シャーロック・ホームズ : インタビュー
アーサー・コナン・ドイルが生んだ名探偵シャーロック・ホームズにインスパイアされたオリジナルストーリーを「マトリックス」シリーズのプロデューサー、ジョエル・シルバーが映画化したアクション大作「シャーロック・ホームズ」が、今週末日本公開を迎える。eiga.comでは、アルコール&薬物に溺れ、一時期は俳優生命を断たれたかと思われたものの復活し、「アイアンマン」や「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」と続けてヒットを飛ばしたロバート・ダウニー・Jr.にインタビューを敢行。ガイ・リッチー監督と組んだ本作で、頭脳明晰かつマッチョな名探偵を軽妙洒脱に演じ、ゴールデングローブ賞ミュージカル&コメディ部門の主演男優賞を受賞したばかりの彼に役作りや作品の見どころを聞いてみた。公開前に来日したジュード・ロウのインタビューとともにお届けする。(取材・文:山縣みどり)
ロバート・ダウニー・Jr. インタビュー
「この映画はある種の愛の物語といってもいいかもしれないね」
──原作は世界各国で愛されており、名探偵ホームズは誰もが知るキャラクターです。そういう役を演じる上での難しさは感じましたか?
「原作に忠実であらねばらなないという難しさは感じたね。ホームズを演じるに当たっていろいろリサーチをしたんだけど、その結果、今まで映像化されたホームズが実はいい加減なものだったとわかった。原作とはまったく異なるホームズ像が一人歩きしちゃってたんだ。コナン・ドイルが描いたホームズは鹿撃ち帽もかぶらないし、『初歩的なことだよ、ワトソン君』なんてことも言わない。でも、僕たちの映画にとってはそれがプラスに働いたと言える。実際は原点回帰なのに、新しいホームズ像を作り上げたように見えるからね」
──原作でホームズが愛用する7%の溶解液は登場しませんね。
「7%の溶解液は僕に言わせると薄すぎるね。というのは置いておいて、コナン・ドイルが作り上げたホームズは決して薬物依存症なんかじゃないんだ。コカインはビクトリア時代には薬局で普通に買うことができる合法の嗜好品だったんだ。ホームズの嗜好に触れないのはやや無責任かなと個人的には感じたけど、この映画は子供も見られるPG13だから、薬物使用を賞賛するわけにはいかないよね」
──ガイ・リッチー監督と組んだ感想は?
「ガイは吟遊詩人みたいにセットでギターを弾いて、みんなをリラックスした雰囲気にしてくれたよ。役者たちのアイデアを尊重してくれて、ランチの時間も毎日、ジュード(・ロウ)と3人で、アイデアを出し合って脚本を書き換えていた。ワトソンとの関係も僕らで掘り下げたんだ。『明日に向って撃て!』のサンダンス&ブッチみたいに、切っても切れない絆を持つ男たちなんだよ。ガイの演出はちょっと不思議だったな。『今、なんだかピーナツバターの味がしたな、と思いながら演じてみて』なんて演技指導を生まれて初めてされたけど、これがなぜかうまくいっちゃうんだ(笑)」
──ベアナックルの拳闘シーンにはリッチー監督らしさが爆発していますが、アクションシーンの演技指導はいかがでしたか?
「ガイは柔術をずっと続けていて、僕は6年以上も詠春拳のトレーニングをしている。まぁ、なんとか仲良くやっていけたよ(笑)。拳闘シーンでは僕の鍛え上げた肉体を際立たせるために真上から照明を当てたんだけど、そこでガイの考えるホームズ像が明確にわかった。勇気のいる撮影だし、このシーンによって映画の方向性が決まった。感覚に訴えかけるエキサイティングな映画に仕上がっているよ」
──ジュード・ロウ演じるワトソンの婚約者メアリーに嫉妬の炎を燃やすのが印象的でした。ジュードとの共演はいかがでしたか?
「ジュードとは会った瞬間に意気投合した。彼には洞察力があって、最高のホームズ映画を作る意欲が伝わってきた。映画評論家たちが僕とジュードのケミストリーが素晴らしいと褒めてくれるけど、『ケミストリー』って普通は男女のラブストーリーに使われる言葉だよね。別にラブコメを作ったわけじゃないけど、この映画はある種の愛の物語といってもいいかもしれないね」