劇場公開日 2012年3月31日

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スーパー・チューズデー 正義を売った日 : インタビュー

2012年3月30日更新
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ジョージ・クルーニー、監督デビューから駆け抜けた10年間

ハリウッドを代表する名優ジョージ・クルーニーが、政界の闇に直面した若き政治活動家を映し出した監督第4作「スーパー・チューズデー 正義を売った日」。自らメガホンをとり脚本も兼ね、第84回アカデミー賞では脚本賞にノミネートされた。俳優として、監督として自分の道を築き上げてきたクルーニーに話を聞いた。(取材・文/編集部)

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揺るぎない信念とカリスマ性で圧倒的な人気を誇る、米ペンシルベニア州知事のマイク・モリス(クルーニー)は、大統領の座を見据え、民主党予備選に出馬する。広報官スティーブン・マイヤーズ(ライアン・ゴズリング)は、モリスのもと才能を発揮し、将来を約束された有望な活動家だった。しかし、選挙戦の“スーパー・チューズデー”を1週間後に控えたある夜、ライバル陣営から極秘面会を持ちかけられたことをきっかけに、壮絶な駆け引きに巻き込まれていく。

クルーニーは5年の歳月を費やし、2004年の民主党大統領予備選で、ハワード・ディーン候補の選挙スタッフとして活動したボー・ウィリモン氏の戯曲「ファラガット・ノース」の映画化にこぎつけた。実体験をベースにした権力争いのなか、理想と現実を浮き彫りにすることで、正義というモラルを問いただす。

さまざまな視点から“対権力”を描いた「候補者ビル・マッケイ」(マイケル・リッチー監督)、「大統領の陰謀」(アラン・J・パクラ監督)、「ネットワーク」(シドニー・ルメット監督)など70年代の名作の影響を受けたそうで、「3本の映画には1つの共通点がある。それは、観客の質問すべてに答えないということだ」と分析。そして、今作では「自分で考え、注意を払って、この映画の一部であることを楽しんでもらいたい。そういうものを語り口に残そうと心がけた」。

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政治という舞台で忠誠心から裏切り、復しゅう心に転じる主人公スティーブを通して物語を見つめたクルーニーは、「この映画は道義心を語る作品」と強調する。自ら演じたモリスというキャラクターは、清廉潔白な英雄ではなく、人間くささを持たせた。「公職選挙に出馬する人間として、真実味のある演技をしなくてはならない。立候補者のポスター撮影も、自分自身をどう見せるかは俳優より大変なんだ。政治家を演じるにはエゴが要求されるから、難しい半面いいことでもあった。僕は自分に挑戦するのを楽しむタイプだからね」

米テレビ界の伝説的人物チャック・バリスの自伝を映画化した「コンフェッション」で監督デビューを果たし、監督第2作「グッドナイト&グッドラック」では、50年代のアメリカを舞台に真実の報道を追い求める実在のニュースキャスターを描き、第78回アカデミー賞で6部門にノミネートされた。歴史的事実を反映させた同作は、「イラク戦争やマッカーシズムの時代にわき起こっていた熱に動かされた」と振り返り、ジャーナリズムの責任という巨大なテーマに向き合った。「右派の多くの人たちから自分の国を裏切る人間のように言われた。だからこそ、映画を完成できたことを誇りに思う」と胸を張る。

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監督として自らのスタイルを構築するにあたり、クルーニーはジャン=リュック・ゴダール監督の映画を研究したという。ゴダール監督が使用したカメラを探したこともあったそうで、作品にあわせ映像に変化を持たせ、思い描く空気をスクリーンに反映させた。今作は「映像がぶれるような揺れるカメラで撮影したくなかった。こういった種類の映画はドキュメンタリーのような感覚をかもし出すけれど、映画的感覚がほしかったんだ」。監督デビュー後から現在までの10年間、「ゆっくり考えていることも、振り返ることもできない」と駆け抜けた。

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