アララトの聖母

劇場公開日:

解説

画家アーシル・ゴーキーの絵画をモチーフに、アルメニア人虐殺の悲劇と現代の親子のエピソードを交錯させて描いたドラマ。監督・製作・脚本は「フェリシアの旅」のアトム・エゴヤン。撮影は「デュエット」のポール・サロッシー。音楽はエゴヤン作品の常連であるマイケル・ダナ。美術は「スウィート・ヒアアフター」のフィリップ・ベイカー。編集はエゴヤン作品の常連であるスーザン・シップトン。衣裳は「スウィート・ヒアアフター」「ノンストップ・ガール」のベス・ペスターナク。出演はこれが映画デビューのデイヴィッド・アルペイ、歌手として知られる「ピアニストを撃て」のシャルル・アズナブール、エゴヤン作品の常連であるアーシニー・カンジャン、「渦」のマリ・ジョゼ・クローズ、「逃亡者」のイライアス・コティーズ、「スウィート・ヒアアフター」「ビロウ」のブルース・グリーンウッド、「ラッキー・ブレイク」のクリストファー・プラマー、「ゴシップ」のエリック・ボゴシアン、「百合の伝説/シモンとヴァリエ」のブレント・カーヴァーほか。2002年カナダ・アカデミー賞主要5部門受賞。

2002年製作/115分/カナダ
原題または英題:Ararat
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
劇場公開日:2003年10月4日

ストーリー

映画作家のエドワード・サロヤン(シャルル・アズナブール)は、聖なる山アララトの麓で起きたアルメニア人虐殺の史実を映画にするため、カナダのトロントに撮影にやってくる。彼は、その虐殺で母を亡くした画家アーシル・ゴーキー(サイモン・アブカリアン)に注目し、少年時代の彼を映画に登場させようと、ゴーキー研究家の美術史家アニ(アーシニー・カンジャン)に撮影の顧問を依頼。未亡人のアニには二回の結婚歴があり、最初の夫との息子ラフィ(デイヴィッド・アルペイ)は、死んだ父親がテロリストなのか英雄なのか悩んでいた。二度目の夫の娘シリア(マリ・ジョゼ・クローズ)は、ラフィと恋人関係にあり、自分の父親の事故死の原因がアニにあると考え、彼女を激しく憎んでいる。そしてサロヤンの映画がクランク・イン。主人公の米国人宣教師に扮するのは、人気俳優マーティン・ハーコート(ブルース・グリーンウッド)。敵役のトルコ人総督には新人のアリ(イライアス・コティーズ)が抜擢。アリには同性の恋人フィリップ(ブレント・カーヴァー)がいたが、そのことで、フィリップと空港関税検査官の父デイヴィッド(クリストファー・プラマー)の関係はこじれていた。撮影現場でラフィは雑用係として働いていたが、映画の内容に触発され、父の真実を知るためにアララトへと旅立つ。やがて帰国したラフィは、空港の税関でデイヴィッドの取り調べを受けることに。ラフィは喪失の歴史を語り終え、解放。息子の身を案じて空港へと駈けつけたアニと固く抱き合うのだった。

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映画レビュー

4.0歴史修正主義がここにも

2018年10月26日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 1915年のアルメニア人虐殺を認めようとしないトルコ政府。今の日本の風潮が、「南京大虐殺を認めない」方向に動いていることとダブらせてしまった。真実をどこまで追究するのか、映画の中で詩的許容範囲はどこまで通用するのか、美術史家アニの心もよくわかる。「ヴァンからはアララト山は見えない」ことが象徴していた。

 途中からはカナダでの撮影風景と、アルメニア青年ラフィが税関で説明する場面が中心となる。テロリストの息子として悩みだして、画家アーシャル・ゴーキーの姿と父の姿をオーバーラップし、一人で故郷を撮り続ける。俳優との会話で「ヒトラーがユダヤ人を虐殺する際に、誰がアルメニア人虐殺を覚えている?と言った」という台詞が妙に生々しく、数少ない証言にも心を痛めてしまいます。

 劇中劇の手法で真実を追究しようとする映像によってワンクッション置いて、史実や民族の諍いを考えてみようという気にさせてくれる。それでも数カットの残虐シーンが脳裏に刻み込まれ、色んなことを想像してしまいました。

 主人公ラフィと義理の妹シリアが近親相姦しているというエピソードがなければ、もっといい映画になったのかもしれない。

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kossy