南極料理人 : インタビュー
「クライマーズ・ハイ」では熱血記者、「ジェネラル・ルージュの凱旋」では将軍(ジェネラル)の異名を持つ天才医師を演じ、その演技力が高く評価される堺雅人。そんな彼が南極観測隊の料理人に扮した主演最新作「南極料理人」について語ってくれた。(取材・文:編集部)
堺雅人 インタビュー
「“ストイックに役作りする自分”を好きになりそうな自分を戒めている」
――この作品に興味を持った点はどこですか?
「南極という劇的な場所にいるのに、やってることがちっとも劇的じゃないというのが面白いですよね。まるで贅沢な食材を使ってシンプルな料理を作っている感じですね」
――「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水役の時より随分太ったような印象ですが、意識的に体重を増やしたのですか?
「そうですね。『ジェネラル』で6キロ落としたのを『南極料理人』で8キロ増やしました。それが正しいことなのかは分からないですけどね。役作りで何キロ増やしたかなど形だけのことですよ。こういう努力譚って分かりやすいから記事になりやすいですけど、それが目的になっちゃうと役者として違うなと感じるんです。“ストイックに役作りする自分”を好きになりそうな自分がいるので、それを戒めるよう心がけています」
――西村はどんなキャラクターだと思いますか?
「西村を演じるにあたって、監督からは『観測隊員が擬似家族っぽくなるように、西村は皆のお母さんのような感じ』と明確な指示がありました。ただ、僕自身は西村がどういうキャラクターかを考えるより、彼は一歩引いて周りを見ることができる人として捉えていました。今回の主役は隊員全員だと思っていて、西村がお客さんの視点で皆を見ているという感覚ですね」
――この作品に参加して、食に関して考え方が変わったことはありますか?
「何も変わってないです。たぶん、この映画のメッセージはとてもシンプルで、『皆で食べるご飯は美味しいね。大切なことだね』という、最初から答えが分かっていることをすごく丁寧に描いているからなんでしょうね。今回、網走で8日間ロケをしまして、東京を離れて皆で旅をする機会があったんです。そこでは皆でご飯を食べたりして、東京のスタジオで撮影するときより一緒の時間を過ごしたのですが、それが撮影の一番最初にあったのはありがたかったです。皆でご飯を食べることで通じ合う部分があったし、撮影に向けて思いを新たにしましたね」
――劇中には様々な料理が登場しますが、一番食べたいのは何ですか?
「ラーメンですね。試写の後に思わず食べに行っちゃいましたもん(笑)。お客さんにもアンケート取ったら面白そうですね。『映画を見て何が食べたくなりましたか』って(笑)」
――料理だけでなく隊員たちのコミカルなやりとりも見所ですが、笑いのシーンはどのように作っていったのですか?
「笑いに関しては、沖田監督の指示は細かかったですね。OKテイクが出た後も違うパターンを試したり、笑いのツボを微妙に変えながら撮影していました。そこは監督がこだわった部分だと思います。それと、そういう時の現場では、きたろうさんと生瀬(勝久)さんが気を遣ってくださいましたね。お2人は表立って何か言うわけではないのですが、監督や僕たちキャストを温かい目で見守りながら、締めるべきところは締めていたと思います。彼らの無言の愛情、作品に対して手を抜かない姿勢や、面白いものを作りたいという気持ちが現場全体に反映されていました」
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