劇場公開日 2010年1月23日

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サヨナライツカ : インタビュー

2010年1月21日更新

中山美穂が、「東京日和」以来12年ぶりの映画主演作「サヨナライツカ」で銀幕復帰を果たす。作家・ミュージシャン・映画監督である辻仁成と結婚して以来、生活の拠点を仏パリへ移し、出産も経験――。あれから8年、何を思って過ごしてきたのか、そして再び映画の世界へと舞い戻らせたものが何だったのか、中山に聞いた。(取材・文:編集部、写真:堀弥生、スタイリスト:十川ヒロコ、ヘアメイク:小松和子)

中山美穂 インタビュー
「愛したことも、愛されたことも思い出したい」

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ミポリンが帰ってきた
ミポリンが帰ってきた

■夫・辻仁成にとっても意外だった中山の決意

中山にとって、「私の頭の中の消しゴム」を大ヒットに導いた韓国のイ・ジェハン監督が映画化する「サヨナライツカ」は、自らが演じるとは思っていなかっただけにどこか他人事だった。原作が夫である辻の著書であったために脚本は手元にあったが、「私に依頼がくるとは想定していなかったので、どなたがこの激しい役を演じられるんだろうっていう読み方をしていました。脚本に原作とは違うエッセンスが組み込まれていたので興味深く読みましたが、単純に完成した作品を見るのをすごく楽しみにしていたんです」と笑う。

それでも運命は中山を大きくたぐり寄せ、出演を決意させる。辻にとっても予想外だったようで、「演じることを決めたっていう私の決断に驚いたみたいです。ただ、そこからは『やるのであれば思い切り演じてきなさい』という励ましの言葉があった以外、細かいことについては何も言われませんでしたね」と述懐。こうして8年越しで沓子役を手中にした中山だが、遠回りしたとはこれっぽっちも思っていない。

「生活が変わるということ、ましてや国外であればそれだけで大きな変化ですよね。今までしたくてもできなかった普通の生活というものを数年間やってみたことで、自分では言葉に言い表せないくらい確実に変化しているわけで。そういったことが自分の器となって演じることができればいいなと思いました」と気負うことなく話した。

夫・辻仁成もビックリの決断
夫・辻仁成もビックリの決断

■沓子は愛したことを思い出したかったのかも

同作は、タイ・バンコクを舞台に、決して結ばれぬことを運命づけられた男女の25年間にわたる愛を、壮大なスケールで描いた恋愛叙事詩。中山扮する沓子は、西島演じる豊との出会いをきっかけに“愛されること”以上に“愛すること”の重要さを認識するようになる。

「小説にも映画にも描かれていませんが、もしかしたら沓子は愛したことを思い出したいと考えていた人だったのかもしれません。今までの恋愛経験の中で、死ぬことって考えたこともありませんでしたが、この作品を通じて人生の最後の瞬間っていうのを考えるようになりました。私は愛して愛されて、両方の気持ちをもっていたいなと思うようになりましたね」

映画の序盤から中盤にかけては、沓子と豊の激しくも美しいラブシーンが展開される。官能的でありながら、物語を構成するうえで必要不可欠なカットだ。「このシーンは、監督と西島さん、両方と話し合いました。監督にはどういう画が撮りたいのか、どういう表現がしたいのかを聞いていただき、それを整理して本番に望みました」。クランクイン前には、西島と顔合わせも兼ねて食事をともにしたそうで「監督が韓国の方で、多国籍スタッフによる韓国映画ということもあって、愛に対してのすれ違いが起こらないように固めたかったんです」と説明した。

終始幸せそうな表情が印象的
終始幸せそうな表情が印象的

■中山にとっての岐路は「やはり結婚」

そして、イ・ジェハン監督は同作をひと言で括ったときに「岐路」と言い換える。沓子にとっての「岐路」は、石田ゆり子が演じる豊の婚約者・光子と対峙するシーンを挙げたが、「私にとっては豊と別れる空港のシーンでしょうか」とこだわりをのぞかせる。その場面は、沓子と豊、光子の3人にとって自らの信念、決断を自問自答させる長い長い旅路のスタート地点といえる。

では、中山の人生にとっての「岐路」は、どんなシチュエーションにあったのだろうか。この問いには即答が返ってきた。「すごくたくさんありましたが、やはり一番大きかったのは結婚ですね」。

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