「屍の上に」ゾンビランド 病気の犬さんの映画レビュー(感想・評価)
屍の上に
※『』内は全て映画の題名ですがオブザデッドが抜けております。
~オブザデッドが世間を・・・もといビデオ屋の冴えない客の中でもさらに冴えない客が集まる一角を占拠しだして早数年。『ショーン』で一応の終点を見せたと思いましたが、この作品により製作本数はまた上がったようです。
大体旧作の『ドーン』のときは不可侵の題名だったように思えるのに、新作の『ドーン』から『ランド』『デイ』の一連の流れでこの聖域は打ち破られた。『ハウス』や『マシーン』などなど生きるも死ぬも無いようなものにまでとにかくオブザデッドをつけまくり、観たのかどうなのかわからなくさせる作戦は成功している。
この作品はこのようなオブザデッド革命に一石を投じるような新しいゾンビ像・ゾンビ感を提示した作品であるといえる。
つまり人類は滅亡に瀕しても仲間割れはしない(仲間になる前は別)し、普通に恋もするし、お菓子を食べたいし、有名人にあえたらテンションがあがる。という映画である。また成長する少年の物語であり、これらはこれまでのゾンビ映画が文字通り屍を積み上げて出来た道の上に初めて成立する映画である。
監督は極めて不遜で自由な発想を持ち世界観を作ってながら、案外丁寧に人物描写をしておりこの不自由な世界での暮らしを自由に描いている。
ゾンビ映画のコードに立脚しつつも、序盤でしっかりと世界観を巧みに説明して映画に観客を引き込み、あとはウディ・ハレルソンが快演するタラハシーに物語を引っ張らせてどんどんストーリーを転がしていく、この巧妙なストーリーテリングに実はたいしたことをしていないことに観客が気づくのは早くても映画終了後10分は過ぎてからになるだろう。
そうよく考えれば実はたいしたことをしていない。車を運転して女の子にだまされ、有名人に会って後にバイクにのる、要所要所で映画史上でも一二を争うほどに弱いゾンビを倒すだけである。
内容の無さを軽妙且つパワフルな演出で乗り切り、鑑賞後にさわやかな印象を与えるゾンビ映画はこれだけの作品がありながら未だかつて無く、ゾンビに侵食された世界で人間のパワフルさを描く矛盾にも目を瞑らざる得ないほどの好印象を与えてしまう辺りやはり佳作以上の評価が妥当だと思う。