ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト : 特集
2008年3月30日、ニューヨークのパレス・ホテルで、マーティン・スコセッシ監督の音楽ドキュメンタリー映画「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」の記者会見が行われた。本作は06年秋にニューヨークの小さなホール、ビーコン・シアターで開催されたザ・ローリング・ストーンズのライブコンサートを収録したもの。会見にはエグゼクティブ・プロデューサーでもあるストーンズのメンバー、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ロン・ウッド、チャーリー・ワッツの4名とスコセッシ監督が登場。その熱狂の会見を抄録する。(文・構成:編集部)
ストーンズ&スコセッシ ニューヨークプレミア会見
ミック(ミック・ジャガー)「こんにちは、みなさん! こんにちは、ニューヨーク!」
──ニューヨークの観客は素晴らしいですか?
マーティ(マーティン・スコセッシ監督)「当初は、ストーンズらしい巨大なアリーナでの撮影を考えていたんだが、下調べをするうち、小さいステージでバンドの親密感をとらえた方が面白いと思えてきたんだ。メンバーが1曲1曲で、どのようにグルーブ感が生まれるのか、それが見たくなったというわけさ。この映画で最も表現したかったのはバンドの親密感だよ。ロックサウンドが一体感の中で作り上げられる瞬間がとらえられていると思う」
ミック「ニューヨークの観客は素晴らしいと思う。というのは、バンドの観客として楽しんでくれたばかりでなく、雰囲気を盛り上げてくれたからね。映画にとっても素晴らしい観客だった」
──あのライブの日は何か“特別”な日でしたか?
キース(キース・リチャーズ)「ビーコン・シアターは会場そのものが特別なんだよ。僕らを包み込む感じがする。2日以上ライブを行ったから、会場の空間がやればやるほど温かくなっていった。あの会場は最高の気分がする場所だよ。それに第一、俺たちはスタジアムから始めたバンドではないしね(笑)」
──(全米では)IMAXの巨大スクリーンで3D公開もされます。
ミック「すごく大きく映るんだろうなあ(笑)」
ロニー(ロン・ウッド)「小さいミスが暴かれちゃうかも(笑)」
ミック「マーティがすべての可能性を検討したのちに、小さくて“親密な映画”を作りたいと言ったのに、ねぇマーティン、IMAXスクリーンに拡大されるとはね。僕らの親密な瞬間がIMAXで見られるのは笑っちゃうよ。でも、IMAXでも素晴らしかったから、2つのフォーマットで見られて、実にうれしい」
──ワールドツアーに出ることは、すごいエネルギーを必要なことが映像から伝わってきます。あれだけのエネルギーをステージにぶつけられる秘訣は何ですか?
ミック「まいった(笑)。それについては忘れてくれ」
キース「教えちゃったら、みんなやり始めちゃうからな(爆笑)」
ミック「ジムでのワークアウトでもなく、ビタミン剤のサプリメントでもなく、とにかく当日のことを深く考えてみることだよ。やってみる、やるしかないっていう心意気かな。もちろんすごいプレッシャーを感じる。特に映画の撮影の日は、期待に添うようなライブになるか心配していた。今回は、撮影が2日間あったのが最高にラッキーだった。初日はリハーサルみたいになって、2日目は小さい会場でのパフォーマンスにも慣れていった。今回のツアー(ア・ビガー・バン・ワールドツアー)では小さい会場でライブをしていなかったから、まったく別ものだったけど、2日目にはパフォーマンスをどうすればいいのか把握できていた。ゲストもたくさんやって来る特別な日だったけど、最高に素晴らしいライブになった。ツアーってのは、本当に行ってみて、やるしかないもんなんだよ」
キース「本当に、あれはシビレる夜だったぜ」
──スコセッシ監督を選んだ理由は何だったんですか?
ミック「それは彼が世界最高だからだよ(笑)。本当に偉大な監督だ。撮影、照明、編集……とにかく素晴らしいスタッフを抱えている。撮影が素晴らしいだけでなく、編集の力もものすごくあるよね」
キース「それに、俺たちがマーティを選んだわけじゃなくて、マーティが俺たちを選んだんだ」
マーティ「お互いが、だよ」
──スコセッシ監督、あなたの作品によく登場するギャングたちと比較して、ストーンズをどう思われますか?
マーティ「(会場が大爆笑したあとに)それは興味深い質問だな。もちろん直接的な関係性は見出せないけど、音楽というものは、ある時代を喚起させるものだよね。彼らの音楽と関連して思い出すのは、59年か60年に『三文オペラ』を見に行ったときのことだ。音楽が歌われるオペラの舞台なんだが、歌詞が響いてきた。僕が育った地域はまさに『三文オペラ』で描かれていたような場所だったし、その当時はストーンズの音楽が歌詞の内容とともに、同じような影響力を私にもたらしたものだった。育った環境における人生の一部と大きくリンクしていた。目撃したこと、経験したこと、とね。彼らの音楽は、タフで、エッジがあり、美しく、正直で、残酷ですらあり、すごくパワフルだった。だから僕の心の中でずっと残っていたし、今日に至るまで、私のインスピレーションの源だった。ミックがベルリン国際映画祭のプレミアで言ったんだけど、(ミックに向かって)あれを言ってもいいかい?」
ミック「もちろん」
マーティ「ミックは、本作が『ギミー・シェルター』が使われていない唯一の映画だ、と言ったんだ(爆笑)。(前作『ディパーテッド』のように)『ギミー・シェルター』を使うとき、最も適切だと思うから使うんだけど、使いたいと思った瞬間には、自分が過去に使っていたことを全然覚えていないんだよ(笑)。みんなには『でも、マーティ、それは昔使いましたよ』と注意されるんだ。でも私は『いいじゃないか』と言い張る。実は、本当のところ、忘れてしまっているんだね(笑)。とにかく、彼らの音楽は私にとって最も重要なものなんだ」
──スコセッシ監督、編集しているとき、どの曲が一番感動的だと思いましたか?
マーティ「すごく難しい質問だな。なぜなら、私にとってはコンサート全体が彼らの作った壮大な1曲に思えるからね。答えるのは不可能だね」
キース「不可能だよ」
──それではキースとミックに、スコセッシ映画で一番好きな作品は?
ミック「キースはどの映画がいちばん好き?」
キース「えっ、俺? 俺にマーティのお気に入りを当てるってこと?」
マーティ「いやそうじゃなくて」
ミック「僕がいちばん好きなのは『クンドゥン』かな(会場、大爆笑)。全部好きだから一番を選ぶのは難しいよ。本当に全部好きなんだ。次の作品を見るのが楽しみだ」