アバター(2009) : インタビュー
約2億ドルという映画史上最高の製作費をかけ、全世界興収約18億5000万ドルという映画史上最高の収益を上げた「タイタニック」を、ジェームズ・キャメロンとともに完成させたプロデューサーのジョン・ランドー。「アバター」で、再び映画史上最高の製作費をかける大勝負に出た真意とは? 超大作製作のモチベーションを明かしてくれた。(取材・文:編集部/撮影:斎藤憲)
ジョン・ランドー インタビュー
「ジムと組んだ映画は必ず誇りに思える作品になっている」
――簡単なシノプシスを読むと、今回の「アバター」の基本的なストーリーラインは「ダンス・ウィズ・ウルブズ」や「ポカホンタス」の影響が見えますね。
「それはジム(ジェームズ・キャメロン監督)も意識していたと思う。やはりストーリーというものには、ある種のセオリーがあって、舞台は違えど骨格部分は応用できるものなんだ。『タイタニック』だって、基本は『ロミオとジュリエット』や『ウエスト・サイド物語』だからね」
――14年前に、キャメロン監督から初めて本作のストーリーを聞いたときの感想は?
「そりゃあ、すごく興奮したよ。僕は、映画というメディアはやはり人を楽しませるものだと思っていて、これは間違いなく人々を楽しませる、魅了することが出来るストーリーだと思ったんだけど、どうやって作るのかがまったくわからなかったんだ(笑)」
――3Dで作るというのは念頭にあったのですか?
「98年、99年頃に初めてこのストーリーを聞いたときは、3Dで映画化するということはまったく考えていなかった。ただ、2005年に本格的に取りかかるときには、すでにジムは3D映画の研究を始めていたので、なんの躊躇もなく3Dでやるしかないだろうということになったよ」
――今回のストーリーは最終的に人間の強欲がもたらす災禍を描いてますが、キャメロン監督は08年以降の時代性(世界的経済危機等)を考慮したということはあるのでしょうか?
「14年前、つまりは経済危機のずっと前に、ジムはこのストーリーを書いているので、それほど関係はないと思う。とはいえ、良質のSF作品というのは現代社会で生きることのメタファー(隠喩)となっているストーリーが多い。それにジムはそういった映画を作るのがとても得意なんだ。この映画を見た観客は、“我々がどういう風に生きたらいいのか”という生活する上での判断や選択といったものを、自分自身に問いかけると思う。その自分のアクションが、他者に対して、そして自分の周りの環境や世界にどういった影響を与えるのかを考えさせる映画であることは間違いないと思う」
――12年前の「タイタニック」では、2億ドル(当時240億円)という映画史上最高の製作費をかけて製作して、見事に成功を収めたわけですが、その映画のタイトル同様に沈没する恐れもあったわけです。そして今回は、その「タイタニック」を上回る製作費で、再び、ある種のギャンブルを行っているわけですが、そのチャレンジ精神の源は何なのでしょうか?
「映画に対する観客のリアクションだろうね。子供のとき、映画そのものにも心を奪われたが、実は自分の周りの観客の反応にも、映画と同じくらい心を奪われていたんだよね。だから『アバター』を初めて見る観客の顔を見るのもとても楽しみなんだ。劇中で、惑星パンドラに赴いて、初めて浮遊する岩山を目の当たりにした主人公ジェイク(サム・ワーシントン)に対して、ミシェル・ロドリゲス扮するトゥルーディが、『今のあなたの顔を見せてあげたい』って言うシーンがあるんだけど、まさに彼女と同じ気持ちで、僕は観客の顔を見たいんだ。その驚嘆の表情こそが、自分にこういった映画を作るモチベーションを与えてくれるんだよ」
――長年パートナーとしてコンビを組んでいますが、ジェームズ・キャメロン監督との仕事で仕事で楽しいことは? また彼が特別なのはどういったところですか?
「ジムとの仕事で楽しいことはたくさんあるが、楽しみが大きいのは、ヒットするしないにかかわらず、どんな作品であっても映画が完成した後、振り返ってみたときに、必ず誇りに思える作品になっているということだね。あと、彼がとてもユニークだなと思うのは、ものすごく遠いところに的があったとすると、そこのど真ん中を見つけることが出来るということ。そして、見つけたからには、決してそこから外れることなく、目的まで進んでいけるということだね」