僕の彼女はサイボーグ : インタビュー
「猟奇的な彼女」「僕の彼女を紹介します」で、日韓両国で大ヒットを収めたクァク・ジェヨン監督の最新作は、日本人キャスト&スタッフで作られた“日本映画”。美少女がダメ男の世話を焼くという“非モテ男子永遠の夢”を常に実現してくれるクァク監督が、韓流ブームの功罪と、“強い女”を語る(取材・文:村上健一)
クァク・ジェヨン監督インタビュー
「憧れるのはスーパーヒーローよりも“強い女性”」
――クァク監督が新作を日本で撮ることになったきっかけは何だったのでしょう?
「脚本を書いている時点では、まさか日本で撮ることになるとは考えてもいなかったね。(審査員として参加した03年の)ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で山本(又一朗)プロデューサーと意気投合、その後脚本を見せたら、彼が非常に気に入ってくれたのがきっかけ。日本人キャストと韓国人キャストによる合作形式だとか色々案があったが、本当に紆余曲折あって、結局僕以外はすべて日本人という形になった」
――苦労も多かったのでは?
「まさに“冒険”といってもいい、まったく初めての経験だったけれど、得たものの方が多かったよ。確かに直接同じ言葉で対話することはできなかったが、映画を撮るのに最も重要なのは“感情が通じ合う”ことだから。その点では、スタッフもキャストもまったく問題はなかった。大変だったのは、プロデューサーだったんじゃないかな。この数年で韓流ブームが去り、韓国映画の位置づけが下がってしまった影響で、製作費の確保にかなり奔走していたようだから」
――韓流ブームといえば、いわゆる韓流スター映画と韓国映画は似て非なるものだと思うのですが、ブームが去ったことによって、たとえば「グエムル」のような韓国で大ヒットした作品が、日本では以前では考えられないくらいの低い成績となっています。こういう状況を、韓国の大ヒットメーカーであるクァク監督はどうお考えなのでしょうか?
「僕も、韓流と韓国映画は違うものだと考えているよ。韓流ブームはTVドラマがスタートで、人気俳優を中心にしたものだ。だが、そうしたブームに便乗しただけの映画があったのは事実。とにかく早くお金を儲けようとした人たちのせいで、韓国映画全体の位置づけ・価値が下がってしまったのは確かだと思う。韓国で当たったものが、必ず日本でも成功するとは考えていないけれど」
――そういう中でも日韓でヒットする監督の作品は、両国で通じる普遍的なものをお持ちなのだと思います。
「僕は、感情や情緒……人を愛する気持ちや、幼いころの思い出みたいなものを表現するのが好きなんだよ。だから、アジア全域で観てもらえる作品になるんじゃないかな」
――「猟奇的な彼女」「僕の彼女を紹介します」そして今回の「僕の彼女はサイボーグ」もそうですが、とても“強い彼女”が出てきますね。そういった女性に対する憧れがあるのですか?
「幼かったころの気持ちに帰って色々想像をめぐらすと、そういう女性が現れてくるんだよ。そんな型破りな女性は幻想にすぎないんだけど、きっと子供のころに出会いたかったんだろうね」
――振り回されたいですか?
「(爆笑)。確かに、そんな彼女の力を借りたい、助けられたいって思うよね。カッコよくて完璧なスーパーヒーローよりも、身近にいる“強い女性”。憧れるなら、断然そっちがいい(笑)」
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