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思春期の悩みは計り知れない。アイデンティティとか、世の中の不条理さとか、憤りと焦燥感で押しつぶされそうになる。そこに友情や恋愛が絡んでくると、もういっぱいいっぱいで身動きが取れなくなってしまう。この気持ち、どこにぶつけたらいいのか?本作はそんな悩める高校生を主人公にした青春映画だが、ありきたりの青春映画とどこか違う。何か「イイ感じ」だ。何が違うのか?現代高校生の悩みを描きながらも、あからさまな恋愛描写がないこと(恋愛に発展する前のほのかな気持ちが描かれる)と、「死」がテーマになっているが、あくまでも「事故死」であって、自殺や殺人のような破壊的行為のないこと、そして何より主人公が素直で前向きなことだ。自分自身で答えを見つけようとする姿勢がとても清々しい。さらに本作を他の青春映画よりも際立たせている大きな理由としては、映像が「写真」であることにつきる。主人公は屋上でカメラを持った少女と出会う。フィルムの入っていないカメラで写真を撮り続ける彼女も、また自分自身で答えを見つけようともがいているのだ。様々な写真を撮る行為こそが、答えを見つける手段。それを如実にあらわしているかのように、本作の映像事態が、カメラのレンズを通してみる静止画のような雰囲気を持っているのだ。それは舞台が「長崎」という独特な都市であることも相まって、ケータイやインターネットの登場する現代でありながら、どこかノスタルジックな画面。そのノスタルジックな雰囲気にマッチする少年少女たちのけなげさ。それらはストレート(直接的)に我々の心の伝わるのではなく、レンズを通して間接的に我々の心に伝わってくるのだ。それによって、見終わった後の爽やかな感動を得られるのだ(主人公が少女に呼び出されて屋上に行く時の笑顔と高揚感、見ているこちらも嬉しくなる)。残念なのは本作は全国ロードショーではなく、ミニシアターでレイトショーやモーニングショーとしてひっそりと公開されたこと。もっと大勢の人に見てもらいたい、青春映画の秀作なのに。