レッドクリフ Part I : 映画評論・批評
2008年10月28日更新
2008年11月1日より日劇1ほかにてロードショー
第2部への大いなる期待を高める“顔見せ”活劇
「三国志」のクライマックス、「赤壁の戦い」を総計5時間で描く超大作の第1部だ。
ジョン・ウー監督は物語の構成上、臆面もなく黒澤明監督の最高傑作「七人の侍」を踏襲している。関羽・張飛・趙雲といった豪傑らを、歌舞伎の大見得よろしく、見せ場たっぷりに紹介(「三国志」ファンならずとも、この導入部によって物語世界の理解の助けになるはずだ)。あらゆる登場人物が出揃ったところで、曹操軍80万の大軍がたかだか4、5万の孫権・劉備連合軍に今まさに襲いかかろうとする寸前に「続く」となる。そのタイミングは「七人の侍」の「休憩」入り方と実に似ている。あの壮絶な“雨中の決戦”に匹敵するであろう、第2部の火と水がほとばしる"船での血戦”へ、大いに期待を高めてくれるのだ。
ウー監督によると、アクションシーンは全部で約200万フィート分、ハイスピードカメラで撮影したそうだ。スローモーションの連続はさすがに冗漫な感はぬぐえないが、いかにも中国らしい人海戦術で、「孫子の兵法」に書かれたさまざまな兵の配置隊形“陣形”を俯瞰目線で見せるダイナミズムは圧巻だ。
特筆すべきは周瑜役のトニー・レオンと諸葛亮役の金城武だろう。「三国志」でも一、二を争う知恵者2人の頭脳戦は、小気味いいほどに映画にユーモアをあたえている。特に、トレードマークの扇を優雅にふりかざす諸葛亮役の金城は、これまでのベストアクトではなかろうか。
(サトウムツオ)