刑″をくだそうと単独行動を開始したのです。
そんな長峰を追うふたりの相棒刑事。ただそのふたりの長峰に対する考え方は、全く違っていました。ベテラン刑事の真野は、あくまで法を犯した殺人犯として、刑事の職務を黙々とことしか頭にありませんでした。彼にとって、それが刑事としての常識であったのです。ところが若手刑事の織部は、長峰に同情し、彼の犯行を阻止し、少年犯を保護するための捜査に疑問を持ちます。法を守るためだけの捜査なのですかと。
織部の疑問に輪をかけるように、長峰は警察やマスコミに手紙を出します。その中で、少年犯罪の矛盾点を、このような言葉で告発していました。
『伴崎は未成年です。逮捕されたとしても、更正と社会復帰を目的とする理由で、刑罰とはとても言いがたい判決がくだされたことでしょう。一度生じた 「悪」は決して消えることはありません。彼らによって生み出された 「悪」は、永遠に私の心の中に残り続けるのです。』
原作は、常に長峰への共感者と、法という建前で接しようとする否定者を登場させて、少年犯罪の矛盾点を浮き彫りにしていくのでした。
もう一人の犯人である伴崎を追って、 長野の潜伏先をあてなく流し続ける長峰がたまたま宿泊したペンションでも、この構図がくっきりと出ていました。
ペンションのオーナーである和佳子は、長峰の正体に気づき何とか犯行を思いとどまらそうと説得。聞き入れられなかったため、警察に通報してしまいます。
しかし、和佳子の父親は、同じ娘を持つ立場から、長峰に同情して、警察から逃がすばかりか、車と猟銃まで与えてしまうのです。
この作品のいいところは、少年犯罪の矛盾点を浮き彫りにしつつ、法を守る立場の人間と、長峰に同情する立場の人間をイーブンで描いていることです。観客も見ていて辛くなるほど、どちらの気持ちもよく分かるように描かれています。
そして決定的なことが起きます。
織部は、捜査事態に苛立ちが募り、とうとう肝心な場面で、長峰の逮捕を躊躇して、逃がしてしまうのです。
犯人に情報協力する刑事するわけがないというのが常識でしょう。しかし 長野から逃亡した伴崎の居場所を知るためには、長峰に同情的な刑事が情報提供する必要ありました。 そのあり得ない設定に見事仕向けていく脚本が秀逸です。
そして織部は、長峰の復讐の真意を知ります。織部のみが知り得る長峰の復讐の方法。伴崎に長峰が猟銃を構えたとき、捜査陣は一斉に拳銃を構えます。独り長峰を庇おうとする織部を横目に、非情にも銃弾を放つ真野の冷徹さが際立っていました。
エンディングで長峰が語るセリフを知ったら、皆さんああそういうつもりだったのか!と深いため息をつくことになるでしょう。
あくまで寡黙な主人公。セリフも少なめです。抑制のきいた演出のなか、寺尾聴の静かな演技が冷たい刃のように光を放ちます。この重いストーリーに集中できるのは、寺尾聴の画面にひき付けて、離さない壮絶な演技です。
特に娘を失ったことを知ったときの嗚咽の仕方は、尋常ではありませんでした。
そして、真野刑事を演じた伊東四朗の非情さ。当初犯罪被害者として初めて長峰に接する時でも、筆記した万年筆から、当然のごとく指紋を採取するなど、ベテラン刑事ならではの職務に徹する男を演じていました。
それに比べて、織部刑事を演じた竹野内豊は、人情味と彼なりの正義感篤いところをうまく表現していたと思います。
小地蔵は、犯罪に対する裁きがどうあるべきかは優れて宗教的なテーマでもあると思います。イエスさまは、「目には日を」を否定して「右の頬を打たれたら左の頬を出せ」と説かれました。お釈迦さまは、「恨み心で恨みは解けない」と喝破されました。
先般の 青森地裁の性犯罪裁判では、被害女性の訴えを開いた裁判員たちが、これまでのク相場より重い懲役15年の判決をくだしています。今後は裁判員の素人感覚が厳罰化を招くことでしょう。
家族を殺されるという究極の状況にあって、神仏を信じていればまだしも、神を見失った現代人が正義と許しをどう考えばいいものでしょうか。深い余韻を残しつつ、考えさせられるサスペンスです。
切ないけど、深みがない
原作ほどじゃないけど、やるせなくて、切なくて、
この気持ちをどこにもっていけばいいのかわからなくなる。このような犯罪を犯すような少年も、いつか、更生して、親になることがあるのだろうか?
その時に、被害者の親の気持ちがわかるのだろうか?
考えても、考えても、答えがでない・・。
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