劇場公開日 2009年9月4日

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サブウェイ123 激突 : 特集

2009年9月1日更新

最近、洋画に元気がない。興行ランキングの上位を賑わせていると評判の作品は、近ごろやたらと邦画ばかり……。もっと奥深く、もっと派手で、そしてもっと熱いエンターテインメントが観たい! そんな骨太映画ファンのフラストレーションを吹っ飛ばす期待のハリウッド大作が、「サブウェイ123/激突」。ニューヨーク地下鉄の運行指令係と地下鉄ジャック犯──2人の男の“頭脳”の限りを尽くした息詰まる攻防が、「ドミノ」「デジャヴ」ほかスピーディーなアクションで評価の高いトニー・スコット監督の手で描かれる。そして主演は、デンゼル・ワシントンジョン・トラボルタ。戦歴は充分、遂に訪れた2大俳優の激突を見逃す手はない。

「サブウェイ123/激突」映画評論集

まずは本作についてeiga.comの「映画評論」でおなじみの江戸木純氏、芝山幹郎氏、樋口泰人氏の映画評論家3名に、それぞれの視点で「サブウェイ123/激突」について評論してもらった。

デンゼル・ワシントンVSジョン・トラボルタ!映画ファン垂涎の対決が実現
デンゼル・ワシントンVSジョン・トラボルタ!映画ファン垂涎の対決が実現
 まずこれがジェセフ・サージェント監督の「サブウェイ・パニック」のリメイクという固定観念は忘れた方がいい。これはあくまでもハリウッドで最も安定感があり、最先端の撮影技術や映像表現を積極的に取り入れて完成度の高いエンタテインメントを作り続ける映像職人、トニー・スコットの新作である。スコットは中年男たちの哀愁が漂い、練りに練られた70年代の犯罪サスペンスの傑作が持っていたヒネリや深みを、潔いまでに驚くほど完全に排除し、2大スターの濃厚な超ドアップがまさに“激突”し、ハイテンションの見せ場が連続する、直球かつ剛速球のいかにも彼らしいアクション・サスペンスに仕上げた。

 少なくともここにはトニー・スコットの映画に期待できるすべてがある。特に、ニューヨークの街を縦横無尽に駆け巡り、絶妙な緩急でめまぐるしく切り貼る撮影と編集は、ありがちな細切れ映像とは別次元の計算されたプロの技。超一流の仕事を大画面で堪能したい。
(江戸木純)
 くしゃみとグズントハイト(お大事に)とミスター・ブルー。1974年の「サブウェイ・パニック」というと、私はこの3つを反射的に思い出す。35年ぶりにリメイクされた「サブウェイ123」にも、それに似たキープロットやキーワードがあるのだろうか。

 答はノーだ。見出しになりそうなフレーズは映画に出てこない。くしゃみをする男はいないし、地下鉄乗っ取り犯にも一応は名前らしきものがついている。

 では新作は退屈か、というとけっしてそうではない。乗っ取り犯の親玉(ジョン・トラボルタ)と交渉人(デンゼル・ワシントン)の両方に心理的な負い目を与え、旧作の基本にあったマインドゲームの要素をはっきりと際立たせる姿勢が功を奏しているからだ。これは、脚本と演出の「判定勝ち」といってよいだろう。爆弾やカーチェイスでノックアウトを狙ったら、このリメイクは空振りするところだった。たがいに顔の見えなかった「チェスの指し手」を、開かれた空間で最後に出会わせる着想も、私は悪くないと思う。
(芝山幹郎)
 凄く小さな個人的な物語と途方もなくでかい社会的な事件とがダイレクトに合体して、誰にもそのスケール感を実感できない映画になっている。確かなのは、主人公が愛する妻から帰宅するときに牛乳を買ってきてくれと頼まれたことくらいだろうか。一体、その牛乳の買い物と地下鉄大パニックがどう関係があるのかというと、実は全くない。しかしその「全くない」はずの関係があるとき不意にぶつかってしまうことこそ現代社会ではないか。アメリカの旅客機がニューヨークの象徴でもあったツインタワーを直撃してしまった以上、もはやなにごとも「関係ない」とは言わせない。そんな奇妙な迫力がこの映画にはある。小さなことの連鎖がすべてを増幅させていく。主人公は牛乳を買って帰るという妻との約束を守るためにこそ、地下鉄襲撃犯との命がけの対決となったのだ。その否応無しの小さな対決を、最大限のスケールと物量で描く。それこそ現代アメリカ映画である。
(樋口泰人)

