■孫権軍の2名の女性
・一人は孫権の男勝りの気性の妹尚香(ヴィッキー・チャオ)。彼女は間者として、曹操軍に単身忍び込み、曹操軍の状況を伝書鳩で伝え、且つ身体に巻いた布に曹操軍の陣容を詳細に書き記すのである。彼女を親友と思い、肩車をして助ける曹操軍の蹴鞠の上手い事で千人大将になった孫が、孫権、劉備連合軍の矢に斃れる所に尚香が駆けつけるシーンは、沁みる。
・もう一人は、周瑜(トニー・レオン)の絶世の美女小喬(リン・チーリン)である。曹操が自身を我が物にしようとすることを知りつつ、諸葛亮孔明(金城武)が、曹操の80万の船団に対しての攻撃を”夜半に風向きが変わる。その時が勝負だ。”と言う言葉を聞き、単身曹操軍に乗り込み、曹操に茶を振る舞い時間稼ぎをするシーン。
そして、風向きが西南の風から東風に変わった際に、孫権軍は船同士を結び付けていた曹操軍の船団に火を放ち、全焼させるのである。
◆感想
・パート2は、曹操軍80万に対し、孫権軍と劉備軍5万の圧倒的な兵力差を、諸葛亮孔明の数々の策が見事に当たる様を描いた所が、見応えがある。
孔明は、矢が不足している中、周瑜に”10万本の矢を3日で調達する。”と約束し案山子を乗せた多数の船を霧の中出し、曹操軍から放たれた矢を見事にせしめると共に、その策略に引っ掛かった曹操軍の海上戦を得意とする2大将を曹操が斬り殺させるのである。
曹操の、部下を信じ切れない心持ちが、その後の災いを齎す事を示すシーンでもある。
・又、冒頭、曹操軍は長年の戦いで疫病が流行り多くの戦士が死体となることを逆手に取り、その死体を乗せた船を孫権軍と劉備軍が待機する所に送り込み、孫権軍と劉備軍にも疫病が流行る中、劉備は関羽、張飛、趙雲(フー・ジュン)を連れ、撤退するシーンが再後半にその狙いが明らかになる見せ方も良い。
周瑜は撤退する劉備軍を冷静に見ながら、只一人残った諸葛亮孔明と策を練って行く。
■炎に包まれる曹操の本軍に、勇猛果敢に飛び込んで行く孫権軍。更には背後から襲い掛かる劉備軍。多くの犠牲を払いながらも、盾を併せ猛火の中進む孫権軍の兵士たちの姿。
多数の矢を受けた海賊の甘興(中村獅童)が、部下たちに開発させた猛烈な爆発力を持つ爆薬を抱え、曹操軍の本陣の壁に投げつけ自身も吹き飛ばされるシーンや、城壁をいち早く飛び越える趙雲の姿。
怒り狂う曹操の部下が、”負けたのは、あの女の所為だ!”と叫び、小喬を殺しに行くシーンも緊迫感が溢れている。
追い詰められた曹操が不敵に笑う中、階上で小喬の首に刃が当てられるシーンからの、周瑜と趙雲が建物に駆け込み、間一髪周瑜が落下して来た小喬を抱きとめるシーンもハラハラする。
<パート2は、様々な策略が入り乱れる中、曹操軍と孫権軍と劉備軍が長江の海上で激突する凄まじいシーンの数々と、その中で繰り広げられる人間模様に魅入られる作品である。
両軍の兵士の死屍累々たる炎が燃え盛る中の周瑜の”勝者はいない”という言葉と、ラスト草原で劉備玄徳と周瑜が向かい合い、笑みを浮かべながら語り合う言葉も印象的な作品でもある。>