モディリアーニ 真実の愛

劇場公開日:

解説

悲劇的な最期を遂げた天才画家モディリアーニとその妻ジャンヌの絆を描くラブストーリー。モディリアーニを演じるのは、「ゴッドファーザーPART III」のアンディ・ガルシア。ジャンヌに扮するのは、フランスの実力派女優エルザ・ジルベスタイン。監督は、脚本家として「ナインハーフ2」など数多くの作品に携わってきたミック・デイヴィス。

2004年製作/126分/フランス・イギリス・イタリア合作
原題:Modigliani
配給:アルバトロス
劇場公開日:2005年7月9日

ストーリー

第一次世界大戦後の1919年パリ、モンパルナス。カフェ”ラ・ロトンド”には新しい芸術を生み出そうとするエネルギーが溢れ、画家、小説家、詩人そして女たちが毎夜集まり、酒を飲み煙草をくゆらせ議論を闘わせていた。即興で描いた1枚のデッサンでカフェの客に酒を振舞う”成功者”ピカソ(オミッド・ジャリリ)と、全く売れない”異端児”モディリアーニ(アンディ・ガルシア)の姿もそこにあった。折しもパリの芸術家たちは年に一度の美術コンテスト”Salon des Artistes”の出品準備に追われていた。優勝者には多額の賞金と保証されたキャリアが与えられる。画商たちは今をときめくパリのアーティストたちの競演、特にライバル心をむき出しにするモディリアーニとピカソの一騎打ちを期待する。数年前、モディリアーニは美術学校でデッサンを学ぶ女学生のジャンヌ・エビュテルヌ(エルザ・ジルベルスタイン)と出会い、恋に落ちる。モディリアーニはジャンヌをモデルに絵を描くが、完成したジャンヌの肖像に瞳は描かれていない。「本当の君が見えたら、瞳を描こう」と誓うモディリアーニ。ほどなくしてアトリエで一緒に暮らし始めた彼らの間に娘(彼女の名もまたジャンヌ)が生まれる。敬虔なカトリックであるジャンヌの父親は、ユダヤ人であるモディリアーニとの結婚に猛反対し、生まれた赤ん坊を彼らの手の届かない修道院に預けてしまう。精神的に打ちのめされ、経済的にも困窮する2人。追い詰められたモディリアーニにガートルード・スタインはコンテストへの参加を促す。幼い頃から肺を患い、その健康状態が日に日に悪化していたモディリアーニは南仏ニースでの静養後、友人の手助けを得て生涯でただ一度の個展をベルト・ヴァイユ画廊で開く。華やかな場所で幸せそうに微笑むジャンヌ。しかし、喜びもつかの間、画廊の窓に飾った裸婦画がスキャンダルとなり、警察に撤去を命じられてしまう。さらに、会場にやってきたピカソに「君の絵を潰して、その上に自分の絵を描いた」と侮辱され、モディリアーニはピカソに打ち勝つため、そして自分自身とジャンヌのためにコンテストへの出品を決意する。泥酔し雨に濡れたモディリアーニはラ・ロトンドになだれ込み、ピカソたちが見ている前でコンテストの参加者リストに自分の名前を書き込んだ。続いてピカソも立ち上がりにらみ合いながら署名すると、固唾をのんで見守っていたカフェの客たちから大きな歓声が上がった。出品者リストに書き込まれた名前は、スーチン、リベラ、キスリング、ユトリロ、ピカソ、そしてモディリアーニ。パリは熱狂の渦に包まれた。彼らの運命を左右するコンテストが始まる。モディリアーニは白いキャンバスの前に立ち、最愛のジャンヌを描こうとしていた。今度こそ、その瞳を描くために。

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映画レビュー

4.0酒びたりのユトリロや食うものにも事欠くスーチンに親身の手を差し伸べるアンディ・ガルシアがモディリアーニになった。

2023年1月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

知的

物語の筋も結末も分かっていながら観てしまうのは、忠臣蔵の様なものかもしれないが、それを決意させるポイントは「誰がやっているか」だろう。イタリア出身の様で実はキューバ生まれのアンディ・ガルシアが、過去の役作りで印象付けた刹那的で頽廃的なイメージが、モディリアーニをして激情的な作画活動と終焉に向け、いかに流されて行ったかを見届けたいという欲望を抑えることは出来ない。

