異国の地で迷子になった失語症の女の子をお人よしの青年が国境を越えて親元に届けるお伽噺のようなインド映画(バジュランギおじさんと、小さな迷子)を観て、こんなベタな美談は邦画ではあり得ないと悲観していました、子を守るということは、あの是枝監督でも子供を汚さなければ描けませんでした。ところが本作は、子供たちは無邪気なままで立派に物語が成立しています。これは製作陣がアニメビジネスの重鎮たち、脚本の池田眞美子もアニメ脚本家で子供の心に寄り添えるプロ、ところが監督はなんとエロ映画の鬼才と言われた城定秀夫です。まさに天使と悪魔が結びつくことで邦画に観たことのない化学反応が起きました。
最も子供に不釣り合いな新宿歌舞伎町、それでも訳あって夜の稼業に出ざるを得ない母達にとって託児所は福音であることは察しがつきますが常識的に考えればホスト達に務まるとは思えないでしょう。子の世話だけでも大変なのにはだかる極道や無気力な役人たち、いつ投げ出すのか、投げ出しても不思議はない、誰も責められない・・・、それでも屈しない若者たち、何が彼らをそうさせるのか・・・。感じ方は言葉では言えません、それとエンドロールの後にもほっとするシーンがちょこっとありますのでご覧になる方はお見逃しなく。