劇場公開日 2008年6月28日

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告発のとき : 映画評論・批評

2008年6月17日更新

2008年6月28日より有楽座ほかにてロードショー

PTSDを題材にあくまでも“人間”を描いたポール・ハギスの新作

イーストウッドの「硫黄島」2部作や「007/カジノ・ロワイヤル」などを手掛ける売れっ子脚本家であり、「クラッシュ」でアカデミー賞最優秀作品賞を受賞したポール・ハギス監督の最新作である。

感動してもらうよりも、大勢でディスカッションしてもらえるような作品を作りたいという彼は、今回イラク戦争からの帰還兵たちに急増しているPTSD(心的外傷後ストレス障害)を題材に選んだ。

行方不明になった息子を探すこの作品は、ミステリー仕立てでありながら息子の行方が早々に判明、そしてストーリーは、なぜこんなことが起こったのか、という方に焦点が絞られていく。通常なら謎を引っ張り、物語の要素を徐々に増やして構成していくものだが、これは逆に要素を減らしていくことで最後にテーマだけが残るように作られている。観客をどう夢中にさせるかよりも、どう事実の悲惨さ、ひっ迫した状況を伝えられるかを考えた結果だろう。また石油や政治に言及したり、この戦争の是非を正面から問うのではなく、PTSDを題材にあくまでも“人間”を描いたところがハギスらしい。人種問題を扱った前作「クラッシュ」で、人種差別反対という大きな描き方はせず、被害者、加害者の両者を“個人”として描いたように、今回もまた戦争問題という大きな枠以前に、個である一人一人の当たり前の権利、当たり前の幸せを、個である観客一人一人に考えるよう訴えている。

(木村満里子)

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