鬼が来た!

劇場公開日:2002年4月27日

解説

日本占領下の中国の村で対峙する村人と日本兵の交流と確執を狂騒的に描く衝撃作。監督・製作・脚本・主演は「太陽の少年」のチアン・ウェン。俳優としては「芙蓉鎮」「紅いコーリャン」でよく知られている。原作はユウ・フェンウェイの短編小説『生存』で、脚本には彼も参加。撮影は「さらば、わが愛/覇王別姫」のクー・チャンウエイ。音楽は有名ロック・ミュージシャンのツイ・チエンほか。共演は「独立少年合唱団」の香川照之、今回が初の大役出演となるチアン・ホンポーやユエン・ティン、「上海ルージュ」のチェン・シュ、「南京1937」のツォン・チーチュン、「カラー・オブ・ペイン 野狼」の澤田謙也、「天国の大罪」の宮路佳具ほか。2000年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。

2000年製作/140分/中国
原題または英題:鬼子來了
配給:東光徳間(ギャガ・アジアグループ=徳間書店=パグ・ポイント・ジャパン 提供)
劇場公開日:2002年4月27日

あらすじ

第2次大戦末期、中国・華北の掛甲台村。ある深夜、マー・ターサン(チアン・ウェン)は麻袋を2つ押しつけられる。1つには日本兵の花屋小三郎(香川照之)が、もう1つには通訳の中国人、トン・ハンチェン(ユエン・ティン)が入れられていた。マーは彼らを晦日まで預かるように何者かに脅されたのだが、約束の時を過ぎてもその人物は姿を見せない。この村に日本兵を置くのは危険だったが、もはや2人を預かってから半年たち、当初は攻撃的だった花屋も村人たちに感謝を示すようになっていた。そこで、花屋は自分たちを助けてくれたお礼に穀物を進呈するよう日本軍にかけあうと提案。花屋の上官、酒塚隊長(澤田謙也)は、花屋を激しく叱責するものの、村人たちには要求以上の穀物を進呈。その夜、村人全員と日本兵たちが集まって宴会が開かれた。大いに沸く人々。しかし突然、酒塚が村人に花屋の殺害を命じる。緊張が走る中、酔った村人の1人が酒塚に気安い口調で話し掛け、その姿に激怒した花屋は衝動的にその村人を殺害してしまう。それをきっかけに宴会は、一気に殺し合いの大混乱。やがて終戦。通訳トン・ハンチェンは処刑。そしてマーは、恨みから日本兵をオノで多数殺害したことを問題視され、花屋の手で斬首刑に処されるのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第53回 カンヌ国際映画祭(2000年)

受賞

コンペティション部門
グランプリ チアン・ウェン

出品

コンペティション部門
出品作品 チアン・ウェン
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映画レビュー

4.5日本人よりも日本人のことをよくわかってる

2025年8月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

驚く

斬新

アジア太平洋戦争末期の中国華北地方で、「私」と名乗る何者かから銃で脅され日本兵捕虜を預けられた中国人農民とその日本兵捕虜との奇妙な交流と、戦争の狂気、有為転変する運命の皮肉を描いたドラマ映画。2000年のカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞したが、中国政府機関の審査を受けないままカンヌに出品したため本国では上映禁止となり、チアン・ウェンも以後しばらく監督はできなかったとか。日本兵捕虜役で出演した香川照之の『中国魅録:「鬼が来た!」撮影日記』も日本で出版されたが、香川さんの出世作でもあるかな。

実在の人物や実際の事件を扱っているわけではないが、日本人の性質をこれほど上手く描いた映画は日本映画にもあまりないと言えるほどの作品で、日本人の心性を中国人監督がここまで理解してるのかと驚いた。それでいて日本人とか中国人とかを超越した普遍的なものを描いている傑作でもある。とにかくすごい映画だった。

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バラージ

4.0誰しも鬼になりゆる

Jさん
2021年6月6日
iPhoneアプリから投稿
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J

5.0首の虫

2020年9月15日
iPhoneアプリから投稿

香川照之の中国滞在エッセイがかなり面白くて、それに付随してこちらも、鑑賞しました。

そして、このチャン・ウェンというおじさんの凄さを目の当たりにしました。監督で主演で、脚本で、このクオリティは、鬼です。
脱帽です。
凄く悲しいお話で、とても興味深く、うねりのある脚本で、素晴らしいです。それ以上に、演出の妙で、コミカルさがずっと流れてます。

その頂点が、斬首の際の首に這う虫を指で飛ばす仕草です。これから、人の首切るのに、虫払い除けるの、馬鹿馬鹿しくないか?でも、何か分かんなくはないか。。みたいな、気持ちになる妙な場面です。
これが表現、これが映画、これが監督のすること。
ものすごく好きな映画です。

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Shihommatsu

3.5狂気の密室劇とその顛末

2020年8月20日
iPhoneアプリから投稿

日本軍占領下の中国の村での出来事とその後の顛末を描いている。冒頭の日本軍人「捕虜(香川照之!)」を「悪魔」としてではなく、滑稽な「道化師」として描いている。

突然押し付けられた日本兵の処遇をめぐって、村人はパニックに陥り、それぞれの人間の本性があらわになる。また監視し殺害を試みようとする村人たちは「リマ症候群」に陥り「捕虜」と奇妙な関係が芽生えていく。

深刻な悲劇なのに、なぜか彼らの行動はコメディそのもの。悲劇と喜劇はまさに紙一重だ。

しかし、村での宴のシーンから映画の雰囲気は一変する。そこからは暗黒の世界へまっしぐら。

全体的に反日的、嫌日的な作品としてつくられてはなく、かなり冷静かつ公平なかたちで反戦作品を作っていると思う。デフォルメされた日本軍人像ではなく、ちゃんと日本人の俳優が演じているところも自然。

逆に中国の反日強硬派からしたら、日本に迎合的にデフォルメされていると思うかもしれない。

鬼ごっこは、捕まえられたものが次の鬼になる。その繰り返し。憎しみも替わったものが引き継いで、倍加する。憎しみと哀しみの永遠の連鎖。

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atsushi