さまよう刃(2009)
劇場公開日 2009年10月10日
解説
「秘密」「容疑者Xの献身」など映画化が相次ぐ東野圭吾のベストセラー小説を、行定勲監督作品の脚本を手掛けてきた益子昌一が映画化。主演は「半落ち」の寺尾聰、共演に竹野内豊、伊藤四朗ほか。妻に先立たれ、一人娘の成長だけを楽しみに生きていた長峰は、ある日突然、残虐な少年犯罪により娘を失う。絶望の日々を送る長峰のもとに、謎の人物から犯人の正体を告げる電話が入る。
2009年製作/112分/日本
配給:東映
スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
2022年3月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
少年法改正の是非を真っ向から取り組んだ東野圭吾作品。原作本の分厚さを見ると読む気も起きなかったのですが、ここまで単純なストーリーだとは思わなかった。中学生の娘を薬漬けで凌辱された上殺されてしまった長峰重樹(寺尾聡)が少年グループの一人の密告により、復讐すべく少年を探す・・・
映画を観ていて真っ先に思い出すのが“光市母子殺害事件”。最近でも実名を記した単行本の出版差し止め問題によっておぞましい犯罪を思い出した人も多いであろうこの事件。未成年者(刑法での18歳未満)には更生の余地があるため極刑が下されにくいのですが、被害者家族を思うと世論は死刑判決を支持するようになった。そして世の人々は少年法の問題に加えて死刑制度の賛否という問題まで喚起させられ、この作品においても観客が様々な思いを巡らせる仕組みとなっている。
単純明快なストーリーの上、メッセージ色があまりにも強い社会派作品のため、見るべきところは寺尾聡の演技力と彼の絶妙な心理描写くらいであろうか。寺尾聡が良すぎたため伊東四朗や竹野内豊が浮いているような気がしたせいもあるけど、残念なことに、脇の俳優たちの心理変化が読み取れないので、突如仇討ちを支援する側にまわる意味がわからなかったためです。
単純な復讐劇だったら品位を疑うぞ!などと批判的な心と裏腹に、復讐を果たせるかどうかという緊迫の展開。ペンションの父娘にもう少し存在感があればよかったのにな・・・
【2009年10月映画館にて】
ネタバレ! クリックして本文を読む
東野圭吾原作だったのでWOWOWでドラマを第一話だけみた。(無料だったので)
グロさと悲しさ、苦しさ溢れるなんとも言えない目が離せない作品でした。
続きが気になりすぎて映画版を先にみましたが、ドラマではグロテスクに描かれた部分も省略され、娘の父の関係性をあまり感じることができなかったので悲しさも減ってしまった。
最後、空砲だったことが意外だった。恐怖を与えることが復讐ならなぜ1人目は殺してしまったのか、、ペンションの女性に言われて考えが変わってしまったのか。
また竹内がナガミネに犯人の場所を教えるシーンもよくわからなかった。警察が、犯人の味方をしていた。
視聴者からすると未成年の刑罰は甘く、ナガミネやってしまえと思わせる描写も多く、ナガミネよりになるが、最後は刑事に打たれて死んでしまうのも、本当に救われない。
これは映画ではなく、ドラマで見たほうが絶対にいい作品だと思った。東野圭吾の魅力を出すには肝心な悲痛さの部分が足りず、2時間では足りなかった。
ドラマ版を見ている最中での鑑賞になるが、ドラマ版は父の葛藤、少年たちの異常っぷりが鮮明に描かれていて、毎週目が離せない。
それが2時間ではやはり時間が足りないのか、関係者達の心の動きがとても上っ面なものに感じる。
暴力に暴力で返して根本的な問題は解決するのか?
では根本的な問題は何なのか?映画からはその答えを感じることが出来なかった。
ラストも弾の入っていない銃を向けて、その恐怖で彼が過去の誤ちを悔いてくれれば?そんなわけ無いだろ。
警察も長峰を殺す必要はなかった。無差別殺人犯では無いのだから、腕や足を打って銃を打てないようにすればいいだけ。
なんだか1番の癌だけが残っちゃって気分悪い。
ネタバレ! クリックして本文を読む
娘を婦女暴行のすえ殺害された男、寺尾聰が復讐のために少年1人殺し、残る少年1人を追う。
で、意外なことに追いかける先で彼の周辺に居た人物たちや刑事である竹之内豊までもが彼の復讐を後押しして少年の居場所を伝えたり、猟銃を提供したり。そこまでするんなら竹之内は代わりに撃ってやれよ、その拳銃をと思ってしまうのだけど笑 結局応援する人達もあくまでも法の範囲でというある意味中途半端な精神だから、土壇場で寺尾聰は警察により射殺されてしまう。最後の最後で彼は撃たなかった、しかも猟銃は空砲だったわけだ。苦々しいが、刑事の相方伊東四郎が語るように、もう娘を亡くした彼には未来なんて無かったとも言える。自殺だったわけだ。
少年の方の役者がちょっと、ヒャッハー系というか。ステロな若者像なのがあまり面白くはない、敵として怖くもない。それはそれで腹が立つから良いのかなとも思う。2009年はホスト崩れのようなスカウト師たちが池袋などにうじゃうじゃ居たから、そういう時代背景なんだろう。
警察は法の番人なのであって、国民の番人ではないというテーマ性自体は全く新しいものではないのでそれを巡る竹之内の葛藤とかは冗長に感じてしまう所があった。協力者たちの協力が中途半端というディテールは深いテーマに届いてると思ったけど。とりあえず竹之内はそんな敏感な感性でよく警視庁一課まで昇進できたやなと笑
復讐劇には敵をバンバン殺していく形のカタルシス型のサスペンスと、なかなか敵に迫れず殺せずというもどかしい型のサスペンスがあり、この作品は後者。意外性という意味では飛び抜けた展開はないけど市井の市民にとって復讐とは何かを真正面から描いていて素晴らしかったと思う。
難しいのは犯罪映画として携帯の通信履歴が捜査されないというリアリティを巡る映画の嘘の所だけど、そこをリアルにした所で、設定描写が増えるだけでテーマが薄まるに過ぎないと思う。
すべての映画レビューを見る(全36件)