告発のときのレビュー・感想・評価
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【”そして父はイラク戦争に従軍し、無事帰国した息子の死の真相を知り、米国国旗を逆向きに掲げた。”今作は戦争によりPTSDになった兵士たちの哀しくも恐ろしき話であり、強烈な反戦映画でもある。】
ー イラク戦争に従軍し英雄になった男が、PTSDになった米軍元兵士に殺された話を映画化した強烈な反戦映画「アメリカン・スナイパー」は今でも良く覚えている。
今作のテロップには、クリント・イーストウッドの名前がある。もしかしたら、彼の名匠は今作に着想を得たのかもしれない、と思った。-
■2004年11月。ハンク・ディアフィールド(トミー・リー・ジョーンズ)は、息子で軍人のマイクがイラクから帰国後に軍から離脱したと軍から連絡を受けた。
不審に思ったハンクは、マイクがイラクから帰還したはずのフォート・ラッドへ向かう。地元警察の女刑事エミリー・サンダース(シャーリーズ・セロン)と捜索を開始すると、マイクのバラバラになった焼死体が見つかる。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・哀しくも恐ろしい話しである。ハンクがデータが破損したマイクの携帯のデータを修理業者に出し、復旧したデータの写真に残されていた、彼がイラクで映した写真の数々。
・そこには、町中に転がる処刑されたイラク人達の姿や、マイクが運転していた軍用車が何かを轢いた瞬間の驚きと戸惑いの彼の顔が映っている。
・更に物語が進むにつれ、マイクが仲間から“ドク”と呼ばれていた恐ろしき事実も明らかになる。マイクだけではなく、マイクの仲間も心を病んでいた事が分かる。
■今でも、世界各地で戦禍が絶えないが、死者の数以上にPTSDに苦しむ元兵士が多いという記事を読んだ事がある。
多分、それは真実なのだろうと思う。
・今作でも、無事に米国に米国に帰国したマイクが、軍から離脱したと軍から連絡を受けるが、父の元郡警察のハンクはそれに違和感を感じ、女刑事エミリー・サンダースの協力を得ながら、真相に近づく様がサスペンスフルに描かれている。
米軍が、帰還兵たちの不祥事を隠そうとしていた事は、明らかだからである。
・そこでの、苦悩を抱きながら捜査をする父親ハンクを演じたトミー・リー・ジョーンズの、真相を暴こうとしながらも、アメリカを信じたいという相克する思いを、渋い演技で魅せる姿は必見であろう。
<今作は、戦争によりPTSDになった兵士たちの哀しくも恐ろしい話であり、強烈なる反戦映画でもある。
戦争は、何物も齎さない愚かしき行為である事を、再度認識した作品である。>
シャーリーズ・セロンきりっとしとるな
真に告発されるべき罪としての「戦争」
兵士の安全を守るためには、移動中にはハンビーを停めないことが絶対条件だったのかも知れません。
しかし、結局は、不意に道路に飛び出してきた子供がいても、ハンビーを停めてはならないという「不条理」が、マイクの心をねじ曲げてしまったことはには、疑いがないと思います。評論子は。
負傷した捕虜(敵兵)の傷に指を入れて抉(えぐ)るという虐待的な行為を平気でするようになり、ドク(ドクター=医者)というニックネームをもらうようになったり。
そういう心の傷は、マイクを殺害した、かつての戦友も同じことだったのでしょう。
よほどの怨恨関係でもない限り、42箇所…骨に残った傷痕から推測しても42箇所以上も刺して殺害というのも、平常な精神状態であったとは、言えないだろうと思います。
帰還兵は、そういう心の傷を、麻薬や、ストリップ・バーに出入りしたりすることでしか慰めることができない…。
「名作」といわれた『デイア・ハンター』でも、同じような背景が描かれていたと思います(同じく銃器を使うといっても、片方は健全なスポーツ・娯楽としての使用であり、もう片方は、まるで狂気としての使用である、その対照と矛盾)。
そういう「戦争」というものは、紛争解決の手段としても、もはや告発されるべき時期に達しているというのが製作意図だったのではないでしょうか。本作の。
主演のトミー・リー・ジョーンズの濃厚な演技とも相俟って、充分な佳作であったと思います。評論子は。
改めて、シャーリーズ・セロンはいい女優だと思った
タイトルなし
非常に乾いた演技というか抑えた演技のトミー・リー・ジョーンズ、シャリーズ・セロンに引き込まれる。単なる軍内部のサスペンスではなく、その背景にあるイラク戦争の戦士達の異常さ、PTSDを描いている。
兵士は狂気と共に帰還する・・・
「共に戦い、命を預け合った者同士、殺したりするはずがない」と当然のように信じていたことが覆されるなんて・・・戦地は違っても同じ帰還兵なのに、おかしくなる人ならない人 、こうも違うんですねえ。 エンディングの逆さまの国旗が印象的でした、「もうどうにもならない・・・助けてくれ・・・」
