劇場公開日 2010年6月11日

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アイアンマン2 : 映画評論・批評

2010年6月1日更新

2010年6月11日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー

怪しげな登場人物が多すぎるが、主人公の「のほほん」はやはり魅力的

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トニー・スタークは楽しいヒーローだ。もともとは兵器産業の経営者だが天才的な発明家で、戦場で九死に一生を得てからは世界平和の推進者に変身した。しかも、自身の考案したアイアンスーツに身を固め、陸でも空でも大暴れするときている。

が、スタークの顔を見ると、私は「ラウンジ・リザード」という言葉を思い出す。複数形にすればバンドの名前になるが、要はごろちゃらした遊び人を意味する隠語だ。これは、スタークに扮するロバート・ダウニー・Jr.の功績だろう。彼の演じるスタークには、威厳や風格がない。頭は切れるが、突飛で落ち着きがなく、危機に瀕しても緊迫感や焦燥感を漂わせない。もちろん、私は彼を褒めている。

スタークの性格は「アイアンマン2」になっても変わらない。平和主義の傾向は強まり、心臓に埋め込んだ特殊電池から毒素が漏れて生命を脅かされているものの、彼は相変わらずのほほんとしたままだ。

その態度は、悪役を前にしても同じだ。自分の父がスタークの父に発明を盗まれたと信じ込んでいる凶悪なロシア人科学者(ミッキー・ローク)が高電圧の鞭を振るおうと、アイアンスーツの量産を狙う商売人(サム・ロックウェル)が陰謀をめぐらせようと、スタークはとぼけた表情を変えない。

私は安心した。悪党が意外にもろく、話の筋立てが単純な割には怪しげな登場人物が多すぎるのは映画の弱点だが、ダウニー・Jr.の創造したスタークの新鮮さは今回も衰えていない。「ダークナイト」や「スパイダーマン2」のような偏執狂的パワーに欠けるのは物足りないかもしれないが、スタークの「のほほん」ぶりは、他に替えがたい魅力だ。私は、ダウニー・Jr.の味方につきたい。

芝山幹郎

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