タイタンの戦い : 映画評論・批評
2010年4月20日更新
2010年4月23日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
オリジナル作とはまったく違う旅になったリメイク版
リメイクとしての大胆さ。オリジナル作を見たことのある観客には、この映画の醍醐味はこれに尽きる。本作は、オリジナル作に登場したクリーチャーは(ほとんど)すべて登場させ、ストーリーとキャラクター設定はまったく別ものにした作品なのだ。
この決断は賢い。どう考えても、クリーチャーの魅力でオリジナル作のハリーハウゼンの演出を上回るのは至難の業だ。これまでこの企画に携わったサム・ライミやロバート・ロドリゲスらが結局断念したのも、この点にあったと思う。だがこの1点を断念すれば、やれることはたくさんある。そのやれることーー神より人間に重点を置いた新たなストーリー、世界各地でのロケーション撮影、人気俳優のキャスティングなどを、可能な限り実現したのがこのリメイクなのだ。
監督は、この決断を映画の中で宣言する。主人公が使命を果たす旅に出る前、武具倉庫でオリジナル作に登場したあるものを見つけて手に取り「これ何だ?」と旅のリーダーに尋ねるが、「置いていけ」と冷たく返答される。“この旅はオリジナル作とはまったく違う旅になる”ーー監督はこの場面でこう宣言するのだ。
もっともクリーチャー面にも工夫はある。巨大サソリはオリジナルの数倍のサイズなだけではなく、意表を突く使われ方もする。ハリーハウゼンの「アルゴ探検隊の大冒険」そっくりのハーピーが、思わぬところで大活躍する。細部まで「それ以外のできることすべて」はぎっしり詰まっている。
(平沢薫)