劇場公開日 2008年8月30日

20世紀少年 : インタビュー

2008年8月27日更新

「MASTERキートン」「MONSTER」といったベストセラーコミックを世に送り出している現代日本漫画界を代表する浦沢直樹の「20世紀少年」が、今年ついに実写映画化。「映像化不可能」と囁かれ続けた壮大な3部作の第1章の公開を目前に控え、eiga.comでは本作製作の上で重要な役割を果たしたキーパーソン3人(飯沼伸之プロデューサー、企画・脚本の長崎尚志氏、堤幸彦監督)にインタビューを敢行。第1回目の今回は、本作を製作した日本テレビの飯沼伸之プロデューサーのインタビューをお届けします。(取材・文:編集部)

飯沼伸之プロデューサー インタビュー
「妥協せずにしっかり撮っているという自負はあります」

連載開始から10年、ついにベールを脱ぐ世紀のビッグプロジェクト!
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■映画がスタートするまで

──まず、そもそものスタートは何年だったのでしょうか?

「1999年に漫画の連載がスタートした頃に、方々からアプローチがあったそうです。日本テレビも『映画化したい』ということはお伝えしたようですが、その時はまだ連載が始まったばかりだし、漫画の展開もどうなるかわからないということで、お断りになりました。その後、2004ー5年のあたりで、連載も先が見えてきて、映画化してもよいとの話が聞こえてきたんです。そのあたりで(映画化権を)当社の佐藤敦プロデューサーが獲りに行きました。最初から3部作で作りたいと、オファーしました」

──やはり、この時点でも争奪戦だったのですか?

「数十社からオファーが来たということを聞いています。そのうちに某社と某社、といった具合に絞られてきて、最終的に当社に決まったわけです。その際に、佐藤プロデューサーが長文の手紙を書いて原作者に送り、その熱意が伝わったと聞いております」

飯沼伸之プロデューサー
飯沼伸之プロデューサー

──映画化権獲得後は、どのように映画化を進めていったのですか?

「まず、原作サイドと、製作する日本テレビ、小学館さんが一堂に会する会合がありました。その時、日本テレビはプロデューサーも総動員態勢で、僕を含めて4人出て、全員でやりますという話をしました。そこからディベロップ(企画開発)が始まりました。やっぱり『20世紀少年』はストーリーが壮大なので、脚本を作るのに2年かかってます。その間に漫画も連載がどんどん進んでいってという感じで、第1章だけで10稿以上はいきました」

──シナリオを作成するときに、原作サイドから注文のようなものはあったのですか?

「もちろん、浦沢さん、長崎さんがシナリオに参加されておりますので、ご両名が考える、映画版20世紀少年像がありました。ここで、このエピソードを外すのは良くないとか、ここにこのシーンがないと……といった細かいことまでいろいろと考えられてました。やっぱり3部作でも映画は漫画をすべてカバーできるわけではないので、凄く残念だけれども外さなければいけないエピソードもありました。ただ、物語の底流に流れている意識や理念が消えてしまうのを避けられてましたね」

──シナリオの後は監督です。本作の監督に、堤幸彦監督を選んだ理由は何でしょうか?

「なぜ堤監督かというと、3つ理由があります。まず一つはこの映画の舞台になる1960年代後半から70年代にかけての生の熱さとか、その時代の感触を肌で分かっている人がいいのではないかということ。次に、サスペンスが撮れるということ。ホラー、ドラマ、アクションが描ける監督は多くいますが、サスペンスが描ける監督って、日本映画界では、そうそう多くないんです。そういう意味で堤さんは適任なわけです。3つめは浦沢さんの原作にロックの魂が根底に流れているので、堤さんもロックが大好きでロック魂の塊ですから……ここまでお聞きになれば堤監督しかいないと思いませんか?」

世紀の大作を手がける堤幸彦監督(左)
世紀の大作を手がける堤幸彦監督(左)

──映画としても、大がかりなスペクタクルやアクションよりはサスペンスを重視したということなのですね。

「もちろん、『20世紀少年』では全部重要です。ただ、ロボットのシーンとか、そういった大がかりな、スペクタクルシーンよりも、“ともだち”が誰かということを描くのが一番難しいし、この壮大な長さの台本、登場人物の人物描写や内面の動きをサスペンスを効かせながら見せていく方が何倍も困難だと思うんです。第1章、第2章を含めて、“ともだち”は誰かというサスペンスをベースに『20世紀少年』で本当に伝えたいことを表現するという、いろんな局面が出てくる設定なので、そこを外してしまうと、『20世紀少年』ではなくなってしまうわけです」

──製作費60億円というのは邦画では破格ですが、どこに一番お金がかかるのでしょうか?

「この映画を真に実現させるにはそれくらいかかったということでしょうか。映画製作の際に、CGにお金がかかると、よくいいますが、実際CGにはお金がかかりますが、映画というのは、それ以上に人が動くものであって、どんなシーンであったとしても、撮影期間が長ければ、それだけ費用がかかってくるわけです。2時間22分のこの第1章は、それだけの撮影をしているし、1シーンしか使わない場面でも堤監督からの原作に忠実にとの意向を受けて、しっかり美術を作り、極限までこだわっています。海外のシーンでも、やろうと思えば日本でも撮影できるほんの数秒の場面でも、リアリティを出すために、パリ、ニューヨーク、ロンドン、中国など、実際に現地に行って撮影しています。通常の映画作りでいうと、“ここはやめよう”とか“ココとココはまとめて撮りましょう”ということはよくあるんですが、今回はそういうところを妥協せずにしっかり撮っているという自負はありますね」

>>飯沼プロデューサーインタビュー その2

インタビュー2 ~プロデューサーが語る、プロジェクト始動から完成まで(2)
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