 中学の頃に画家を夢見るようになったのは、朴訥でへんてこりんな、絵の教師の影響が大きかったのだろうが、家のそこらに転がっていた薄っぺらな数冊の画集の中に、バルビゾンの田舎画家ミレーや、これが本当の色彩画家なのかと疑われるような(単に印刷が悪かっただけのことだが)むちゃくちゃに色数の多いボナールなどの中にゆったりと長く伸びる裸婦画を見付けた時のショックが、まだ青い心臓に突き刺さったからのような気がする。

 稼ぐようになって最初に買った画集はゴッホやセザンヌではなく瞳の無いモディリアーニであったのは、多分に彼の生き方死に方があの裸婦の線とダブってしまっていたからに相違ないし、今でも上京し上野の西洋美術館にある彼の絵の前に立つと呼吸が浅くなって興奮してしまうのは、単純化と誇張に特化された彼ならではの絵と共に、自分の絵を描くために信念を曲げなかった、決して認められることの無かった不遇なモジに共感するものがあるからだ。

 モディリアーニといえばジェラール・フィリップ(モンパルナスの灯、共演アヌーク・エーメ)であって心情的には俺自身でもあり、アンディ・ガルシアのモジに成り切るのに時間を要したのはやむを得ないが、モンパルナスの激情と退廃が良く似合うようになるのは、売れない絵を求道的に描きながら、酒と麻薬とに溺れて行く生活力のない男の哀れを、げっそりした顔で演じ切った後半からだろう。酒びたりのユトリロや食うものにも事欠くスーチンに親身の手を差し伸べるアンディ・ガルシアがモディリアーニになったと思えるではないか。

 この映画の最大の見所は、妻ジャンヌとの知られざる愛の物語ではなく、サロン出品のために画家達が知力体力を傾け、己の才能を信じ、ひたすら描きまくる殺気立つような数分間の作画シーンだろう。専門的な目で見れば少々陳腐なシーンがないとは言えないだろうが、目くるめくショットの連続は少しでも絵を描いた事のある人(学生時代は皆描いたのだが)にとって、思わず手が動くような衝動を呼び起こされるに違いない。そして「一枚描いてみようと」画家になった様な気分になる人も多い事だろう。

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ezu

3.0枯れすすきのモディリアーニ対サムライ・ピカソ!

2021年1月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 芸のためなら女房も泣かす♪パリ恋しぐれのモディリアーニ。貧しさに負けた、いいえ、世間にも負けたかと思われていた枯れすすきモディリアーニとジャンヌ。現在にまで語り継がれる美術史上の衝撃的な愛の結末に涙せずにいられないほどだった・・・しかし、実際はレイトショーのため眠気を抑えることができず、あくびしたために出た涙なのか悲しいから出た涙なのかがわからなくなってしまいました。

 サブタイトルにもある真実の愛。モディリアーニの描く自分の肖像画には瞳が描かれていなかったことが、ジャンヌの献身的な愛に拍車をかけたに違いない。芸術家たちの彼への想いも同じものだったのだろうか、コンテストの出品者リストに書き込まれたモディリアーニの名前が読まれたときの大きな歓声から推し量るしかないのかもしれない。あの盛り上がりは好きだ。まるで負傷した格闘家が試合に出場したかのような驚きと興奮。もし負けてしまっても、「ピカソの絵をつぶして、その上に落書きしてやるぞ!」と血気盛んな芸術家が現れそうな勢いだった。それにしてもいい男でしたよ・・・「ピカソ」というタイトルの絵を描かなかったんだから・・・

 自分にしか見えないモディリアーニの幼き分身も好きだなぁ。もしかしたら、実は彼が本当のモディリアーニでしたぁ~といったオチがついてもいいかなと思っていましたし、実はピカソの分身だったんだよという予想外の展開でもかまわなかったのです。だから、大事なところで酒を飲まないでくださいよ・・・誰か止めてくださいよ、と祈るような気持ちも虚しく終り、絵の中の澄んだ瞳だけが印象に残りました。

【2005年10月映画館にて】

※美術に弱いもので、どこまでがフィクションなのかさっぱりわかりません。
cf.『モンパルナスの灯』

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kossy
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