天使と悪魔 : インタビュー
ハーバード大学の象徴学者ロバート・ラングドン教授が、歴史の闇に隠されたさまざまな謎を解き明かしていくミステリーサスペンスのシリーズ第2弾「天使と悪魔」。前作「ダ・ヴィンチ・コード」に引き続きラングドンを演じたハンクスにインタビューを敢行し、本作への思いや、世界的名優として誰もが憧れる彼のポリシーを語ってもらった。(取材・文:編集部)
トム・ハンクス インタビュー
「シリーズが9作目まで続こうとも、僕の足腰がしっかりしていればやるよ(笑)」
――あらゆる分野の知識に富んだラングドンを演じるにあたって役作りは? 前作と意識して変化させたところなどはあるのでしょうか?
「ラングドンという人物は、原作者のダン・ブラウン自身がこうなりたいという願望で作ったキャラクターだといういう気がしてるんだ。ラングドンは宗教、美術、建築、科学とあらゆる分野の知識を持っていて、加えて象徴学の世界第一人者という設定だけど、彼がそういう人物であるということはすでに前作で紹介したから、2作目の今回は紹介する必要がない。だからすぐに演技に、役に入り込める。そういう意味ではおいしい役なんだ(笑)。そこが前作と違うところだね」
――前作は世界中で物議を醸しましたが、その中で続編が決まったことに対して何か感じたことは?
「このシリーズの基本は決して論議を醸すようなものではないと思ってる。全て仮説なんだから。今回の仮説は、“教皇の座をジャックすることができるか”ということで、それが可能であるという仮定の上に成り立っているストーリーだ。科学と宗教の対立だとか、反物質だとかは、決してこの物語が作り出したものではないから、この映画のせいで起こった議論だとは思わないよ。物議を醸すとしても、今回は『ダ・ヴィンチ・コード』よりもその可能性は低いと思ったし、『ダ・ヴィンチ・コード』は確かに物議を醸したけど、それで何かが変わったわけじゃない。教会はいまでも健全にそこにあるわけだし、映画は大ヒットしてハッピーだった(笑)。一番大切なのは、観客がお金を払って見るだけの価値があるか、観客を満足させることができるかということだよ」
――あなたが同じキャラクターを2度演じたのは初めてだと思いますが、それはラングドンだからこそでしょうか? 「フォレスト・ガンプ」の続編企画もかつてあったそうですが、続編というものについてどう思っていますか?
「同じキャラクターという意味では、『トイ・ストーリー』があるけどね(笑)。まあ、それは置いておくとして、『フォレスト・ガンプ』は続編のシナリオまでできたけど、まったくもって前回の繰り返しで、新しいものが何もなかったからやめたんだ。作りたがったのは映画会社だけで、僕はまったく作る気になれなかった。でも、今回は前作とテーマが違うし、冒険する世界も違うから、作る価値があると思ってOKしたんだ。ただのパート2じゃない。同じキャラクターで毎回ちゃんと違うものが作れているのは、インディ・ジョーンズ、ジェームズ・ボンド、ジェイソン・ボーンの3シリーズくらいじゃないかな。なかなかそういうものってないんだ。ラングドンは過去の歴史を現在につなげることができるキャラクターだから、そういう意味では毎回違ったテーマでシリーズ化しやすいかもね(笑)。もしラングドンのシリーズが9作目まで続いたとしても、僕の足腰がしっかりしていればやるよ(笑)。シリーズは何度もやる価値があるならやる。それが僕のスタンスだ」
――あらゆる映画人があなたと仕事をしたがっていると思いますが、これまでを振り返って、俳優として成功した秘訣やポリシーなどがあったら教えてください。
「若い頃は、俳優でやっていけるなんて夢にも思わなかった。学生時代の演劇で、初めて仕事としてギャラをもらったとき、一緒に仕事をした人たちが規律正しく、自分を律することのできる非常に優秀なプロだったことが、僕にとってとても大きかった。そこではまず、時間を守るということ、ちゃんとセリフを覚えていくということ、そして役作りをしっかりしていくこと。その3つを基礎として叩き込まれた。3つのうちのどれかをやらなければ、役者としてクビだ。僕にはその基礎があるからこそ、一緒に働く人をリスペクトする。同じ舞台に立ったら敬意をもって芝居をし合うことが大切だ。舞台から離れたら、別にその人を憎んだっていいし、一緒にご飯を食べに行って親しくならなくたっていい。でも、舞台の上ではプロとして敬意をもって向かい合うことが大切なんだ。それが僕の仕事で一番の基本。それを続けていたから今がある。それをやらない人がいっぱいいるんだよね(笑)」