20世紀少年 : インタビュー
飯沼伸之プロデューサー インタビュー
■気になるキャスティングは?
──キャストについてですが、なぜ、この7人だったのでしょうか? そしてなぜケンヂは唐沢寿明さんだったのでしょうか?
「まず年代設定というのがありました。この第1章に関していえば、ケンヂは20代の俳優が演じても良かったんです。でも3章になるときは、58歳になるんです。じゃあ、その20代の俳優さんが58歳のケンヂを演じられるのかどうかというと、やっぱりそれよりは、実年齢に近い俳優さんに演じてもらった方がいいんじゃないかという話になりました。その中で、こういう3部作を通しての主役が張れて、なおかつケンヂっぽいっていったら変ですけど、そういう人がいないかなあと思ったときに唐沢寿明さんがピッタリでは?となったわけです」
──歌を歌える人というのもあったわけですか?
「もちろんそうですね。第1章の最後で歌ってますけど、本当はもっと上手なんですよ。わざとケンヂっぽく下手に歌ってるんです。浦沢さんも唐沢さんの演技には非常に満足されていました」
──プロデューサーから見た主演の唐沢さんの魅力とは何でしょうか?
「やっぱり(この大作を)背負うところですね。もし仮に、3本作るという設定で、『主役をやってください』といわれて、『成功してもしなくても、2章、3章作ります』といわれたときに、相当なプレッシャーがかかるわけで、それを背負うのは大変ですよ。唐沢さん本人も言ってますけど、トライしないといけないし、そういう局面は役者冥利に尽きると思って演じられているそうです。いわゆる座長としての意識が非常に高い方ですね」
──では、オッチョ役の豊川悦司さんは?
「豊川さん以外に誰かいますか(笑)? 本人もオッチョをやりたかったっておっしゃってくれてました」
──ユキジの常盤貴子さんは?
「常盤さんは『20世紀少年』を映画化するなら是非やりたいということで、受けてくれました。実際7人のメインの俳優さんの中では一人だけ70年代生まれで、お若いのですが、凄くユキジっぽいと思ったし、全体として、同級生に見えてればいいなあと。7人みな同じ歳というのも難しいですからね」
──香川照之さん(ヨシツネ)はいかがでしたか?
「香川さんは、最初から『20世紀少年』をやるんだったら、やらせて欲しいと言ってくれてました。それで、ヨシツネ役をお願いしたら受けてくれたんですね」
──マルオ役の石塚英彦さんは、どのように決めたのでしょう?
「マルオは僕しか居ないでしょみたいな感じで、おっしゃってました。ドラマとか映画での演技経験はあまりありませんが、ホンジャマカでコントをいつもされているので、演技面での心配は全くしてませんでした。石塚さん自身もお芝居をすごくやりたいって言ってましたので、そういう意味では喜んで演じてもらえたと思います」
──モンちゃん役の宇梶剛士さんは、まさにピッタリのはまり役でしたね。
「モンちゃんって、実は役柄として一番やりにくい部分がある役かなと思っていて、宇梶さんもご覧の通り、すごくモンちゃんに似ていましたので、いかがでしょうと、オファーしたところ快く引き受けていただいて、すごく嬉しかったことを覚えています」
──佐々木蔵之介さん(フクベエ)も似てますよね。
「そうですね。すごくイメージがフクベエだなぁと思っていて、蔵之介さんにお願いしたら、受けていただけました。ご本人はよくそっくりですね!と回りの方から言われるそうで、『少し複雑な気分です』とおっしゃってました。フクベエは色々と大変なんですよ」
──最後に、万丈目の石橋さんはどのように決まったのですか?
「万丈目も豊川さんのオッチョと同じで、石橋蓮司さん以外考えられないようなキャストですよね。映画化の話が出てしばらくした頃、今回ご出演の俳優さんがレストランで食事していたときに、この映画のキャストの話をしていて、『万丈目は石橋蓮司さんだよね』って話していたら、ちょうど、そのとき後ろに石橋さんがいらしたことがあったそうです(笑)」
──今回のキャスティングは楽しかったのではないですか?
「いや、本当に楽しいですよ。実際はこれだけの俳優さんを揃えないといけないので大変なんですが、ある意味いろんなことを度外視でキャスティングできるわけです。みなさん主役を演じてらっしゃる方たちばかりじゃないですか。『20世紀少年』ということで出演してくれたんです。こんな経験ないですよね。改めて『20世紀少年』という原作の凄さを思い知りました」
──最後に、この3部作の興収の目標は?
「数字としての目標よりも、世間の人に凄いヒットしたねって思われたいですよね。だって、真面目な大人が真面目に演技している巨大ロボットが登場するような大作映画って、ハリウッドではあっても邦画では難しいじゃないですか。それを、こうやって作ったわけですからね。超大作ということを宣伝文句で言うために作っているわけではなく、世界でも通用するような映画が日本でも作れるんですよという証明をしていかないといけないと思うんです。テレビ局の人間が言うのもなんですけど、映画は映画というジャンルの中で一歩ずつ進んでいかないといけないわけだし、別に技術的に日本が世界に遅れをとっているというわけでもないですから。そういう意味では目標の興行収入がどうというよりも、この映画が世間の人に認められて、実写でもこういった日本映画が出来るんだということを証明したいという気持ちの方が大きいですね」