2012 : インタビュー
「インデペンデンス・デイ」「デイ・アフター・トゥモロー」などディザスター・ムービーの第一人者として知られるローランド・エメリッヒ監督が、古代マヤ文明の世界終末予言を大スペクタクルで描く「2012」。離婚を機にバラバラとなってしまった家族を守るため、命がけで奔走する売れない作家・ジャクソンを演じたジョン・キューザックに話を聞いた。(取材・文:編集部)
ジョン・キューザック インタビュー
「世界が終わるとしたら、バーに行って、すごく高いワインでも飲もうかな」
――大作ディザスター・ムービーへの出演を決めた理由とは?
「まず、ローランド(・エメリッヒ)のような世界的に成功している偉大な監督が、僕に声をかけてくれたことが率直に嬉しかったよ。それで興味がわいて脚本を読んでみたら、とても気に入ったんだ。そういう色々な要素が揃ったから出演を決めたんだけど、何より大作に出ることは俳優にとって名誉なことだしね」
――危機的状況にありながら、時折ユーモアを感じるようなシナリオでした。
「うん、それはローランドの美的感性の中にパンク・ロック的な要素があるからだと思う。文明や宗教を象徴するものが次々と壊されていくのはただの偶然じゃなくて、そこにローランドの持つ感性が反映されているからなんだ。『壊すことによって新しいものが生まれる』というのと同じように、ホラーの中に面白さがやユーモアがある。ローランドは、そういう反対要素の働きをよく分かっていると思うよ」
――渡された脚本にはストーリーの結末が書かれていたのでしょうか?
「うん。2人は途中で運命が変わっちゃったけど、メインキャラクターは変わっていないよ。脚本を読んでいるときも誰が生き残るのか想像できなくて、それもこの映画の秀逸している部分だと思う」
――命懸けで家族を守るという、ヒロイックなキャラクターを演じるのはいかがでしたか?
「観客だって、ジャクソンと同じような立場に立たされたら同じことをすると思う。それはとても自然なことだよ。人は時間がなくなってきてやっと大切なものが見える。ジャクソンがどうやって家族の絆を再生させるか、そこにドラマがあると思うよ」
――演じたキャラクターに共感した部分はありましたか?
「僕も物を書くから、作家のジャクソンとは基本的な共通点があると思うよ。彼は芸術家肌だから、自分がやっていることに没頭してほかの事は忘れてしまうんだ。自分の奥さんに対してもそうだから、奥さんは疎外感を感じていたかもしれない。だけどそんな性格だからこそ、どうにかしてロサンゼルスを脱出しないとならないとなると、目の前にある困難にまっしぐらに突き進んでいく。だからそういう性格でも、一概に悪いとは言えないよね。そんなジャクソンのトンネルみたいな考え方は、ちょっと僕に似ているかもね」
――この作品に限らず、役を選ぶときに自分がキャラクターに共感できるってことは、重要なファクターになるのでしょうか?
「まず選ぶ前にどういうオファーが来るかだけど(笑)。ジャクソンはコネもお金もない普通の男だから、みんなが共感できるキャラクターではあるよね」
――ディザスター・ムービー特有の大掛かりなCG撮影はいかがでしたか?
「シーンを撮影する前にローランドが『だいたいCGだったらこうなるよ』という映像を見せてくれたから、頭の中でイメージを描きやすかったんだ。決して何も無いところで芝居をしていたわけじゃなくて、セット自体の完成度がとても高くて演じやすい環境が整っていたよ。それにこの映画はずっとディザスター・シーンを描いているわけじゃなくて、人々の生活や人間模様もたくさん描かれているんだ」
――黒人の大統領が登場するなど、社会的な変化が反映された作品だと思います。最近プライベートでもそういった変化を感じますか?
「うん、変わっていると思うよ。実際どんな風に変わっていくかは分からないけど。地球の温暖化は人類が起こしている災害で、自然に起きていることじゃない。そういう意味で、この映画は15年前に見るより今見た方が断然怖いと思うね」
――もし世界が終わるなら、最後に何をしたいですか?
「分からないなぁ。バーに行って、すごく高いワインでも飲もうかな」