デンゼル・ワシントンVSジョン・トラボルタが遂に激突!この対決を見逃すな

これまでもさまざまな映画で一級の俳優たちと激突してきたデンゼル・ワシントンジョン・トラボルタ。そんな2人が激突する本作における魅力とは?(文・構成:村上健一

■戦歴は充分。デンゼルとトラボルタの戦いを振り返る

ごく普通の市民として描かれるガーバーを演じたデンゼル
ごく普通の市民として描かれるガーバーを演じたデンゼル

午後2時。ぺラム発1時23分列車が緊急停止、しかもその車両は1両だけが切り離された…。その異変にいち早く気づいたのは、ニューヨーク地下鉄運行指令室のガーバー(デンゼル・ワシントン)。「なぜ停車した?」という無線の問いに応えてきたのは、ライダーと名乗る謎の男(ジョン・トラボルタ)。彼は19人の乗客を人質に、ニューヨーク市に1000万ドルを要求する。「1時間以内に金を用意できなければ、1分過ぎるごとに人質を1人ずつ殺す」という条件でタイムリミットが迫るなか、無線を通してお互いを探り合う2人。騙し合い、駆け引き……奇妙な友情さえ芽生えそうになる息詰まる攻防の果て、最後に笑うのはどちらなのか?

冷酷非情で頭が切れるライダー、そして、その要求を知識と経験で受け止め、時にはいなしていくガーバー。どちらの存在感・魅力が欠けても、そのパワーバランスが崩れて作品自体が成立しなくなってしまう難役に挑んだのが、デンゼル・ワシントンジョン・トラボルタの2人。本作での“初対決”を前に、彼らの輝かしい戦績をチェックしておこう。

~デンゼル・ワシントンの対戦歴~
作品名 対戦相手 解説
「アメリカン・ギャングスター」 ラッセル・クロウ 70年代のニューヨーク(NY)でのし上がる精悍な麻薬王。クロウ演じる熱血刑事が食らいつく
「インサイド・マン」 クライブ・オーウェン 汚職の疑いを受けているNY市警の捜査官。オーウェンら演じる銀行強盗グループに対峙
「トレーニング デイ」 イーサン・ホーク ロス市警・麻薬捜査課のベテラン刑事。新人刑事(ホーク)に汚職を擦りつよけようとするが…
「マーシャル・ロー」 ブルース・ウィリス テロ対策に奔走するFBI捜査官。戒厳令下のNYを指揮する将軍(ウィリス)が隠蔽する事実を暴く
「クリムゾン・タイド」 ジーン・ハックマン 原潜の新任副長。ロシアのクーデターによる核戦争の危機を前に歴戦の艦長(ハックマン)と対立

~ジョン・トラボルタの対戦歴~
作品名 対戦相手 解説
「フェイス/オフ」 ニコラス・ケイジ ケイジ扮するテロリストに顔を変えるFBI潜入捜査官(と、彼の顔になったテロリストの2役)
「パニッシャー」 トーマス・ジェーン 息子をFBIに殺された、裏社会を牛耳るボス。私刑執行人となった主人公(ジェーン)の復讐を受ける
「ソードフィッシュ」 ヒュー・ジャックマン 麻薬取締局の裏金を狙う犯罪一味のリーダー。スカウトしたハッカー(ジャックマン)が反旗を翻す
「マッド・シティ」 ダスティ・ホフマン 解雇された博物館に立て篭もるライフル犯。ニュース記者(ホフマン)の取材で騒ぎは大きくなり…
「ブロークン・アロー」 クリスチャン・スレーター 核弾頭を強奪してテロを目論む米軍少佐。テロ阻止に燃える元相棒の大尉(スレイター)が跡を追う

■演技合戦が見逃せない、2大俳優それぞれの魅力

久々にブチ切れ演技を披露するトラボルタ
久々にブチ切れ演技を披露するトラボルタ

数多の作品それぞれで、魅力的な俳優との対決を繰り広げてきたデンゼルとトラボルタ。そんな存在感あふれる2人の初対決が、「サブウェイ123/激突」最大の見どころだが、2人の作品を見続けている人にとっては、そのキャラクター設定にもついニヤリとさせられてしまう。

志を高く持ち、精悍さを前面に押し出したような役回り(しかもFBIなどの捜査官役)が多かったデンゼル・ワシントンが、本作では、地下鉄会社の平凡な一職員を演じる。愛する妻子を持ち、今夜のおかずに想いを馳せるような普通の市民なのである。そんな彼が持つ心の弱さに親近感を感じ、だが利用しようとする地下鉄ジャック犯役がジョン・トラボルタ。最近は「ヘアスプレー」や「団塊ボーイズ」などコメディづいている印象だったが、ここにきて久々の悪役として嬉々としたブチ切れ演技を披露。

デンゼルの新境地とトラボルタの超定番、2人が直接相まみえる最終対決は要注目だ。

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