タブーに挑戦
戦争の狂気は、帰還後にも及ぶ。それが悲しい事件に発展する。
主人公の憤りと悲しさはいかばかりか。
軍内の犯罪と隠蔽体質を明らかにしていく筋書はすごいが、
だんだん気分が滅入って辛い。
マイクという名の由来を知ってるか?・・・実は父さんがカラオケ好きだったんだよ・・・
インドネシアの国旗を逆さまにすればポーランドになりますが、日本の国旗を逆さまにしても何も起こりません・・・星条旗を逆さまに掲げて“救難信号”を意味するんだよ、というウンチクから始まり、旧約聖書やコーランについてまで博識ぶりを発揮する宇宙人トミー・リー・ジョーンズ。彼が演ずるハンク・ディアフィールドは軍人一家の長。陸軍出身、軍警察を経験と、刑事シャーリーズ・セロンも舌を巻くほど洞察力も鋭い男なのです。
空軍で墜落死した彼の長男デヴィッドの名もやはり“ダビデとゴリアテ”からつけられたのだろう。原題となっている“エラの谷”にて勝ち目のない怪物ゴリアテに戦う許可を与えた王の話をセロンの息子デヴィッドにベッドで聞かせるところは印象に残ります。軍人である父親に憧れて兵士となった次男マイクに対する父親と母親(スーザン・サランドン)の考え方が違うところも興味深いところ。“親子の愛”というよくあるテーマに思わせておいて、戦地に若者を送る罪についてのメッセージを残すのはさすがポール・ハギスと唸るばかり。しかも子どもに言わせるなんて憎い憎い・・・
基本的には、息子マイクが行方不明となり、やがて焼死体となって発見され、女性刑事の協力も得て独自の捜査をする、というミステリーの形をとるプロット。厳粛な退役軍人という主人公であるため、兵士を英雄としてとらえているのですが、『戦火の勇気』だとか『英雄の条件』などといったアメリカ万歳映画ではなく、むしろ『地獄の黙示録』のように狂気にかられ人間性を失っていくものだという、戦争の現実に打ちのめされる内容になっています。
また、イラク戦争が間違っているなどというメッセージより、もっと恒久的な何か、全ての戦争に対して訴えかけているように感じました。小さな子どもに言わせている点、逆さまの国旗、エンディングに“子供たちに捧ぐ”と書かれていたためかもしれません。
意外と面白いのが、トミー・リーが素早くベッドメイキングをするシーンが何度もあったところ。息子の凄惨な遺体と対面する表情よりも印象に残りました。そして、シャーリーズ・セロンの化粧がスッピンから徐々に濃くなって、美しさも変化するところが・・・それに管轄違いでグダグダしてる中で「正しいことをする」と意志の強さを見せるところで惚れ直してしまいました(相手にされないけど・・・)
あの涙はどこに
モヤモヤ感を残ります
見た後は複雑ですっきりしないモヤモヤ感が残ります。でもそれこそがこの作品の意図のような気もします。
終盤まではサスペンス要素の強い内容で、それはそれで引き込まれるものがあります。ただよくある推理やどんでん返しがこの作品には用意されていません。(それがある意味で予想外とも言えるが)
様相が変るのは供述が出たところから。真犯人はあっさりと明かされます。
そこからこの映画は何を見せているのか?一度は父に助けを求めながらも息子は戦場で父の知る息子ではなくなっていった。誇らしい息子として単純に終わらず、でも責められない。では何が悪いのか、を終盤で問いかけているような、モヤモヤ。
この国の危機
ストーリー展開、組み立てが抜群だと思う。
一度戦争を経験した人の心の崩壊を誰が救えるのでしょう?トミー・リー・ジョーンズが良かった。何の疑いもなく愛国心に満ち溢れてた男が疑い戸惑い、自分こそが息子を殺した張本人じゃないだろうか?という演技に脱帽。目は口ほどに物を言う演技でした。集団的自衛権を自分なりに考えたい。
狂うことは正常な証拠
戦争というものの恐ろしさが間接的に描写されています。
訳もわからず殺されるものもいれば、それを受け入れられず自ら朽ちていくものもいる。
だれもなにもいい思いはしないんですやっぱり。
誰もが犠牲者だった。
胸が痛くなる
ミリオンダラーベイビーの脚本を書いたポール・ハギスの監督作。
ミリオンもすごく重い映画でしたが、今作も非常に精神的にくる話です。
息子の失踪事件を追う父親が、軍への信頼、息子への信頼、国への信頼をどんどん奪われていく様は本当に胸が痛くなってきます。
息子も最初は「悪い奴をやっつけ、いい奴を助けるんだ」と言っていたのに、戦争という異常な状態に置かれ、どんどん人間性を失っていき、残忍な行動を自ら楽しんでするようになってしまった。
あまりにも悲しく、これが実話を元にしているというのだから余計救いが無い映画です。
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