インビクタス 負けざる者たち : インタビュー
本作では主演のみならずプロデューサーも務めた名優モーガン・フリーマン。長年、ネルソン・マンデラを演じる映画を探し求めていた彼に、本作製作の経緯、名コンビであるイーストウッド監督との仕事について話を聞いた。(取材・文:猿渡由紀)
モーガン・フリーマン インタビュー
「この物語は、僕にとってもクリントにとっても、パーフェクトな素材だった」
――この映画では、プロデューサーも兼任しています。企画をクリント・イーストウッド監督に持ち込んだのも、あなたですよね? イーストウッドを説得するのは簡単でしたか?
「僕は、説得というものをやらないんだよ。僕じゃなく、脚本自体が彼に売り込んだんだ。僕は、クリントに『脚本を送ったら、読んでくれますか?』と聞いた。彼がイエスというので送ると、彼はやりたいと言ってくれた。それは僕にとって、非常にうれしいことだった。もし彼がやりたくないと言えば、やりたいという別の人に行くだけだよ。それだけのことだ」
――ネルソン・マンデラに初めて会ったのは、いつでしたか?
「いつだったのか、はっきり覚えていない。場所は、ヨハネスブルグにある彼の家だった。その数年前に、彼の自伝『自由への長い道』が出版され、マスコミから『これが映画になったら、どの俳優にあなたを演じてほしいですか』と聞かれたマンデラは、僕の名前を挙げた。それで、その本の映画化権を持っていたプロデューサーが、僕とマンデラが会う機会をもうけてくれたんだよ。その席で僕は彼に、『もしも本当に僕があなたを演じることになれば、僕は、あなたに会わせてもらい、手を握らせてもらい、あなたの様子を見て、声を聞く必要があります。了解していただけますか?』と聞いた。それで僕は、その後何年も、彼がワシントンDCなりニューヨークなり、近くにいる機会があれば必ず出かけて行ったんだ」
――しかし、実際にスクリーンでマンデラを演じるまでには、ずいぶん時間がかかりました。その理由は何だったのでしょうか?
「僕が最初に出るはずだったのは彼の自伝本の映画化。だが、あれを脚本にするのはとても難しかった。多くの自伝は、15年、あるいは20年ものスパンで物語を語る。あの本もそうだった。だが『インビクタス』は3、4年の短い期間の話だ。それにこの話は、至近距離からマンデラを見る。彼がどんなふうに仕事をするのかを、間近にたっぷりと見ることができる。物語そのものも身近で、誰にでもわかる。僕にとってもクリントにとっても、パーフェクトな素材だった」
――イーストウッド監督とのお仕事はこれが3度めですが、いかがでしたか?
「彼との仕事は毎回良くなるよ。『許されざる者』の時は、会ったばかりだが、僕らは現場で本当に気が合った。2度目(『ミリオンダラー・ベイビー』)の時は、僕らの間に歴史があるからもっと良かった。今回はさらなる歴史があるから、さらに良かったんだ」
――イーストウッド監督は79歳ですが、とても元気です。あのエネルギーはどこから来るのでしょうか?
「健康に悪影響を与える要素は、睡眠不足、悪い食生活、それに人生を楽しまないこと。彼は正しい食生活を守り、ワークアウトもし、人生を楽しんでいる。僕も見習おうと心がけているよ」